割引クーポンがあったので、一度、電子書籍でも読んでみるかとページレスで初めて購入した作品。
タイトルがとても詩的で、カバー表紙もきれいな感じ。のっぺらぼうなんて久々に聞いたぞと、紹介文には少々面食らったが、読み始めてからが退屈だった。
まず、兄の一人語り。間でちょくちょく、お前もそうだったよなと弟に同意を求める所が好きじゃない。一人称で話すなら何ら違和感がないのに、それをする事で、物語にも入り込めない。
途中、兄の幼少時代になってからは幼い頃の兄が主体となり、ぐんと読みやすくなった。
次にサクラバ、ドグリバ、タンカス山なんて凝った固有名詞だされても分かりにくい。少しあるだけならいいが、この物語は登場人物まで名前がややこしい。ヤスッパ、ベィジィ、サンタ、シラゲ、キンカクなどなどみんなカタカナにしてくれる。
本当に中盤までは何を目的にこのエピソードを書いてるのだろうと頭にクエスチョンマークを浮かべて読んでいた。
しかし、物語が動き出し、不可解の死が次々と起こり出すとあっと言う間に引き込まれた。兄にしかない特別な能力。そして、黒幕が誰かわからない中で襲ってくる恐怖。
《稀人》、《解す者》、《違い者》なんて聞いただけでもワクワクしないだろうか。
しかも、彼にだけ判る、彼にしかできないという特別感は読者を一層喜ばせる。
ただ、総合評価でいうと、伏線というか、話の種の回収をやりきってない所に粗さが目立って普通よりやや低めの印象。
腕を切ってしまった作業員がいたからどうなんだ、赤いノートがあったからどうなんだという話。他の人は簡単にやられてもヤスッパは拉致られても殺されないし、その理由を犯人の願いと本心に重ねられても安上がりで、どうも納得がいかない。ヤミガコイでみた人形はなんだったか。
一番の残念なところは、弟の息子、彰に結局、何もしてやれない所だった。
のっぺらぼうを見たら呼んでくれと息巻いてた割には説明して現状を受け入れろと。
対処法はないのか。あの瞬間に、弟の家族は、彰は奈落の底に突き落とされたのではないかと思った。