- Amazon.co.jp ・電子書籍 (169ページ)
感想・レビュー・書評
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ジャンルとして、というより登場する景観的にはサイバーパンクではないんだろうけれど、身体の機械化に伴って提起されるだろう、自意識の問題なんかも取り扱われていて、きちんと向き合っていたのが好印象。というか、そこも扱うんだ、という感じでいい意味で不意打ちを食らったような。その問いや結論自体が素晴らしく異彩を放つものではないけれど、着地点は爽やかで良かったと思う。
また、キャラクターが極端に少ない中で、しっかりと話が展開している部分も良かった。その分やや膨らみが少ないのは否めないだろうけど、あまり問題だとも思わない。全く私事になるけれど、こういう限られたキャラクター、戦場から離れた固定された舞台で、宇宙戦争とリンクさせた物語を描いているというのは、自分が改稿しようと考えている話の参考になるような気もして、思わぬ収穫だった。
惑星やマリアの存在が、単に美しい景観としての舞台、或いは美少女キャラクターで終わることなしに、「なぜそうであるのか」をきちんと突き詰めていくのは、極めてSFチックだなあ、という感じ。
全体としては、(当然、少し古い)ライトノベルらしいフォーマットの中でも、妥協なくSFらしいテーマ・物語が描かれていて楽しめた。話や設定の密度、衝撃度合いなんかはBEATLESSに敵わないけど、語り口はこっちの方が読みやすかったかも。視点人物がコロコロ変わる部分は、致命的でないまでもちょっと読みづらいかも。
もう少し踏み込んだ話は、わずかだけどコメントに残す予定 -
綺麗な物語だった。
少し古いアニメの映像が浮かぶ。 -
ずいぶん前に電子書籍で購入したものを、病院の待ち時間で思い出して読み始めたら、無類に面白くてあっという間にラストまで読み終えた。
とある大戦に巻き込まれている戦士2名+民間人1名が箱庭に閉じ込められ、その中の日常生活を通じて様々なドラマが繰り広げられる的な構成。日常シーンが淡々と進むだけなのに、話がどんどんドラマチックになっていき、作者の確かな手腕を感じた。全部読み終わった後に謎は結構残るけど、途中で明かされるある真実には軽いショックを受けた。SF好きな人は読んで損なしかな、と個人的に思った。この世界観での続編とか読んでみたいな、と思った。有るのかも知れないけどね。 -
もう紙では入手できないけれど、電子書籍なら読める作品。汎銀河同盟と人類連合が地球を巡るレコンキスタとして始めた1000年以上続く戦争の世界。人類連合が死守する拠点32098と呼ばれる惑星。そこに不時着した汎銀河同盟の降下兵ヴァロア(全身を機械化したサイボーグ)、拠点32098のわずか2名の居住者である人類連合の制御官ガダルバ(ロボット)と生身の少女マリアの3名の物語。人類連合が死守しようとする惑星の秘密は何か、場違いなマリアは何者かを巡って物語は進む。リリカルな話で、人とロボットの交流を描くという内容は、著者の『beatless』等につながっている。
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これは……これでデビューか。なるほどなー。今に繋がってるなあ。
ボーイ・ミーツ・ガールかと思ったら、ボーイ・ミーツ・ボーイだった、って感じ。別にロマンスとかは...
ボーイ・ミーツ・ガールかと思ったら、ボーイ・ミーツ・ボーイだった、って感じ。別にロマンスとかは始まらないけど、違うようで似ている二人が出会うことで、互いのモラトリアムに自覚して、ようやくそれが終わるような、その出会いによって気持ち的に一歩足を踏み出せたような話だった。こう書くと、ほんと凄く良いな。
結局、ヴァロワがその後どうなったかはともかく、一部無駄じゃなかったっていうのも良い落とし所。
あとがきから考えると、やっぱり残酷な天体ショーが書きたくてここまで設定を練ったんだろうか。