ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 (講談社文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 『傲慢と善良』から辻村さんの作品を読むようになり、『盲目的な恋と友情』も好きでした。
    この作品も系統としては同じような気がしますが、だからといって飽きる訳でもなく、毎回新鮮な気持ちで読めて、気付かされるような事も、ミステリー要素もあり楽しめました。
    読んでしまえば、タイトルに全てがこめられているような作品だったのかもしれません。

    ここ最近耳にする『親ガチャ』。
    人生は本人次第だろうと思いつつも、良くも悪くも親や育った環境は、その人と成りに影響はあるとは思う。
    反面教師という事もあるし、経済的な裕福だけが"当たり"ではないが、今の世の中の尺度はきっと…。
    自分が子供から親の立場になった今は、決して当たりではない『親』ではなかろうかと思ってしまう。
    反面、自分の親に対しては、喧嘩もしたけど何不自由なく育てて貰ったと思わずにはいられない。(特に裕福ではなかったし、今も同居はしたくないけど)
    親になってわかる事もあるし、読む世代で感じ方は異なる作品だろうと。

    実際、主人公のみずほとチエのように、近所に住む幼馴染みの方が、小さい頃からお互いの家を行き来しているせいか、家族構成や経済状況、兄弟の就職先までなんかがわかってしまう。
    たとえ高校や大学で離れてしまっても、会った途端に昔に戻れるというか、マウント取ったりしない間柄になれる。お互いの偏差値や運動神経を最初から知っていて、格好つけて競わないからかもしれない。
    けれど、それまでに身につけてしまったいらない世間体や見栄が、2人きりじゃない時は本音を見せるのを邪魔する場合もあるんですよね。
    そんなことで本当に大切な友達を失うことは想像できないだろうな。
    これを読んで、そんな事に少しでも気付いてくれる若者がいたら良いなとも思いました。

    なぜ、そんな感情を辻村さんの年齢で書けるのだろうと感心してしまう。
    毎回、読了後は気分爽快!という風にはなりませんが、なぜか手に取ってしまう作家さんです。

  • タイトルの意味がわかった時に涙腺崩壊した。

  • やっぱり女同士でしか生まれない感情があって、その複雑さは当事者同士でも理解しきれないレベルの場合があることを再認識した。
    母親と娘という関係は切り離せないものだと、表面では切れている場合でも、本当の意味ではどこかで繋がっている、存在を完全に消すことはお互いにとって出来ないと感じた。


    ずっと気になってた辻村さんの作品、初めて読んだのがこれで良かったと思う。他の作品にもますます興味が湧いた。

  • 相変わらずすごいの書くなぁ、辻村深月さん。
    ミステリーの体で女性同士の友情(?)や母と娘の関係の心のひだを赤裸々に描いている。格差のようなもの(純粋だけど程度の低い田舎の女子と、それなりに学がある女子)についても切り込んできていて。あと母娘の近すぎる関係と、近づけない過去の苦い記憶。目をそむけたくなるけど、確実にそこにあるものを鮮やかに描き出している。
    みずほとチエミは幼なじみで親友だったけど、ふたりは決定的に違っていた。進む道も分かれていって、ずっと近しい友情が続くはずもなく。それでもやっぱり繋がってるんだなぁ。友情というありきたりな言葉では表しきれない何か。
    チエミは、前に読んだ「傲慢と善良」の真実に通じるものがありました。家族が仲良くていい子で。いい子なんだけど。これまた考えさせられました。やっぱりちゃんと自立していかないとダメだね。親の方もね。自覚なくだんだん何かが歪んでいってしまっている。娘を育てる上で、気をつけなくちゃとという戒めにもなりました。
    エンディングはすっきりはしないけど、あぁそうだったのかぁ…と。ぐいぐい読ませる一冊でした。

  • 子どものころの主人公が、母親に、コーラをかけられるシーン。
    外出先で読んでいたのだけれど、号泣してしまった。
    こういう、親に愛されたい子の気持ちはどうしても心にくる。。。

    主人公の家庭と、母を刺してしまった子の家庭。
    両極端だけれどもどちらもよくないのかな、と思った。
    親も子どももそれぞれひとりの人間。

    主人公と母親の関係が全然解決しないままだったのがもやもやするー!!!
    いろいろ、幸せに終わらなかったのが。
    主人公夫婦はうまくいくといいな。
    あと、助けてくれたあの子は、幸せになるといいなぁ。

  • 2022.8.31
    やっぱり、講談社と辻村深月の組み合わせは大好きだ。ミステリー色が強くて、最後に回収する伏線の感嘆っぷりがもう、やばい。
    久しぶりの講談社でしたが、そういえばまだ読んでいないものがあるなーと思って。電子で読了。終始読んでて、1日半で一気に読みました。
    最後にわかるタイトルの意味、嫌いだけど大好きだけど嫌いな母と娘の関係、女子にしかわからない特有の空気感、そして、お腹の子供の存在と母の存在。
    実体験したからこそなのか、描き方に迫力と説得力があって、一気に読めました。
    ただ、最後が相変わらずサラッとしてる。あえてなんだろうけど、もう、1、2ページ欲しかった!!

