- Amazon.co.jp ・電子書籍 (290ページ)
感想・レビュー・書評
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女子3人仲良しグループの末路など、何度も大きくため息をついてしまうほどリアルな学校生活の描写。数年前の嫌な思い出が蘇る。
移り変わる標的、先生に見つかってもいじめだとカウントされないいじめ、わざと優しく接するいじめ、スクールカーストの苦しさ醜さ。美化された学校生活の中にあった数々の忘れかけている日常が詰まっている。
教師が登場しないのもまたリアル。誰も守ってくれやしない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
第二次性徴と共に加速する体の成長に置いていかれそうになる心のずっと奥のものをうまく表現出来ず藻掻く主人公の物語。
久々に読書で泣いた。
ニュータウン計画の名のもとに日々工事が絶えず発展していく街が嫌い、みんながわくわくしているものを心の中で貶すことが主人公にとって自分は特別な存在なんだと心の平穏を保つお守りになっていた。
主人公は常に「観察者」として周りをどこか達観しており、そうすることで現実世界で同級生達に劣等な扱いを受ける自分の自尊心を保っていた。
作中の言葉を借りると、精神的オナニーと称されるその行為を周りの人間を蔑むことで満たしているスクールカースト上位の同級生たちはきっとこれからもそういう生き方しかできない。
とある同級生をきっかけに、誰に何を思われようと心のままに行動する主人公の姿は自由で美しく孤独で胸が締め付けられた。
無意識下で人と自分を比較して安堵したり萎縮するより、自分の好きな自分でいることで自分の輪郭は作られるんだともっと早く気付きたかったな。
もうひとつ。
主人公の自尊心を満たす存在が伊吹くんだ。
学校でスクールカースト上位の伊吹くんと習字教室がきっかけで仲良くなる主人公は、出来心で伊吹くんを自分のおもちゃのように扱うようになる。
半ば強制的に行われる性加害をも思わせるその行為は年々エスカレートしていき主人公の中で歯止めが効かなくなっていた。
ただ好きな気持ちを自分の所有物としてでしか現せない主人公の不器用さと伊吹くんの情けのない優しさが混ざる2人のシーンの空気感が好きだった。
性知識もままならない頃主人公によってトラウマ紛いの行為を繰り返される伊吹くんが純粋に育ってくれてほんとに良かった。伊吹くんはこの物語の光です。
物語における白(変わる街並み、成長する骨など)と黒(伊吹くんと帰る夜道、墨汁など)の立ち位置にも惹き込まれた。
以下ひとりごと。
個人的にこの物語はラブストーリーだとは思ってないんだけど思春期の初恋として良い思い出で終わりそう…って考え出したら病んだ。
そうなってもきっと一生お互いのことは忘れないんだろうな。
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すごいな。感動した。
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「コンビニ人間」と同じ作者。工事も転校生も多い振興住宅地暮らす谷沢結佳が主人公。小学校4年生前半、後半は中学2年生が描かれる。思春期であり、第2次性徴期の始まりでもある。
前半は、結佳は3人グループ、大人っぽくて可愛くて人気ものの若菜ちゃんと、ぽっちゃりで子どもっぽい信子ちゃんと。胸が膨らみ初潮もそろそろで思春期の入り口だが、学校生活は、若葉ちゃんに憧れ信子ちゃんをバカにするような視線はあるが、まだまだ穏やか。信子ちゃんが若菜ちゃんを好きな女子とケンカをするぐらい。こんなのは、2年生の女子でもあるあるだなと思いながら読んだ。しかし、お習字教室の伊吹との関係は、エグい。同級生で子供っぽく小柄な伊吹に結佳が脅して舌を出させ舐めたりする。伊吹をおもちゃだと思っている。
後半の中学校編は、若葉ちゃんは一番上のイケてるグループに入っているけど、ムリをしている。結佳は、下から2番目のグループだけど、自分の事を醜いと思っている。信子ちゃんは、一番下のグループ。
伊吹は一番上のイケてる男子だが、自覚がない。男子の女子の値踏み、グループ間でのマウント、自己評価、カーストと、大人の社会でも見受けられる事だけど、そこは、中学生なので、自意識過剰でヒリヒリする。
大人の世界でも、お金持ちとか社会的地位とか美醜とかで、評価する人はいる。でも、不思議だとずっと私が思ってきたのだが、優秀でもないのに美人でもないのに輝いている人がいる。そういう人たちは、自分に満足している。自身も含めて人を評価する人ほど、自信がないのだ。だから、人を評価してはならない。自分を認めなくてはならない。
巻末の解説で、西加奈子は、「これは教室の話だけではない。もちろん、まさに中学生に読んで欲しい物語ではあるが、絶対に彼女たちだけのものではない。」と書いている。その通りだと思うが、中学校の図書館に置くのはためらわれる。 -
西加奈子さんがエッセイで紹介していた一冊。(解説も西さんだった)
小学校高学年から中学生にかけての、女子特有の学校生活の息苦しさについて、これでもか!と描かれた作品。
解説にもあるように、目を背けたくなるような描写もかなり多く、読むのきつい、⭐︎2つにしたろ…と思いながら読んでいたけれど、しつこく、ブレずにひとりの女子生徒を真摯に描き続ける様に、途中から圧倒されてしまった。
自分自身、先の見えないトンネルの中にいるような、真っ暗な中学時代を送っていたので、共感するところが多くあった。苦しかった。
本作には明確すぎるカースト制度について書かれていたが、それよりも自分のグループから外れないように、とか、学校では自分に完全に蓋をして、でも心の中でクラスメイトを見下して自分を保とうとするところとか、ちょっと痛いくらいに鮮明に描かれていて、あぁつらいな、と思いながら読んだ。(周りの教員はなにしとんねん、とは思った)
ありがちな話ではあるんだけれど、徹底的に、ここまで丹念にしつこく書き続けるのは、ちょっとなかなか出会えないかもな、と感じた。
言葉でうまく説明できないのが、もどかしい。
誰にも自分を出せないで日常を過ごす主人公が、同じ書道教室に通う伊吹にだけ見せる狂気も、なんだかわかるような気がしてしまった。
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周囲・世間の価値観にとらわれず、自分の中にある気持ちや感情を素直に受け入れて、自分を認めていこうと思った。
伊吹がとにかくいい人だった。