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感想・レビュー・書評
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2023年の現在は「月」すら未だ遠いままで作中の「2001年」とはまさに「月とスッポン」ほどの差を開けられているが、Chat GPTの登場でいよいよ「HAL9000」の背中が見えてきたので「AIと人間の関係性」と「AIの暴走」を巨匠アーサー・C・クラークがどう描いたか知りたくて手に取った。
さすがに「SFの金字塔」だけあって、世界設定もキャラクターも宇宙の描写も映画やSF小説でさんざん親しんできた内容だった。黒い石板の知的生命体(モノリス)は映画「インターステラー」の人工知能に重なる。そうだ、この映画にもワームホーム(本作では「スターゲート」)に主人公が飲み込まれて時空を超えるんだっけ。そっか、そもそもオマージュだったんだ。
https://theremightbe.hatenadiary.jp/entry/2014/11/24/024349
「暴走するAI」の系譜は「ターミネーター」や「トランセンテンス」で拡張されてきた。「宇宙の中の孤独な主人公」の文脈では、「オデッセイ」「ゼロ・グラビティ」の闇がより深い。人類の進化あるいは地球規模の「生態系(再)構築」の系譜では、「マトリクス」や「三体」が洗練させた。これらは本作が切り開いた新大陸に生まれた街と言えるかもしれない。そうか、本作がSFクリエイターたちの「モノリス」だったという訳か。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
色褪せない名作。表面的なHALはそろそろできそうです(反乱はしないと思うけど)。最後の宇宙旅行の描写は置いてかれたなぁ。
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言わずと知れた映画史に燦然と輝く名作。これはその原作となる話。
原題はスペースオデッセイ2001。ギリシア神話のオデュッセウスように宇宙をさまよい旅する物語。この物語は以下のような前書きから始まる。
「この世に居る人間ひとりひとりの背後には、三十人の幽霊が立っている。それが生者に対する死者の割合である。
時のあけぼの以来およそ一千億人の人間が、地球上に足跡を残した。
奇妙な偶然だが、われわれの属する宇宙、この銀河系に含まれる星の数がおよそ一千億なのだ。
地上に生を受けた人間ひとりひとりのために、一個づつ、この宇宙では星が輝いているのである。」
ここで扱われるのは進化の旅。生命の進化の究極の姿、そこに至る旅であり、宇宙の知的生命体の役割、ファーストコンタクトの意味について描かれる。
アーサーCクラークは、このテーマを「幼年期の終わり」という傑作でも追及している。
映画「2001年宇宙の旅」ではオープニングで、人類の祖先のヒト猿たちがモノリスに触れることで進化の道を歩み始める。
そこで流れるのはリヒャルトストラウスの「ツアラトウストラはかく語り」。ニーチェの「ツアラトウストラはかく語り」を音楽にした。「ツアラトウストラはかく語り」は神の死、すなわち宗教や道徳律、人間を縛るあらゆるものから人間が解放され、自からの意志で生きることを神話的な物語にした哲学詩にして思想書。2001年宇宙の旅では人が究極の進化により肉体から解放され、赤ん坊の姿で自在に宇宙を飛翔する姿が描かれる。
この映画の美術監督に手塚治虫が一度オファーされたという。彼は仕事を離れるわけにはいかず泣く泣く断ったと言う。彼のライフワークであった「火の鳥」に、火の鳥の血を飲み、永遠に生き続ける男の話がある。彼は肉体が滅び、魂だけとなり人間や動物から神としてあがめられる。
2001年はもともとスタンリーキューブリックがクラークとSFの映画を作るため、クラークの短編小説をもとにアイデアを出し合い話を膨らませていき、それが映画の脚本となり、一方クラークは小説にした。キューブリックはこの映画から敢えて説明シーンを全部省いた。それにより様々な解釈が可能な映画となり、それがこの映画の神話となっていった。物語は解釈することで作者の手を離れ観客の物語になる。そこが名作と言われる所以。
映画の最もオーソドックスな解釈がこの小説となる。
300万年前、飢えたヒトざるたちは食料不足で飢餓に苦しんでいた。彼らは新しい岩、モノリスを見つける。モノリスは知恵を与えた。ヒトざるたちは道具を手にし、初めて狩りを覚え、絶滅をまぬかれた。モノリスは人類を監視し、その進化スピードを計測した。地球上で役割をおえたモノリスは姿を消す。人類は月に進出し、そこに同じモノリスを発見する。
モノリスは300万年間、彼らを月で待っていた。発掘されたモノリスは土星の方角に信号を発した。人類はディスカバリー号という宇宙船を作り謎を解くため土星に向かう。
モノリスを作った人類の進化を見守る者たち、彼らは銀河系の中で、生命体の進化を促進する事業をはじめていた。彼らは星々の畑の農夫となり、多くの種の運命に干渉した。
