神去なあなあ日常 (徳間文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 林業のお仕事話。高校出たらフリータなんて将来のことを真面目に考えてなかった勇気に先生が持ってきた就職先が神去村での林業。文句を言いながらも頑張る勇気は良い青年だ。仕事仲間のヨキ、清一さん、巌さん、三郎じいさんそれぞれがしっかりとプロだ。よそ者扱いされる勇気をしっかり守ってくれる。勇気も一年間良く頑張ったな。最後のオオヤマヅミさんの祭り、山下りが凄い迫力だった。

  • 映画は「Wood Job」。自然っていいよね。森っていいよね。山っていいよね。でも、自然って怖いよね。日本の八百万の神に守られた国なんだな、というのを、まったりと感じさせるテイストがいいな、と思います。

  • 都会から林業の見習いとして、神去村に連れて来られた平野勇気は、少しずつ村の風習に慣れて、みんなに受け入れられていく。
    四季折々の自然の描写が美しい。

  • 語り口調で進んでいくので
    とても読みやすいです


    のほほんとした物語。


    田舎の暮らし、林業のことについて書かれています

  • 三浦しをんさんお得意の「職業」シリーズともいうべき著作。

    斜陽産業と言われて久しい「林業」をテーマに、三重県の山奥の村で主人公が一年を過ごしてそのコミュニティにコミットしていく姿を書く。

    半ば強制的に連れて来られて反発しつつも次第に住民の独特の「なあなあ」な気質というかもはや哲学とも言うべき生き方を快いものとして受け入れていく描写はさすが。ほんと凄い。

    文章の力というのを改めて感じるのは、クライマックスである樹齢千年を超えるという杉の大木を村の男たち総出で山から下ろすというシーン。
    この迫力と緊迫感はやはり活字の力。どんなに映像技術が発達してもこの読んでいる時のワクワク感、どきどき感を超えられるとは思えない。

    さらには山おろしといわれる、霧が山々の山頂から押し寄せて、あっというまに自分の周りが冷たい乳白色に包まれ全く視界を奪われる恐怖感、得体のしれない鐘の音や鈴の音、オオヤマヅミと呼ばれ崇められている山の神様の娘たちの紅白の着物のビジュアル。
    あれは読書体験の快感の最たるものだと思う

    そういう意味では今回映画化されているけれど、どれくらいしょんぼり作品になっているかは逆にちょっと気になるところ。

    「まほろ町」の映像化はキャスティングの妙と町田という街のビジュアルで奇跡的に素晴らしい仕上がりになったが、ああいうのはちょっとなかなか無いからなぁ。

  • 三浦しをんさんの林業の小説。終盤の祭の勢いが凄かった。
    林業って単なる仕事というより、村丸ごと、生き方そのものだなと感じた。9時5時の都会の仕事とは根本的に違う。生活リズムもそうだけど人生観も違う。
    業界が持続可能ならいいけど、この姿のままだと後継者不在で立ち行かなくなりそう。

  • 自分が横浜で生まれ育った18歳で、突然こんな村で住み込みで働くことになったらどうかと想像する。耐えられない気がする。
    横浜なんかよりも遥かに田舎の生まれだし、自然も動物も好きだし、基本的に人が多いところが嫌いだけどそれでも。人が多いところが嫌いと言っても匿名の人々が多いのは別に気にならなくて、狭い範囲で密度の濃いコミュニケーションを求められそうなのが嫌なのかもしれない。あとネットは欲しい。
    まぁ自分のことはおいておいて、この本の主人公は見事に環境に適応していく。周りの人たちもクセはあるがいい人ばかり。
    どんな仕事も奥深くて、それに情熱を燃やす人たちがいるんだなと考えた。
    ド派手な祭りの描写は、ド派手で爽快ではあるが、やはり田舎の伝統的な祭りとか謎の風習のようなものにはあまり価値観を共有できないなと思った。

