さいはての彼女 (角川文庫) [Kindle]

著者 :
  • KADOKAWA
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感想・レビュー・書評

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  • Kindle Unlimitedで読了

    いしかわゆきさんがSNSで紹介していらして、気になったので読んでみた。世知辛い世の中で、仕事や、自分にとって深い関係の人を失うと、なかなか転落感がすごいことになる。

    本書では、三本のお話が収録されているが、前、二本はどちらも、社会的な仕事の成功を収めた女性が、ふとしたことでそれを損ない、恋人にも去られて、足元がなくなったような思いの中、旅に出て再生していく、というお話。三作目は、一作目に登場する、非常に印象的な女性、サブヒロインの凪のお母さんのお話である。

    この、凪という娘が、まあ最高に素敵で、表題作の寂しさを裏切る、作品全体、いや、一冊全体の印象を決める爽快感は、凪の魅力によるものになる。

    お金も、ラグジュアリーな生活も、ちょっと人に自慢できるキャリアも持っていて、頑張ってきた主人公は、鼻持ちならないところもあるのだ。だけど、凪に会ってどんどん変わっていく。二作目も、旅先で出会った自然と、そこで出会った人に変えられてゆく。その過程や印象は、よく似ている。

    強気で、ちょっとお鼻の高い、彼女たちの思い上がりは、感じはよくないけど、このくらいは見覚えがある。誰あろう自分の中にだ。無論その成功は、彼女たち自身の努力が背景にあるのだけれど。それでも、挫折した時の喪失感や転落感は、冒頭にも書いたが、強い。

    なのに、なぜこの本は、こんなに爽やかなのか。挫折の先に、赦され、自縄自縛していたものがほどける、どこかホッとした思いがあるからだろう。

    道を見失った時、人間は、ひとりでもがく。それも大事なことなのだ。だけど、それでも上手く行かない時は。

    やっぱり、他人との関わり、出会いに鍵があることが多い。全く違う価値観、世界線に自分を置くことだ。そのあと、思い切って失敗した場に戻り、そこでもちゃんと受け止められていくこと。自分も変わること。が……大事なのだろう。こう書くと、簡単なことみたいだし、主人公のように、女満別APから網走までも、行かなくても良さそうであるが。実際やるとなると、いや。勇気が。

    それと、この小説、表題作と、三本目のお話は、ロードノベルでもあるが、バイク小説でもある。ハーレーが、とても重要な役割を持っていて、ハーレー乗りたちの物語でもある。ほんとにこんなふうなら、バイクに乗るのも最高だろう。特に凪の勤め先の社長が、私は大好きだ。

    原田マハさんと言うと、美術ミステリが面白いが、こういう普通の小説も、読後感が’とても良くて楽しかった。
    「お日柄もよく」なども読んでいい気がする。うまくいきすぎだとか、ライトだと言われるかもしれないが、この読後感のよさ、眼の前が明るむ感じも、私は小説ならではの楽しさと取った。

    バイクつながりで、片岡義男さんなど読み返してみようか。文体は全然違うのに、どこか通じるものを感じた。

  • さいはての彼女
    ハーレーで北海道を横断する描写が綺麗すぎる
    旅行したくなる話
    ずっとミステリー系ばっかり読んでたから、これ読んでめっちゃ癒された

  • 原田マハさんの作品を初めて読みました。ブクログを始めてから、お気に入りの作家さんが増えて世界が広がりました。

    私は現在仕事の関係で、コンビニに行くのに車で20分かかるような田舎に住んでいます。広大な大地にぽつんとひとりでいると、人間ってちっぽけだなと思うし、満点の星空を見上げるととても癒されます。だから、作中に出てくる女性が北海道の自然に心動かされるのも共感できました。

    バイクに詳しくないのでよくわからない内容もありましたが、それでも生き生きとした情景が思い浮かびました。

    • アールグレイさん
      初めまして(^-^)/Ayaさん

      アヤさんは(カタカナで失礼)ブクログを始めたばかりのようですね。
      私は、今月丁度三年経ちました。でも遅読...
      初めまして(^-^)/Ayaさん

      アヤさんは(カタカナで失礼)ブクログを始めたばかりのようですね。
      私は、今月丁度三年経ちました。でも遅読なので、なかなか冊数が増えません。
      最初の頃に登録した本は、内容が飛んでしまいレビューが書けなくなっている本がありますが、今では必ずレビューを書きます!
      今回は、スイート・ホーム、という原田マハさん(ご存じですよね)本を読みましたが、さいはての彼女にしようか迷いました。
      次は、凪良さんにしようかと思っています。
      遅くに大変失礼しました!これからよろしく
      (@^^)/~~~
      2024/02/18
  • 知らない世界に飛び出す勇気をくれる本。
    読んでいる時夢中になる感覚が良かったし登場人物たちも好きだったからまた数年後読み返したい。

  • 鈴木涼香は、25歳という若さで社会の頂点を目指してきた起業家。その甲斐あって、彼女が舵取りする会社は順調に成長を遂げる。しかし、私生活においては結婚という幸福に恵まれず、さらに絶大な信頼を置いていた秘書・高見沢までもが会社を去ることとなる。一抹の寂しさを胸に、涼香は沖縄への一人旅を計画するが、意に反して彼女の乗った飛行機は予期せぬ場所、女満別に着地した。この予期せぬ出逢いを通じて、涼香の硬く閉ざされていた心が少しずつ解放されていく。

    本作の中心となるテーマは再生です。涼香のビジネスの成功と私生活の寂しさ、それらのギャップが生む葛藤を通して、人はどんな困難に直面しても再び立ち上がることができるのだ、というメッセージが繊細に描かれています。

    私は、物語の中で鈴木涼香が女満別で予想外の出会いを経験する場面が印象的でした。彼女自身の過去や価値観について改めて考え直すシーンは、再生の兆しが感じられる瞬間です。

  • 爽快感溢れる作品で、読んでいると「風」を感じられる。
    凪ちゃん、素敵。
    こんな子が近くにいたら楽しいだろうな〜

  • めちゃ爽やかな読後感。バイク乗ったことないけどハーレーに興味湧いちゃった。
    「最悪の状況から1時間後に立ち直っている自分の姿を想像できるか」……明日からまた過酷な労働の日々が始まるのでこのフレーズ覚えておこうと思ったよ。

  • 東京で仕事に明け暮れる人たちが訳あって、北海道の自然に触れる短編集。最近知床の方に行ったこともあり、風景が鮮明に想像できてよかった。

  • 日本語って美しいなと感じた。

    物語の主役でもある「凪」さん愛用のハーレムの名前は「几」
    その理由は「風を止めたくないから」
    “止”を取っ払っているんですね。

    その几のような物語でした。

  • とても爽やかで切り替えて頑張ろう、と思えるお話。

著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

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