恋は底ぢから (集英社文庫) [Kindle]

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  • 「いい女」と「オールドミス」の違いは、「かげり」のあるなしではないだろうか。
    いい女にはどことなく不幸のフレイバーが漂っている。それが男をして、「よし、俺が幸せにしてやる」式のアクションを起こさせる。オールドミスの場合は、そうゆう「かげり」はなく「暗さ」がある。無理に明るく振る舞ったり、若造りしたりする裏に、男は深々と横たわっている闇を見てしまうのだ。

    不倫と言われれば一言もない。一言もないのだけど、一言言わせてもらえば、そういうことを言う人は結婚というシステムや、モラルという種族にとっての安全バルブの味方であって、決して切れば血の出るような生身の人間の味方ではないような気がする。

    美輪明宏は自分の幻想に同化するために苦行に近い努力をしたに違いない。彼の欲望の対象が三島由紀夫であったことは当然だ。彼も自己を幻想と同化させることに命を張った存在だから。

    僕らはみんな、自分が弱くて劣っていることを知っている。だから勇気を出すために、他人を差別し攻撃することが必要なんだ。だから笑うんだよ。

    民俗学が好きで、フレイザーからエリアーデ、ストロース、レリスなどを読み漁った時期があった。

    土人の「ハレ」の姿を、そのまま持ち込んだのがショービジネスの世界。だからそうゆうオーバーデコレーションなハレの姿を人に、ケの世界である地下鉄などで、出くわすと、びっくりしてしまうと共に、「あ...土人....」と思わず呟いてしまう。アクセで身を飾るといのは、自分を失ってみせること。自分について喋れば喋るほど、言葉によって自分が虚構化されていく、喪失感に似ている。
    別の言い方をすると、土人はありとあらゆる物を身に着けて本来の自分を空無にしていくことで、ある種の聖性に近づこうとするのだ。

    広告屋「文化も風俗も我々がつくります。悪いこよ言わないから御社(おたく)は金を出しなさい。アホを乗せてみせます。幻想のマーケットを実体に仕上げてみせます。」

    アントニオ猪木
    「ピンチっていうのはね、ひとつのものじゃなくて、いろんなやっかいごとが、ダマになってやってくる。だからみんな負けちゃうんです。そのダマをひとつずつ解きほぐして、ひとつずつやっつけていけば、ピンチってのは必ず乗り切れる。」

  • 鋭く尖った、粒ぞろいのエッセイ集。どれもよかったけれど、<その日の天使><肌寒いパーティー><恋づから>は、他の人には書けないとおもった。<恋づかれ>など、何かに取り憑かれているみたい。シャイな男が、力強く恋愛至上主義を叫ぶ。

  • くだらないというかゆるいというかバカバカしいんだけど、こういうエッセイが時には必要なのが大人というものです。

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著者プロフィール

1952年兵庫県生まれ。大阪芸術大学放送学科を卒業。ミュージシャン。作家。92年『今夜、すべてのバーで』で第13回吉川英治文学新人賞を、94年『ガダラの豚』で第47回日本推理作家協会賞(長編部門)を受賞した。2004年、転落事故による脳挫傷などのため逝去。享年52。

「2021年 『中島らも曼荼羅コレクション#1 白いメリーさん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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