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感想・レビュー・書評
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ヴォネガットの出世作。適当な感じで、それっぽくもあるボコノン教のニヒルな世界観がツボ。明らかな嘘や逆説的な物言いが、禅問答のようになって真理らしきものを暗示しつつも、その影をまた笑い飛ばす。でも、そのジョークには悲哀が溢れている。希望はどこだ。
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「「わたしの名はジョーナ。いまプエルト・リコ沖のサン・ロレンゾ島にいる。"パパ" モンザーノの専制政治に支配されるこの島で、『世界が終末をむかえた日』の著者となるべきわたしは、禁断のボコノン教徒となったのだ。 "目がまわる、目がまわる" 世の中は複雑すぎる。愛するサン・ロレンゾ一の美女モナが、世界中のありとあらゆる水を氷に変えてしまう〈アイス・ナイン〉が、柔和な黒人教祖ボコノンが、カリプソを口ずさむわたしのまわりをめぐりはじめる――独自のシニカルなユーモアにみちた文章で定評のある著者が、奇妙な登場人物たちを操り、不思議な世界の終末を描いた長篇。」」
池澤夏樹・選 カート・ヴォネガット
①『猫のゆりかご』(伊藤典夫訳/ハヤカワ文庫)
②『スローターハウス5』(伊藤典夫訳/ハヤカワ文庫)
③『ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを』(朝倉久志訳/ハヤカワ文庫)
「カート・ヴォネガットは圧倒的に若者の作家だった。アメリカ文学に特有のイノセンスが彼にはあった。若者は社会のありかたについて疑問を突きつけ、改革を夢見る。だから彼はアメリカに社会主義を、と言った。言ってみれば明るいペシミスト。第二次世界大戦の捕虜体験と冷戦の非常な論理を見て人間性に絶望するけれども、その絶望を手を替え品を替え、陽気に、愉快に、皮肉に、SFを使い、寓話を使い、とんでもないストーリーを考案して苦い笑いと共に語る。」
(『作家が選ぶ名著名作 わたしのベスト3』毎日新聞出版 p86より) -
アイロニックで奇想天外で破茶滅茶なんだけど真理の香りがして、理解したいと思うほどにするりとかわされてしまう。創造力を刺激されて目がまわる目がまわる目がまわる。
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第4長編、過去作からの大きな前進を感じることができる▲プエルト・リコ沖のサン・ロレンゾ島。禁断のボコノン教に入信したきっかけこそ未完の大作『世界が終末をむかえた日』だった▼60年代の米国らしい作品だ。当時の大学生たちが好んだトールキンの『指輪物語』と読者層は被っていたのだろうか?主人公の執筆作品は、タイトルの中二病さ加減が酷いし〈カラース〉の範囲や〈無害な非真実〉という便利な技が、後付けで便利な運命論を成立させている。人は大量死を目前にしてもユーモアさえあれば生きていける「そうだ、そうだ!」(1963年)
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20世紀を代表する現代アメリカ文学の代表格のカートヴォネガットの小説。読みやすくはあったけど、うまく掴めなかったかも…ちょっと時間を空けて再読したい。
フランクの母の死や戦争体験、科学者としての働きなどカートボネガット自身の体験に重なることが結構多くて、自伝的小説って感じがしました。
それだけで全て説明ができてしまう理論を信じるなだとか、悪(闇?)を内部に持たない組織がその中でリサイクルするように循環して生きていくことは不可能だみたいなことしか読み取れませんでした。(風刺の仕方が一番に評価されてるとしたらすごい見当違いなこと言ってそうで怖くなってきた)
ただ、あやとりが10万年前からあるっていうことを知れました。10万年前からちょくちょく遊ばれてる割には、そんなにファンいないけど。
ヴォネガット自身もすごく気に入っている映画化された『スローターハウス5』を観てみようと思います。(風と共に去りぬのマーガレット・ミッチェル監督らしい…)
あとヴォネガットの妻がハマってしまったインドの思想家のマハリシ・ヨギの思想についてもちょっと興味湧きました。 -
原爆に関する本を書くため、開発者のひとりであったハニカー博士について調べるフリーランス作家のジョーナ。ちょっとおかしな宗教であるボコノン教や、ぐずぐずの独立国家サン・ロレンゾの描写を通じて、色々と皮肉交じりにイジっていく。ややコメディ感のある物語(架空の宗教、国家、アイスナインという物質が出て来るものの、全体的にあまりSF的な雰囲気ではない)。
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「猫のゆりかご」とは、あやとりのこと。
日本にもよくあるあやとり。
神の「あやとり」の下で弄ばれる人間たちの悲劇を、面白おかしく書いてます。
宗教で争うことの愚かしさを強烈に書いてます。
そして、「ヒロシマ・ナガサキ」への原爆のこだわりを
持ち続けてくれたのもヴォネガットならでは。
(日本人でも忘れかけていることなのに!)
人間の発明品が人をどこまで破滅に導くのか、その愚かさも、
面白おかしく書いてます。
いやー、強烈なこと伝えたいことを
「面白おかしく」書ける才能というのも
あるんだな、とつくづく思います(^^) -
ヴォネガットの怪作、電子書籍に!