東京家族 DVD

監督 : 山田洋次 
出演 : 橋爪功  吉行和子  西村雅彦  夏川結衣  中嶋朋子  林家正蔵  妻夫木聡  蒼井優 
  • 松竹 (2013年7月5日発売)
3.63
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感想 : 133
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  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4988105066601

感想・レビュー・書評

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  • 2013年塚口サンサンでの2本め「東京家族」

    感想として、自分の中で整理するまで3日かかった。
    なんとなく、ストーリーを知った上での鑑賞だったけど、
    その後、とにかく感動してうまく言葉にできなかった。
    こんなに泣いたのは「エンディングノート」以来かも。

    今回の「東京家族」を語る上で、やっぱり観ておかなければならないと思って、
    「東京物語」も観た。
    なるほど。
    「東京家族」はほんとによくできているし、
    それもひとえに「東京物語」が傑作だからであろう。
    1953年公開の作品を、まさかこのタイミングで観ることになるとは思わなかった。
    モノクロ作品を観るのもこれがはじめて。
    記念すべき1本目がこれで、よかったと思う。

    山田洋次監督作品をスクリーンで観るのも、これがはじめて。
    はっきり、年代が違うからか、「男はつらいよ~」なんて国民的代表作なのに、
    それもテレビで1作だけ観た事があるだけ。
    近年「おとうと」や「母べえ」など、話題作たくさんあったけど、それも全て素通りだった。
    唯一はじめから終いまで観たことがあるのは「幸福の黄色いハンカチ」だけ。
    たまたまテレビで観たんだけど、舞台が北海道だったのと、そのラストが印象的。

    さてこの作品。ほんとに今の私たち、とりわけ私たちの世代が観るべき作品だと痛感。
    劇場はシニアが多かったけど、本当はわたしら世代が観るべき作品だと思った。

    自分も「嫁ぐ」と言う形で地方から都会へ出てきてしまっているから、
    自分を取り巻く環境としてはちょっと違うものの、
    たとえば周吉ととみこが品川駅でまちぼうけしている姿をみるだけで、すでに自分の両親を見ているようで胸が熱くなったし、息子や娘の家の2階で、2人座っている姿や、慣れないシティーホテルでふたり寄り添ってる場面とか、ついつい両親の姿に重ね合わせている自分がいた。それだけで泣けてくるのはなぜだろう。

    幸一だって滋子だって、息子娘としてはむしろしっかり独立していて、世間から見たら立派なものだと確かに思うし、
    それが結局両親の相手も満足にできないのは、やはり仕方のないことだと思うし、このあたりの描写も絶妙だと思った。
    「~物語」では戦死している昌次が、「~家族」では現代を象徴する、とっても大切な役回りで、加えて「~物語」では戦死した昌次の嫁として登場している紀子が、「~家族」ではその彼女という設定、これがこの作品をあくまで現代の作品で、かつ重要な役回りだった。妻夫木くんと蒼井優ちゃんだからこそ、よかったと思う。

    とにかく、どの役も「~物語」を彷彿とさせながらも、それぞれはやっぱり「~家族」に生きていて、
    その演技などはいまさら語るに及ばず。
    しいて言うなら、妻夫木くんと吉行和子、蒼井優ちゃんとの出会い~ラストまでの流れが秀作。
    もっとも「~物語」でも、原節子の紀子がいかに重要かは理解しているつもりだが。

    特に考えされられたのは、
    この作品の中にしばしちりばめられてある「3.11」の扱い。
    折りしも震災直後観た、「ヒミズ」の中で表現していた「震災」は、
    とても直接的なもので、それはそれで後世に残る作品として大切な場面だと思っている。
    一方でこの作品の中で出てくる「3.11」は、決して直接的ではないけど、
    例えば妻夫木くんと蒼井優ちゃんの出会いが、復興ボランティアという設定が、
    最後の最後で蒼井優ちゃんの人柄や、妻夫木くんの人柄や、それを亡きとみこを通じて周吉が理解し、
    結果紀子の涙につながるあたりなどは、よく練られているなと思ったし、こういう描き方もあるんだなって感心した。

    「~物語」では、紀子の将来を慮ったとみこの気持ちを代弁する周吉に、そんなことはない、自分は本当はずるい人間だと吐露する紀子に、正直だ、とみこの時計を形見として手渡す場面が、「~家族」ではあのようなかたちで周吉が紀子に思いを伝え、紀子が号泣するあたりなど、本当によく構成されてできているなと感じた。
    そういう意味では「~家族」のほうが一筋の希望が、わずかながらだけど感じられるのかな、と思った。
    「~物語」のほうが、とみこがいなくなった後の周吉の寂しさが、映像から伝わってくるものが多かった。
    とはいえ、「~物語」では、実家にまだ娘もいて、そう考えたらこちらのほうがまだ幸いなのかもしれない。
    橋爪功のラスト、爪を切る背中に、どことなく父の姿を重ねてしまい、また涙。

    余談だが豊悦て、笠智衆てなんとなく似ていると思った。
    今は豊悦すこし肥えてしまったから、雰囲気遠ざかってしまったけど、
    若い頃のとよえつをそのまま老いさせたら笠智衆になってたかも。