「生物は自然が与えたもうた、肉体という棲み処から逃れ出る。脆弱で、病気や事故に絶えず付きまとわれ、ついには避けられない死へと導く肉体など、ないほうがましなのだ。精神はいつかは物資の束縛を逃れる。人工的な身体も、血と肉の身体と同様に、別の何か、遠いむかし、人々が魂と呼んだものへの踏み石にすぎないかもしれない。そして、その先にまだ何かがるとすれば、それは神以外にはない。
かれらは空間構造そのものに知識を蓄え、凍り付いた光の格子の中に永遠に思考を保存する方法を学んだ。物質の圧政を逃れて、純粋エネルギーの生物に変貌した。
神と変わらない姿となったかれらは思うままに星ぼしのあいだを飛び、希薄な霧のような空間の裂け目のなかに沈み込むことができた。かれらは遠い昔に着手した実験の成果を見守っていた。」
最終進化を得る資格を持つ生命体を探した。彼らが自分たちのところ、土星のスターゲートへ来るのにどれだけの時間がかかるのか、機械文明の壁を乗り越られるのか、彼らは進化の最終形にふさわしいのか。それをモノリスを使い監視した。
ディスカバリー号ではAIであるHALが反逆を起こし、乗員たちを殺していく。この一つ目のHALはオデッセウスに出てくる一つ目の巨人 キュクロープスを表しているかのよう。オデッセウスのように巨人を倒した船長のボウマンは機械文明の壁を乗り越え、たった一人でスターゲイトを訪れた。探求者たちは彼をその資格者と認め、新たなる進化を与える。そこでボウマンはスターチャイルドとしてよみがえる。
ディスカバリー号は頭があって長い尻尾がある形状。これは精子を想像させ、モノリスに導かれ遭遇する宇宙空間スターゲイトは子宮のようであり、最後のスターチャイルド宇宙に浮かぶ赤ん坊の姿に繫がっていく。
スターチャイルドに生まれ変わったボウマンはオデッセウスのように故郷である地球に戻る。-
ありがとうございます。よければ映像化したものもあるのでご覧ください。
https://www.youtube.com/channel/UC...ありがとうございます。よければ映像化したものもあるのでご覧ください。
https://www.youtube.com/channel/UCbESuSr2mU2dYaecJLiQjNg
2023/05/31
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※2018.9.24購入@kindle版
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オレもスターチャイルドになりたい。
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人類の歴史は、宇宙からの干渉によって変えられてきた。月の裏側に埋もれていた謎の物体「モノリス」が発見され、その信号に導かれて木星へ向かう宇宙船ディスカバリー号が出発する。しかし、船内の人工知能HAL 9000が暴走し、乗組員の命を狙う。唯一生き残ったデイヴ・ボウマンはHALを停止させ、モノリスの謎に迫る。そこで彼は、驚くべき宇宙の旅に出ることになる。
本書のテーマは、人類と宇宙の関係だと思います。人類は宇宙からの影響を受けながら進化してきましたが、同時に宇宙に挑戦し、理解しようとしてきました。しかし、宇宙は人類の想像を超えるほど広大で不可解なものであり、人類はその一部にすぎません。この本は、人類が宇宙に対してどのように向き合うべきか、という問いを投げかけています。
この本を読んで、私は、作者の想像力と科学的な知識には驚かされるばかりでした。特に、宇宙船の中でのHALとの対話や、ボウマンの宇宙の旅の描写は、息をのむほどスリリングで美しいでした。この本は、1968年に発表されたのですが、今読んでも全く古さを感じません。むしろ、現代の宇宙開発や人工知能の問題にも通じるものがあります。
総評として、SFの名作として名高いだけあって、素晴らしい作品でした。人類と宇宙の関係を描いた壮大な物語でありながら、個々のキャラクターの感情や思考も丁寧に描かれています。また、本書は、読むだけでなく、映画や音楽とのコラボレーションも楽しめます。実際に読み終わった後に、私は、スタンリー・キューブリック監督の映画版や、リチャード・ストラウスの交響詩「ツァラトゥストラはかく語りき」を聴いてみました。それぞれが、この本の世界観を異なる角度から表現しており、とても興味深かったです。本書は、宇宙に興味のある人はもちろん、人類の未来について考えたい人にもおすすめです。 -
映画は見ている。映画の解説も読んだ上で読んだがあの有名な解説は基本的にこの小説から引用されているのだろう。他人に解説されるよりも自分でドラマとして読み進める面白さを実感。中盤の小難しい描写に若干読む手がまごついたが前半と後半は一気に読んだ。現実的な近未来技術の細かな描写、モノリスの影響、プールとハルのスリリングな顛末、ボーマン船長の圧倒的な孤独と深淵宇宙の冒険、そして邂逅、変化と文字ながらも映画の情景をイメージしながらなお深く納得しつつ想像を超えるドラマ描写に圧倒され感動した。
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オーディブルで聴いた
この後映画観たら過去の自分何をみてたんだ???となってウケた -
いくつかのSFで引き合いに出されるのもあり、どんな話なのだろうと思って読んでみた。なるほどなと思う一冊だった。