自閉症スペクトラム 10人に1人が抱える「生きづらさ」の正体 (SB新書) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 最近、個性と障害の違いってなんだろうと思っていました。この本では、自閉症スペクトラムは病気ではなく、そういう種族だと説明がありました。つまり、そういう人、と言うだけで、別に変なわけでもないし、人それぞれ変なところはあるもんだと思うと、誰もが自閉症スペクトラムの可能性があるのではないか。
    誰しもが、人との違いやうまくいかないこと、悩むことはあると思う。ただ、自閉症スペクトラムの人は性質上、その壁にぶち当たる可能性が高く、その結果生きづらいと感じてしまうのかもしれない。
    ここにきて、改めて平等という言葉の難しさを感じる。みんなに同じ教育を受けさせることは、一見平等に見えるけど、みんなと同じではうまくいかない子どももいる。その子に特別な対応をすることは、平等ではないけれど、きっと正しい。でも、ほかの子どもの目線に立てば、なんであの子は特別対応なんだろうと思うことだってあると思う。先生は、色んな子どもをみるなかで、一人ひとりに合った対応をしてあげれたら一番だけど、40人のクラスの子に対してそんなことをしていたら、先生の身はもたないだろう。そして自閉症スペクトラムの人は相手に合わすことが出来ないけど、そうではない人は彼らを理解してあげることが求められる。
    障害がある子もない子も一緒に学べばいいと思っていたけれど、一概にそれがいいことではないんだ。誰の立場に立つかによって、良し悪しが変わるから、なんとも難しい問題だ。

    2019.03.02

  • 自閉症スペクトラムの人たちがこだわる対象も、まさに「マイブーム」が盛り上がり、しばらくすると冷めていくということを繰り返す部分があるのです。  しかし、あることに対するこだわりは冷めても、「何かにこだわりを持つ」ということのエネルギーそのものは保たれて、その対象がほかに向けられるのです。ある時期は、物の配置がいつも同じであることにこだわっていた人が、いつの間にか、そのことへの興味は低下し、そのかわりに、いつも同じ道順で出かけることにこだわるようになっている、といったことを臨床家はよく経験します。


    よく、真面目に人の話を聞いていない生徒に向かって、先生が「姿勢!」と注意してその生徒の背筋を伸ばさせるなど、姿勢の矯正をすることがあります。自閉症スペクトラムの生徒の中には、姿勢の保持が難しく、いつもどこかに寄りかかっていたり、机に肘をつくなど姿勢の悪い人がいるため、先生からこのような注意を受けることが多いのです。  ところが、姿勢の悪い自閉症スペクトラムの人たちにとって、姿勢を正すことはかなり意識を向けないとできない作業なのです。したがって、彼らが姿勢をきちんとするためには、「姿勢をきちんとすること」に常に意識を向けなければならなくなります。結果として何が起こるかというと、肝腎の先生の話に集中できず、上の空になってしまうのです。先生は「姿勢が悪い」 =「上の空」と思っているのですが、実は逆で、「姿勢がよい」 =「上の空」なのです。  ここでも、究極の選択が出てきます。「姿勢がよい」ことと「人の話を聞く」ことの両立が難しい場合、どちらを優先すべきか、ということです。これは、時と場合によります。先生の話を聞いてちゃんと学習してほしいときは、姿勢よりも、その生徒がちゃんと人の話を聞いているかどうかを確認すればよいのです。  一方、時には、人の話を聞くことよりも姿勢のほうが重要なときもあります。大きな声では言えませんが、式典などで校長や来賓が挨拶している場面などは、参加者が姿勢を正していることが最も大事ですので、姿勢にだけ集中し、話は聞いていなくてもよし、と考えてください。

    自閉症スペクトラムの人たちは、それまでさまざまな行動の問題があった人でさえも、大半の人が思春期以降は驚くほど真面目になります。物心がつく前、まだ周りが見えてないために、悪気なくいろいろな問題を起こすことがあっても、物心がついた思春期以降は、周囲に気づかい、真面目になるのです。

  • この本には、自閉症スペクトラムの子供を育てるに当たって、大切なことがたくさん書かれている。超おすすめ。
    自閉症児の成長を支援し、見守り続けた先生が書いている。
    早期療育したからといって、自閉症の特性がゼロになるわけではない。それを親や周囲の人たちは、早くから知っておかなければならない。
    親に将来の見通しを伝える際に重要なのは、自閉症の症状を全否定する必要はない、二次障害を予防することの方が重要というのも合わせて伝えること。
    それぞれの人が可能な限りの自立スキルとソーシャル・スキルを身につけることが、一刻も早い時期から教え始める価値があることだと言い、その方法も書かれている。
    私自身は10代の頃、人生相談雑誌で、社交辞令や相手の気持ちを想像する事を学んだので、成人してからもめることは少なくなった。それでも時々失礼な事をして相手を怒らせてたけど。
    子供の頃は親の言うことが理解できなくて怒られてばかりで、自己評価が低く鬱になってしまった。
    親に対する報連相の習慣もなく、友人との同居の際には黙って家を出てた。
    今は過剰に報告するようになって、トイレに行く度に同席してる友人に宣言するようになった。いちいち報告いらんから、と言われるけど、無言で消えたら、相手が何が起こったかわからんやん?と思ってしまう。
    この本では、人と一緒に何かをして良い結果に終わったという体験をさせることで、報連相を身につけさせる必要性を書かれているが、その通りだと思う。
    子供の頃に報連相を学べなかった私は、人に相談できるようになったのは40過ぎてからやった。困ってると報告することで相手の助けが得られることもあると知った。友人の優しさに感謝。

  • ASDに関する本はいくつか読んだが、基本を押さえるにはいいのでは。ただし具体的症例は少ないので症例を知りたい人には向いていない。
    あと幼児期から思春期あたりのケアが相当重点的に書かれているため、成人して現在ASDが疑われる、みたいなタイプの人だとある意味苦痛。対応できなかったことをひたすら読まされるので。しかしケアは大事なことであるから記述は必然であろう。なので当該の章はいっそ読み飛ばしても構わない。
    概要を掴むには良く、「訓練」して「治る」ものではないことを理解するには大変良い。なのであまりASDを知らない人が読むと良いと思う。ある程度理解が進んでいたり、当事者だと大体わかることが多い。一般向け新書の限界だろう。これ以上の記載は専門書に譲るしかない。
    またこの本に書かれていることはそうそう簡単には実現できないであろうことにも留意されたし。

  • 借金玉さんのブログを読むようになって、ASDをちゃんと知ろうと思ったので。僕は非障害のASDなんだろうけど、どっこいきてるのでこのまま進んでいこうかと。

  • 内容は平易でわかりやすいです。「自閉症スペクトラム」がグラデーションのように、明確に線引きできないことを踏まえて、第4章以降でどのように支援するかという具体的なアイデア、事例を述べていたのが良いです。
    「自己肯定感」「ソーシャル・スキル」以外にも個別に支援する内容はあると思いますが、この2つが鍵になるという件は同感です。

    巻末に参考文献がありましたが、公共の相談センターなども付記してあるともっと良かったです。

  • わかりやすく、読みやすかった。

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著者プロフィール

信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授。東京大学医学部医学科、東京大学附属病院、国立精神・神経センター武蔵病院、横浜市総合リハビリテーションセンター、山梨県立こころの発達総合支援センター所長、信州大学医学部附属病院子どものこころ診療部部長を経て、2018年より現職。博士(医学)

「2020年 『障害者・障害児心理学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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