  • 自分が山が近い田舎に、住んでいることもあり内容はかなり近いものを感じながら読めました。

    日常の描写の上手さは、流石三浦しをんだなと感じる部分が多く、すーっと読みきることができました。
    小さな出来事が色々とおこる、短編の集まりみたいな部分もあり、軽くよめる本でもありますが、林業、田舎の問題も考える深い部分もあるかなと感じる本でした。

  • 職業を魅力的に描くのが上手。

  • 高校を卒業後フリーターで過ごしていこうとしていた平野勇気。
    ところが両親や担任の先生の勧めから三重県の林業の現場へと放り込まれてしまうというお仕事小説。

    お仕事小説は今までに色々なものを読んできましたが、
    林業を題材にした小説というのは今までに読んだことが
    無かったので興味深く読み進めていました。

    主人公の勇気を通して林業という仕事の大変さ大切さを
    より深く知ることとなりました。
    大自然を相手としているだけあって一筋縄ではいかないとは想像していましたが、それ以上に山合いで生活している人達の生き方や古くからの風習などを理解し、受け入れながら
    林業という仕事を全うしていくのは大変なことだなと思いました。
    ただでさえ地元の過疎化で若者が少なく林業に携わる人達も
    少ないというのに、林業を営むという覚悟もせずに林業に取り込むというのが
    それ以上に大変だなというのがよく伝わりました。

    村に着いたばかりの頃は本当に勇気が林業という大事な仕事が出来るのだろうかと思うほどの素人でしたが、
    仕事に入ってしまうと少しマイペースな性格もありますが、
    意外と山仕事に精通する人物と接していると真面目に
    取り組んでいて、弱腰な部分があっても諦めずに仕事に向かって姿を見ると好感が持て、怪我をしないように頑張ってと応援したくなるような気持ちになりました。
    勇気はもしかしたら根は真面目で心の優しい人なのかなとも思いました。

    一人一人の登場人物の人格がそれぞれの役割がきちんと成り立ちながら
    登場していて、それが林業をしていく上でのチームワークだったり、
    集落で生きていく人達の仲間意識に繋がっていくのを感じられました。
    このような集落での人との営みや絆が昔は何処の地域でもあったと思いますが、
    今では忘れ去られてしまったので、
    この作品を読むと素朴な温かさが心に響きました。

    こんなに科学的で近代的な時代になっても、
    山では神様がいると信じられたり、神隠しを信じたり、
    この作品に登場する神様を祀るお祭りが実際にもあります。
    こうゆうことから想像するとやっぱり科学的に証明できないという
    ものもあるのではないかとも思えて仕方がなかったです。
    文中にあった
    山は近寄りがたくて恐ろしいばかりじゃない。
    誰も見ていなくても、こんなきれいなものを、
    毎年実らせる。

    当たり前のことになりますが、
    山の神様を人間が怒らせないようにして
    自然を大切に守らなければいけないなと思いました。

    林業だけの話ではなく、青年らしく恋心も登場していくるので、
    こちらの内容もユーモラスで面白かったです。
    タイトルにある「なあなあ」という言葉の意味もしっかりと分かってすっきりとしました。

    勇気の心の奥底の本音を聞きながら、
    林業と自然への大切を清々しく知ることのできる作品でした。

    シリーズ第二弾として「神去なあなあ夜話」があるので
    これも続けて読みたいと思います。

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著者プロフィール

1976年東京生まれ。2000年『格闘する者に○』で、デビュー。06年『まほろ駅前多田便利軒』で「直木賞」、12年『舟を編む』で「本屋大賞」、15年『あの家に暮らす四人の女』で「織田作之助賞」、18年『ののはな通信』で「島清恋愛文学賞」19年に「河合隼雄物語賞」、同年『愛なき世界』で「日本植物学会賞特別賞」を受賞する。その他小説に、『風が強く吹いている』『光』『神去なあなあ日常』『きみはポラリス』、エッセイ集に『乙女なげやり』『のっけから失礼します』『好きになってしまいました。』等がある。

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