傭兵の二千年史 (講談社現代新書) [Kindle]

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  • ヨーロッパにおける傭兵の歴史を書いた本。著者は日本人なので日本との対比はたまに出てくるが、中国とかは皆無。ヨーロッパに限った話でもそれなりの分量はあるため、これで減点をするつもりはないが、タイトルに「ヨーロッパ」や「西洋」なんかは入れても良かったのでは。

    現代に生きる感覚からすると、国民軍こそ主で、傭兵は副に思える。しかし歴史を紐解くと、そうとも言えない。むしろ傭兵で戦うのが一般的であり、国民軍ならぬ市民軍こそが例外的存在なのだ。一般市民にも武装を揃えるだけの財産があり、守るべき土地を持っている。そういった基盤があってこそ市民軍は成り立つのだ。

    市民軍が成り立つ条件を考えると、傭兵がメインになった理由も頷ける。富は貧しい者から豊かな者へと流れ行く。何かしらの大事件が無い限り、格差は広がってしまう。そうすると、富裕層も貧困層も市民軍となるのを嫌がる。富裕層は金で解決できるなら、わざわざ自らを危険に晒したくはない。貧困層は守るべき財産を持たず、装備を自分で整えることはできない。なので命と金を交換するインセンティブが、両者に働く。富裕層は金を支払うことで貧困層を戦わせるのだ。

    現代では傭兵は一般的ではない。しかし、志願兵と資産の関係を考えると、今も傭兵が一般的であるのではないか。違うのは傭兵の調達先が自国民であるということ。そう思えてならない。

著者プロフィール

1948年生まれ。早稲田大学大学院博士課程に学ぶ。明治大学名誉教授。専攻はドイツ・オーストリア文化史。著書に『ハプスブルク家の人々』(新人物往来社)、『ハプスブルク家の光芒』(作品社)、『神聖ローマ帝国』(講談社現代新書)、『ハプスブルク帝国の情報メディア革命─近代郵便制度の誕生』(集英社新書)、『超説ハプスブルク家 貴賤百態大公戯』(H&I)、『ウィーン包囲 オスマン・トルコと神聖ローマ帝国の激闘』(河出書房新社)、訳書に『ドイツ傭兵の文化史』(新評論)などがある。

「2022年 『ドイツ誕生 神聖ローマ帝国初代皇帝オットー1世』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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