工学部・水柿助教授の逡巡 The Hesitation of Dr.Mizukaki [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  •  水柿助教授と彼の妻である須摩子さんの視点を借りて森博嗣先生ご自身の日常と逡巡を描いた小説風エッセイ第二弾。書かれていることの多くは『小説家という職業』と重複しているのだが、この作品の魅力は、森先生が自分自身の思考や感情を客観的に認知し表現しようとしているところで、このメタ認知の視座・視野が森ワールドの源泉なのだ。小説ではないが(小説という形を呈してはいるが)、読者は時間が過ぎることを忘れて物語に引き込まれている自分を発見することだろう。中には私のように電車を乗り過ごしそうになる人もいるのではないだろうか?

     ガツガツと作家になろうとしているわけではないのに、他の作家志望の人とは違うアプローチでチャンスをつかみ、売れっ子作家になってゆく水柿君こと森先生…?もちろん書き上げた作品そのものに魅力があったとからだと思うが、アイディアが沸かないというたぐいの生みの苦しみはなく、そこにあったのは、出版業界の慣習にとらわれずに真面目に責任を果たそうとする姿勢だった。

     水柿君と須摩子さんのなれそめについては、明確に語られていませんが、お財布に小銭しか入っていない状態で、友達と喫茶店に入ることすら躊躇していた須摩子さんが、ポンと現金で広大な土地を変えるご主人の妻になったわけですから、そのギャップは半端ないですよね。その変化に伴う軋みについても知りたいのが野次馬です。

     『小説家という職業』にしても、この『水柿助教授の日常~逡巡』にしても、誰もがまねできることではないですし、まねできたとしても同じような成功を掴めるかどうかはわかりませんが、一つ言えることは、仕事の心構えとして「自分の責任を果たそうとする姿勢が大切だ」ということなのだと思いました。

     この『水柿助教授の逡巡』を読むと、自分を客観的に観ることの大切さを感じます。私は今、岸見一郎先生の著作をはじめとして、アドラー心理学関係の本を読んで、自分を客観的に観察し、ありのままの自分を認めた上で、よりよい方向に成長していきたいと、考えているところです。

  • 水柿助教授のが小説家になったので、ミステリーの定石とか、小説家の生活とか、須摩子さんとのやりとりとか、等々の話がまったりと続く。地の文にも色々と作者をあるいは水柿助教授を揶揄するような文章が書かれ、ストーリーがあるような無いような話が続くが、読んでいて癖になりそうだ(汗)。

  • なんの本なのかわからなくなってきた。

  • 箸を刺すまでもなく、空も、いい感じだった。

著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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