ちょっと不思議なテイストの話なので、いちおう私なりに物語を説明すると、イギリスからローマにわたってきた録音技師がホラー映画(まあ、感じとしてはダリオ・アルジェント)の吹き込みを延々と手伝わされるという話です。どんなホラー映画の録音を担当しているのか、その映画の画面はほとんど出てこないので分からないわけですが、まあ、とにかく同じシーンの収録を何度も何度も何度も取り直しさせられる、悪夢のような状況です。
しかも大変しゃれたことに、人間が殺されたりする効果音は全部野菜や果物を使って、けっしてお肉は使わない。このあたりの演出も面白い。
結局のところ、これは地獄巡りのような話で、トビー・ジョーンズ演じる録音技師も、物語の冒頭ですでに死んでいるのでしょう(それは実際には存在しない飛行機のチケットを持っていることで示唆される)。
彼はいったいどの時点で死んでいるのかは分かりませんが、まあイギリスにいるときなのかなぁ。お母さんとなんかあったのかも。
それと同時に、いかにも根暗なイギリス人が万事において適当なイタリアに行って遭遇しそうな不条理状況を延々と描いているという点でもよくできた物語です。