狼と香辛料 (電撃文庫) [Kindle]

著者 :
  • KADOKAWA
4.10
  • (18)
  • (20)
  • (11)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 207
感想 : 15
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (329ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 4.0

  • 本作は中世ヨーロッパを思わせる世界で、旅の行商人クラフト・ロレンスと、何百年も生きている狼で人間に化けることが出来るホロの二人が主人公となる物語だ。
    日本のファンタジーではヒロインが突然空から降ってきて主人公と出会うという”ラピュタ的”な出会いが一つの型となっているが、本作でも二人の出会いも突然に訪れる。ホロは長い間「豊作の神」としてある村で信仰の対象となっていたのだが、その街に行商のために偶然訪れたロレンスが、ふとしたきっかけて彼女に対する束縛を断ち切ることになったのだ。

    数百年も生きており正体は人間よりも遥かに強大な狼であるはずのホロは、ロレンスの前に誰もが振り返るような美少女として登場する。そのいかにも「ラノベ的」な展開を受け入れることが出来れば、もうそこからはノンストップで物語が進んでいくのにただ心地よく身を任せればいい(この「ラノベ的」というのはもちろん褒め言葉だ)。二人の馬鹿馬鹿しい会話やちょっとした描写から、彼らの旅がまるで目の前で展開しているような錯覚を覚えるだろう。


    本作ではロレンスの行商人という設定が物語の基本となっているためか、少なくとも第一巻の本作ではストーリーは彼らが商売を通じてどのように儲けていくか・・ということは中心となっている。現代のようにデジタルなサービスはなく、車のような動力機すらないこの世界では、裸一貫で成り上がるためには知恵と勇気をフル回転させて、自らが動くことでお金を儲けていく必要があるのだ。

    商人であるロレンスの行動様式はその職業柄からも「儲けること」であり、彼はその基本原則に忠実に行動をする。言い換えると、この主人公はファンタジーものでよくあるように「世界を救うため」とか「宿敵であるXXを倒すため」に旅をするのではなく、いつかはどこかの街で店を開くという自分の夢のために街から街を旅するのだ。彼らが巻き込まれるトラブルや事件も全て「リスク少なく、より多く儲けるため」であり、そこには”大きな物語”は存在しない(少なくとも今の所は)。第一巻である本作では彼らはパッツィオという街で、 2つの商会が絡む為替と貨幣価値の切り下げ、そしてその出来事に関連した儲け話に巻き込まれることになる。

    武力よりも知力で事を解決することをモットーとするロレンスだが、この儲け話では自らも重症を負うようなピンチに陥ってしまう。しかしそのような手に汗握るような場面でも本作の場合は決して話が重くなりすぎる事はなく、小説を読み慣れた読者であれば想像がつくような方法で二人はピンチを切り抜けていく。 物語の展開で驚きを求めるようなタイプにはあまり向かないが、予定調和の中でも心地よく物語の流れに乗ってきたいタイプには、ぴったりのエンターテイメントだろう。


    もちろん、本作では深くは語られなかった教会の存在、あるいは大規模な国の存在というものも、このシリーズが続くにつれてより存在感が増してくるのは間違いないだろうし、 いずれはホロに関連する”大きな物語”も提示されることになるかもしれない。しかししばらくの間は、彼らの何とものんびりとした二人旅を楽しめると思うと、早く第二巻に取り掛かりたいと思うのだった。

  • 15年以上ぶりに再読。
    当時としては珍しかった経済系のラノベですが、今読んでもまったく古くなく、楽しく読みました。

  • 2024.01.18. audible

    どうしてこんな設定を考えられるのだろう。
    尊敬する。
    とても楽しみなシリーズに会えてよかった!

    ホロめっちゃかわいい。

    Amazon 本のしょうかい
    行商人のロレンスは、馬車の荷台で麦の束に埋もれて眠る少女を見つける。 少女は狼の耳と尾を持つ美しい娘で、自らを豊作を司る神・ホロと名乗った。 「わっちは神と呼ばれたがよ。わっちゃあ、ホロ以外の何者でもない」 まるで経験を積んだ大人のような話し方で、ロレンスを巧みに翻弄する少女。 「お前は、本当に神なのか?」 最初は半信半疑だったロレンスも、やがてホロが旅に同行することを承諾する。 そんなふたりの旅に、思いがけない儲け話が舞い込んでくる。 近い将来、ある銀貨が値上がりするという噂。 疑いながらも、ロレンスはその儲け話に乗るのだが……。

  • 面白かった!
    キャラクターの良さと文化や世界観の作り込みが他作品の非ではない!
    ホロは可愛いけど弱さも見せる素直さと賢さのあるキャラクターで、ロレンスも誠実さの中に人間らしさがあってとても好きでした。

  • ラノベのファンタジーモノといえば『剣と魔法』一強だった時代に、ピンチを『経済の知識』で乗り切るという斬新な手法で書かれた本。狼と香辛料が発表されてからラノベの間口が広がったように感じる、とは言い過ぎだろうか。

    この本の魅力はアイデアにとどまらず、キャラクターにも及ぶ。
    一見、線の細い美少女でありながら、中身は老獪であり長き時を生きる賢狼ホロ。ホロに翻弄されながらも、商人としての知識とふてぶてしさを要所で発揮し、難題を乗り越えていくロレンス。
    二人の駆け引きもこのシリーズの見所だ。

    本編は完結して久しいが、いまだにふと思い出しては書棚から引っ張り出して二人の旅を追いかけている。たぶんこの本を手放すことは一生ないだろう。

  • 中世ヨーロッパを舞台
    行商人ロレンツと狼の化身ホロが交易路や街の商取引で様々なイベントに出会い、障害を乗り越え旅するファンタジー。

    ロレンツとホロの掛け合いが面白かった。何気ないセリフでもホロの賢さやあざとさが出ていて魅力的だった。

    ベニスの商人、株、簿記の誕生など経済史的にも大きな変化があった中世ヨーロッパを舞台としていて経済史を知っているとより楽しめた。

  • (2022/389)10年以上前にDainさんの書評(スゴ本ブログ)で知って読んだ。ビジネス(商売)も学べちゃうラノベとして。行商人のロレンスと、豊作の神とされていた狼の化身ホロとの出会い。出会いの場面までは結構覚えていたんだけど、その後の展開は記憶が薄れていた。なのでタイトルの意味も読み返して漸く分かった次第。前回はこの一巻限りで続きを読んでいないので、今度は読み放題対象のうちに続きも読んでも読んでみよう。

  • 読んでいく内にハマりそうな作品だと思った。まだ自分では理解することができないが(商談について)、何度も読み返して物語の全貌が分かる気がする。物語のペースは丁度良いと思った。

  • 最近めっきりこういう類のものは読まなくなっていたが、「ライトノベルの中でも面白い」と推されたので読んでみた。あまり期待していなかったのだけれど、中身は割と凝った内容になっていて面白いと感じた。キャラの設定や背景にはライトノベルの感はあるけれど…

全15件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

第12回電撃小説大賞《銀賞》を受賞し、電撃文庫『狼と香辛料』にて2006年にデビュー。

「2023年 『新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙IX』 で使われていた紹介文から引用しています。」

支倉凍砂の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×