市川雷蔵演じる主人公は大学の剣道部の部長で、他の部員には真似ができないストイックさを貫き、それをまた他の部員にも当然のことのように強制する。彼のことを心から慕っている部員はただ1人しかおらず、残りの部員は彼の技量を尊敬しているから従っているだけで、彼の信条には共感していない。いや、それは部員だけの話ではなく、彼の両親も、さらには剣道部の監督でさえも彼の考える「剣の道」を本当のところ理解はしていないのである。
そういう意味では主人公は孤独な男ではあるのだが、その孤独な男が最後に行なった「選択」とはいったいどういう意味だったのか。私には結局のところ、「この男は剣を通じてしか人と向き合うことのできない人間だったのだなぁ」と思えてしかたがないのである。