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- / ISBN・EAN: 4988111244734
感想・レビュー・書評
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覚悟はしていたが、観た後にずっしりと重いものを残す作品。自分がジョルジュの立場だったらこの感情を受け止められるか、と問わずにはいられない。誰にでも起こりえる残酷な顛末を、観ていて辛い程のリアリティで観るものに突き付ける監督、老夫婦の間の愛情と、それ故の葛藤を演じきった主演の2人に脱帽。
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ハネケの作品の中ではかなり見やすく、一般受けしそうな作品。
でも、もちろん、老老介護の心温まるいい話なんかじゃない。
カメラは最初のコンサートのシーン以外はアパルトマンの中を全く出ない。
かなりの閉塞感。でも、それがこの夫婦の全世界なのだ。
ハネケ作品では、役者はかっこよさや美しさをかなぐり捨てて、生の人間を曝け出さねばならない。もし、ハネケが日本で撮って、これに応じられる役者がどれくらいいるか。
その点、「ピアニスト」のときのI・ユペールもそうだったけど、この作品のエマニュエル・リヴァも、見上げた役者だと思う。
はじめは美しい老夫人だったのが、病が重くなるにつれ、髪は乱れ、顔色は悪くなり、顔も体も歪む。
日常生活も困難で、排せつもコントロールできない。そうなっていくのは、夫も娘も耐えがたく悲しいが、実は一番本人が悲しんでいるというのを、夫が一番分かっている。
本当の愛は、厳しい。辛い。苦い。
本当に素晴らしい作品だった。
そして、いつものことだが、クラシックを自分の血肉としているハネケの音楽の使い方に、心から感動。
シューベルトの即興曲、ベートーヴェンのバガテル、バッハ「主、イエス・キリストよ、我汝に呼ばわる」。
どれも切ない旋律をほんのはじめだけしか聴かせない。
でも、私の中には今もその続きが流れている。
無駄にだらだらと聴かせる必要はないのだ。
ほんとうに音楽が分かっていて、自信がある人にしかこういう使い方はできない。
無駄な(感情を煽るような)音楽は一切なし。
ハネケ、今世界で一番好きな映画監督。 -
とても淡々としていながら、夫婦の形について考えさせられる映画だ。
こういう先の暗い状況の中でも、2人だけで思い出に浸りながら穏やかに過ごす時間は幸せそうで、だからこそ最後のシーンは印象深い -
【愛、アムール】予告編
https://www.youtube.com/watch?v=626RPRSHPn0 -
愛に充ちた夫婦のかたち。
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★★★★★『愛、アムール』
こんな感情を感じて映画を観たことがなかった。映画の可能性は様々な作品から感じてきましたが、この作品は自分のなかにあるが気がつかなかった感性を揺さぶりながら蘇らせてくれた。
設定やストーリーは本当に単調で現代社会の抱えているどこにでも目にする'老い'を取り扱ったものです。
この老夫婦のように、死へ向かう愛する連れ合いにただ、献身的に自らできることを捧げる老紳士の姿が、物凄く自分に迫ってくる。 -
長年、お互いに尊敬しあい、愛し合い、寄り添って生きて来た二人に訪れた終焉…日を追うごとに壊れていく妻に対する献身的な介護の末に追い詰められてしまった夫…
身近に迫ってくる現実問題としてこの作品の痛ましさは他人事とは思えない。どんなに愛してようと出口のない迷路のような生活では、不意に訪れた衝動に抗うことなど出来ない…妻にとっても夫にとっても結果としては悪くないはずなのに社会通念の上では被害者と加害者になってしまう。こんなにも切ない話があるなんて…悲し過ぎる。昨今、この作品と似たシチュエーションで起こった事件を耳にする機会が何度かあった。見方を変えれば、悲しみの果てに現れる究極の愛の形なのかもしれない。愛するとは一体どういう事なんでしょうか?老いるとは…投げ掛けられたことの大きさに為す術が見つからない。