お勧めいただいて読んだもの。お勧めいただいて読んだのですが、正直な感想を申し上げますと、1巻時点では★2つ(普通)という評価に……なりました……
おそらく実際にはもっと複雑であろう世界を、シンプルに3つの世界に区分けして描き、それぞれに下流階級、中流階級、上流階級に位置づけられる人々が住んでいます。
主に描かれるのは下流階級と中流階級の世界です。
下流階級の生産したものを中流階級と上流階級が用い、下流にお金を支払う。下流階級は中流階級の世界で息抜きをし、中流階級は下流階級の世界で資源を調達してお金を支払う。物価は下流<中流<上流で、下流は中流と上流からお金を支払われるのにもかかわらず貧困で、人道的にアウトな生活を皆が送っている。中流とて貧しく、生活はギリギリ。
そういう世界観のなか、下流階級から出荷され、上流階級によって非人道的な扱いを受けた子どもたちが下流階級に放棄され、それを殺し屋として育成し、下流から上流までさまざまな立場の人からもたらされる殺人の依頼をこなしつつ、中流階級で貧しいながらも大衆食堂の看板娘をやっているヒロインと出会い、ご近所さんとして仲良くやっていくことになる、というのが1巻までのあらすじ。
ヒロインは庶民派の常識人で、年頃の娘だけれども華美ではなく、よく言えばしっかり者、悪く言えば生活感のありすぎるオカンで、どうなんでしょうね……親しみやすさを覚える人もいるのかもしれないし、私は真面目な人間ではないので この手の真面目オカン系庶民派ヒロインはどうにも魅力を……感じない……オカンやんってなる……
1巻の表紙に描かれている少年が、このヒロインと出会って2巻以降でおそらくとても親しくなっていくのであろう殺し屋のよるくもさんで、この人はおもしろい。教育を出来るだけ遠ざけるように指示を受けて育てられた経緯があるので、受け答えが珍妙。ただこの受け答えが珍妙、というところがおもしろいのではなく、そういうキャラクターとして描かれた人物がどういうふうに動くのか楽しみ、という意味で、おもしろい。
世界をこう極端に3分割して、極端に戯画化して描くことに意味はあるんだろうか、実際にはそんなにすっぱり階層が分かれているわけでもない社会のほうが、よほど悪辣ではないか、という立場から、世界設定については高評価ができないのだけれども、教育をほぼ受けることのできなかった少年の成長の物語は楽しみといえば楽しみ。
本作は登場する女性キャラクターのほぼすべてに大変クセがある仕様なので、そこは人を選ぶかもしれない。男性キャラクターにも相当クセがあるといえばあるのだけれども、模範的な庶民派ヒロインと同じくらいに模範的な悪人として描かれているので、悪人かどうかよくわからないポジションで描かれる女性キャラクターたちのほうがクセの強い存在であるように感じてしまうところもあるように思う。