椿さんの感想
2020年11月1日
夏の区界はどうして生まれたのか、「大途絶」は何故起こったのか。 バーチャル世界の外、開発者側のことが語られる今巻。 「科学的根拠を伴った悪霊」とでも言うべき『クローゼット』のアンナ・カスキの挙動は、ただただ恐ろしい。 簡単に逃げられない論理的な理由があるぶん、下手なホラーより怖い。 『魔述師』のラストが、頭にこびりついて離れない。 いちばん晴れやかで綺麗な瞬間に起こる大途絶、という残酷さ……。
1960年島根県生まれ。島根大学卒。第1回三省堂SFストーリーコンテスト入選。『象られた力』で第26回日本SF大賞、『自生の夢』で第38回同賞を受賞。著書に『グラン・ヴァカンス』『ラギッド・ガール』。 「2019年 『自生の夢』 で使われていた紹介文から引用しています。」