    どの配役にも共感しすぎて、泣けて泣けて仕方なかった。

    両親に勧めたいけど、母親は、父親は、この齢で観るのはリアルすぎてしんどいのだろうか・・・
    いい作品だけに、それだけが少しだけ心配。

    http://onionmovie.jugem.jp/

  • 離れて暮らす両親のこと、自分自身の将来のことを考えながら観てしまう作品でした。作品の後半、涙もろいわたしは折りたたんだティッシュを眼鏡の鼻のところに挟んで、涙止めをしながらの鑑賞しました(笑)エンドロールの空の色がとてもいい色でしたね。また観よう。今度は大切な人と観たいです。

  • 006

    山田洋次監督が小津安二郎監督のオマージュとして作った映画として、ネットではかなり賛否両論分かれているイメージだけれども、小津安二郎の全盛期を知らない私のような無知の人間に、小津映画の魅力を伝えるという意味では、非常に優れた映画だと感じる。


    現代映画を見慣れたものとしては、やはり独特の台詞回しは不自然に感じられたが、私には返ってその風情のある話し口が非常に魅力的に聞こえた。また、その中で妻夫木さんの台詞だけ妙に現代風で、本人の高い演技力も相まって、パラレルワールドのような世界観を感じられた。


    ストーリーは単純明快なものだ。しかし、ところどころに老人の視点からみた現代社会の批判が、純粋な祖父母の困惑というかたちで表れ、胸が痛くなる場面も多々ある。


    それに加えて、両親の「息子を想う気持ち」がストレートに表れる場面は観るものの涙を誘い、50年前も今もそういう根本的な価値観は変わらないのだなと考えさせられる。


    一昔前の「家族の理想」「人間の理想」がよく表れている、非常に魅力的な映画であった。

  • カメラワークとかもろに小津映画へのオマージュですが、描かれているのは今の家族。
    台詞回しが古い感じにしてあるので、舞台は現代でももっと昔のことのように一瞬思うけれど、上京しても子供たちは忙しくて居場所がない感じとか、葬式後ふっとドライになるところとか、ほんとリアル。
    俳優さんたちの演技が素晴らしくて、なんてことはない台詞で凄く泣けてきました。
    病院の屋上のシーンとか、東京へは二度と行かないと口にするシーンとか。
    でも、一番好きなのは吉行和子と妻夫木くんがコイバナする場面。
    「東京物語」では戦死した次男がこちらでは今時の優しい若者として登場していて、このアレンジが素晴らしいなと思いました。

    鬱陶しくなることもあるけれど、家族を大切にしたくなる映画でした。

  • 現代版「東京物語」。さすが山田洋次監督作品。

  •  噂には聞いていたけど,見ていて小津安二郎監督の『東京物語』を思い出していた。それもそのはず,映画の最後には「小津安二郎監督に捧ぐ」なんてエンドロールが出てきたから,もう山田監督はそのために作ったんですよね。
     まさに「山田監督が,山田監督の視点で,小津安二郎監督の『東京物語』を描いたとすると…」みたいになっているので,まだ小津安二郎の『東京物語』を見ていない人は,是非ご覧になり,比べてみることをお薦めします。わたしももう一度『東京物語』が見たくなりました。
     『東京物語』では,老夫婦のことを気にかけてくれるのが次男のお嫁さんの紀子でしたが,『東京家族』でも,その役は妻夫木くん扮する3人兄姉弟の末っ子の次男昌司のガールフレンド紀子(蒼井優さん)です。この蒼井優さんが,とてもいい味出していて,素直さが好きです。そうだよなあ,こんな対応するよな。でも,どっかに必ず優しさはあるし…。
     もともと山田洋次監督の作品が好きなので,いい評価になるのはしかたないね。これだけ,大好きな先輩監督の作品を徹底的にマネしていくってのもおもしろいなと思います。

  • あぁ、映画ってこういうのんか、と
    そういう意味ですごくわかりやすいのもそうだけど
    あぁ上手だなって感心するけど

    でもそれと一方で
    この時代の日本という国の
    遺伝子のある、

    私にはこういう田舎はないけれど
    なのになぜかひとつひとつに共感できてしまうのは
    遺伝子としか言いようがない

  • 毒がない。
    親戚大集合映画での良作といったところかな。

    妻夫木聡と蒼井優の出会いの件が震災ボランティアだったのが、とてもほっこりエピソードでした。

    誰もが心当たりがあるシーンが散りばめられていて見守りたくなる映画でした。

  • 9月より日本に帰国することになり、また東京生活が始まる。そんなときに観たくなった1本。
    家族も子供たちも、それぞれの一人の人間として人生を生きていく。その中にあるはずの絆ってどんなものだろう。昔のように太くはないのだろうか?でも、やっぱり人間って昔も今も変わらないはず。そんな思いを抱きました。

  • 言葉や態度に出さないけど、うざったい。大切な気持ちはあるのに。離れるとこんなふうになってしまう。来られたらうざくなるし、来た方はどうして過ごしたらよいかわからなくなる。昔は一緒が当たり前だったのに。
    これから親とどう生きていくのかを考えさせられた。

    また、「こう言っとけばいいよね?」というような台詞が劇中に溢れている。家族同士なのに。全然自然じゃない。家族なのに。
    今の日本の人間模様を風刺しているようだった。

著者プロフィール

1931年大阪府生まれ。54年、東京大学法学部卒。同年、助監督として松竹入社。61年『二階の他人』で監督デビュー。69年『男はつらいよ』シリーズ開始。他に代表作として『家族』(70)、『幸福の黄色いハンカチ』(77)、『たそがれ清兵衛』(02)、『家族はつらいよ』(16)など。2012年に文化勲章を受章。

「2019年 『男はつらいよ お帰り 寅さん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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