嵐が丘 [Kindle]

著者 : エミリー・ブロンテ 岡田忠軒

• グーテンベルク２１ (2012年12月19日発売)

感想・レビュー・書評

[匙を投げるしらこさんの感想 · 2020年3月10日]

最初に提示された悪夢に向かって過去から現代に進んでいく展開の虚しいこと。そしてスタメンは全員見事に地獄落ちとくる。何が楽しくて読んでいるのか。

と思いきや、井戸端会議大好きおばちゃんさながら夜更けまで読みふけってしまった。

日常にキャサリンを感じない事などないとその呪われぶりを発揮するヒースクリフ。読者までも、この二人を想起しない瞬間が、ない、という何十にもかけられた呪いの秀逸さ。きょうだいの関係も、恋人の関係も越えて、精神が繋がってしまった二人。自分に向かう感情までも全て相手に注いでいるよう。
分身がテーマに添えられているも、キャサリンの血が入っていない者を憎しむヒースクリフ。ヒースクリフは悪魔だったのか？いや、全編をもってして普遍的な愛のバリエーションを呈示しているに過ぎないのでは？

愛すべきネリーディーン。何があっても狂った主役たちと距離をおき、時に他人行儀に哀れみ嘲笑する。ヒースクリフにも一目置かれる(むしろ好かれている)この芯の図太さ。井戸端会議大好きおばちゃん根性の塊よ。この語り部抜きに「嵐が丘」を愛することは出来ない。