  • すっかりハマった辻村深月。
    とにかく未読な作品は片っ端から読もう、ということで、タイトルが
    妙に印象的なコレを。

    さて、ざっくりと内容を言うとするとだ・・・。
    女性同士の、深いようでいて浅く、ドライなようでいて根深い「友情」
    を執拗に表現したモノ、とでも言おうか・・・。もちろん男であり、更に
    言うならあんまり友だちも居ない僕だから、本当のところは理解不能
    な作品である筈。だけど、解った気になって読むと、まるで底が丸見
    えの底なし沼。結構凄い作品だった気がする。

    地元を離れず、地方都市にそのまま根付いてしまう女性の生態。
    この作品に出てくるような人たちがリアルだとは思わないし、そうで
    あって欲しくも無いのだが、
    もしそういう閉塞的な状況に置かれたら、自分もきっとそうなっちゃ
    うんだろうなぁ、というリアリティは尋常で無いレベル。今となって
    はソレはちっとも不幸ではなく、下手すれば幸せなのかもしれない、
    とか感じてしまうところが情けなくもあるのだが。

    そういう人間の弱い部分を、絶妙な切り口で抉りまくるような文章は、
    ある意味で潔い程に気持ちがいい。多様なジャンルを描く辻村深月の
    作品で一貫しているのは、おそらくこの攻撃的な中毒性のような気が
    する。

    タイトルにももちろん意味アリ。それも思わずグッと来るような。
    女性はもちろん、男性も読むべき。眠れなくなるぞ、しばらく。

  • チエのような境遇にあるので、政美や及川さんの言葉にしんどさを覚えつつ読了しました。といっても、未婚で両親と同居していることと、母親と結構仲が良くて話をするタイプだ、ということだけで、過干渉の類はありませんし、私はチエに感情移入ができるわけでもありません。

    大学に行ってたら~とか言う人は、あんまり好きじゃない。そこはむしろ及川さん側の気持ちがわかる。愚痴を言うのに現状を変えようともしない人の話、毎日聞いてたら滅入るよなあ。でもそれしかコミュニケーションの取り方がわからなかった、というのもつらい話。

    なにが悪い・誰が悪いという書かれ方はされておらず、全員他人のよくわからない価値観を認められないが故の人間関係の形成の仕方なのかな~というのを感じました。田舎に住む人間の性質を認められないみずほ、親とべったりの感覚を認められない政美や及川さん、みんなから少しずつバカにされ、みんなを少しずつバカにしているチエ……。でもみんな(大地以外)は本当に心配したり、されたりしていて、良いところもある。人間は多面的で、良いところも悪いところもあるし、見方によっては変わるのだということなんでしょうか。

    みずほにとってみずほの母親はかつて虐待をしてきた親だけど、チエには優しかった。チエの母親はチエを子ども扱いして過干渉だったけど、みずほには優しかった。あの大地ですら結婚している。そういうもんなんでしょうね。

    人間ってこうだから、面白いという人もいるし、嫌になるなと思う人もいるんでしょう。私も登場人物の価値観にほとんど寄り添えず、やだな~と思いながら読んだので、結局辻村先生の掌の上だった気がしてなりません。私もよくわからない価値観を認められない人間のうちの一人なのかも。

    でもじゃあどうすればいいのか?高校時代彼女たちは、誰かのためになるよりも問題を起こさない方法を求めていた。今もそうしていれば良かったのか?及川さんが言うように、逃げてばかりで成長しない人間にならないか?思ったことを即座に言う関係性だったからこそ、事件は起きたのでは?

    そういうところに答えが出せたとき、この話が飲み込めるのかもしれませんね。
    すごく面白く読みました。
    善良と傲慢もいつか読もうと思っているのですが、この話より更に救いがないらしい。タノシミダナァ~!

  • 最近、辻村深月さんの本良く読んでます。今回も読み始めはすんなりいかなかったけど、やはり途中からすっかりハマりました。母と娘の関係って、やはり綺麗事だけではすまないこと…っていろいろあるんだなぁ~と改めて感じました。特に一人娘ともなるとね。そしてまた女友達の関係も、憧れから嫉妬や妬みとか、本音のぶつけ合いも読んでて共感出来たり、出来なかったりでした。最後はやはり込み上げるものがありました。

  • 他人には理解出来ない母娘関係、妻になる女性、母になる女性、悪い男から離れられない女性、そして彼女たちを振り回す、憧れ、劣等感、優越感、、、といった感情。
    女性の私には、本当に身近な「女同士の関係」の中で進んでいく物語。
    絶妙な女心が描写された作品でした。

    イライラしたりもやもやしたりしましたが、
    最後は温かい気持ちで本を閉じることができました。

著者プロフィール

1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞、18年『かがみの孤城』で第15回本屋大賞を受賞。『ふちなしのかがみ』『きのうの影ふみ』『ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。』『本日は大安なり』『オーダーメイド殺人クラブ』『噛みあわない会話と、ある過去について』『傲慢と善良』『琥珀の夏』『闇祓』『レジェンドアニメ!』など著書多数。

「2023年 『この夏の星を見る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

辻村深月の作品

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