鉄の骨 (講談社文庫) [Kindle]

著者 :
  • 講談社
4.09
  • (41)
  • (60)
  • (26)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 504
感想 : 35
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (537ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 現場作業員だった談合に纏わるヒラ社員の富島平太(主任)中堅会社の若手ゼネコンマンのお話し。
    ゼネコン各社の談合に政治家が絡み事無き日常に警鐘をならした作品。談合(調整)は建設に限らずどこの業界でもある話しだ。医療、農業、工業、漁業、商業にも当てはるかもしれない。
    入社四年目の平太に黒い世界に異動になった業務課。そこは営業課とはまた趣きの違う談合課と揶揄される。何故、そんな所に現場が似合う平太が移動?!成る程、読めば読む程納得。
    個人的には何度もある業務課の飲み会シーンが好きだ。黒い世界で生きる戦士の休息の様だ。
    少しぽっちゃり体型で普段はユーモラスだが仕事は辛辣を極めるデキる戦士、西田の言葉が物語をリードしていた。また、恋愛面で野村萌の存在のすれ違い(談合)調整と対比してる様に感じた。恋愛の二股も談合同様必要悪かも知れない。
    一松組の大仏さまこと、常務の尾形の仕事こそ談合世界生きる人間の強かさ汚さだ。談合会の天皇三島との相対関係も面白い。
    『走れ平太!』腹黒い社会の理不尽なんか突っ走れ!

  • Audible読了
    シンプルなストーリーで、お得意の銀行や町工場もやや遠慮がちにしか出てきません。終盤のヨセもやけにあっさりしていて池井戸作品独特の噛み応えみたいなものは希薄だったように思います。

    その中でも学ぶべきことは多く、物語は入社4年目の若手社員が大手ゼネコンひしめく官製談合の世界に放り出されるというものですが、そこで出会うフィクサー的人物にすこぶる好感を持たれます。つまりかわいがってもらえるというやつです。これに明快な説明はなく、実直さや情熱、正義感だけではない、公正な感覚だったり時に諫言できる育ちであったり、努力を放棄したわけではないですが縁や地運といったような言語化したり学びとるに少々難しいものも作用しているんじゃないかな、なんて思いました。

    もうひとつ印象的なのは、サラリーマンは代わりのきく部品みたいなものですか?と問う主人公に対しフィクサーの回答。
    「部品そのものさ。私だってそうだ。お前もだ。ただし部品というのは仕事という目的の話に限ってであって、同時に私たちは人間だ。サラリーマンである以前に人間だ。そこが大切なんだ。」と説く。
    文章だとごくありふれたフレーズですが、私は敢えて社会の歯車になることの、その喜びが正直に表現されているなと受け止めました。他の作品でも例えば『コンビニ人間』なんかで思いましたが、みなが何者かになろうとして苦しむ中で、その欲から解き放たれたような人物像を見ると具体的に何がというわけではなく、空気のようなものが自分の中をすーっと通っていく、そんな感覚になります。

  • 平太から徐々に離れていく萌の心が切ない。

  • 後半は一気に話が進み目が離せなくなる。
    ストーリーとしても面白かったが、人事異動で新しい部署で働き始めた主人公と同じ境遇のときに読んだため、勇気をもらえる言葉や行動がたくさんあって胸に響いた。(Audibleで読了)

  • 同じような業界にいたから親近感湧きました!
    そして似たような人たち、似たようなことをしていたなぁと懐かしさもあり。
    半沢直樹ほどの大どんでん返しはないけど、これどうなるんや!?っていう興味は湧いたし、何より入札での緊張感と驚きに叫んだ!
    とてつもない盛り上がりはないけどいつもの池井戸さんの暖かみもある良い小説でした!

  • Amazon Audibleにて拝聴。

    建設業界での談合をテーマとした珍しい作品。
    池井戸作品らしくテンポ良く進み、気づけば没頭してしまう。
    建設業界に馴染みのない人にとっても何の苦も無く読める内容で、むしろこんな世界もあるのかと学びになる。

  • まあまあ面白かった。池井戸作品は、最後の締めくくりがいつも今ひとつだな

  • 『下町ロケット』『半沢直樹』などドラマは見てきたのですが、小説で池井戸氏の作品を見るのはこれが初めて。結論を言うと、小説も「持っていかれる」程の面白さでした。文庫で650ページ超の分厚いものでしたが、読む手を止めることができず一日で読了。

    <主人公平太に感情移入!>
    本作、大分持っていかれました。きっと池井戸氏は現実のリーマンあるあるを上手に掬い取り、それをフィクションとして小説に織り込む技に長けているのだと思います。

    平太が当初、え?談合ってダメじゃん?って思いつつも、会社の論理に染まりつつあるところ。談合のドン三橋が談合は良くないと思っているところ(個人の価値観と会社・社会の価値観とのずれ)。一見ダサめな先輩が実はデキメンだったり、社長(上司)がボンクラ過ぎていつも方針が迷走する等々。銀行員が口ばかりで真剣に取り合わないとか。あと、二日酔いでの出社笑。今はもうないのですが、私も若い時は二日酔いで顔が赤いまま出社とか、深酒して寝坊とか、まあ結構やっていました(若気の至りです)。

    このほか、恋愛的要素(銀行員園田が憎たらしい!)、平太の母親と三橋との関係、母親の病気など起伏があり、読中まったく飽きる事がありませんでした。

    <おわりに>
    これはもう絶品エンターテインメントでした。
    いわゆる純文学系の作品と比べると言葉や表現の美しさはそこまで感じられませんが(サラリーマンの闘いを描いていますからそりゃそうだ)、でもドラマ・ツイストが、読者を没頭させる「危険」な作品であったと思います。アツい話が好きな人はきっと好きになる作品だと思います。おすすめ。

  • あっと言う間に読む事が出来た。
    さすが池井戸潤!という大どんでん返しが痛快。
    主人公の平太が同世代という事もあり、入り込んで読めた。
    サラリーマンである事と正義との葛藤の中で、もがき戦っていく姿に引き込まれた。

  •  建設業界を知る上で、とても勉強になった。
     業務の流れがどのように行われているのか、
    談合について、資金の流れ、すべてが学び。

全35件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1963年岐阜県生まれ。慶應義塾大学卒。98年『果つる底なき』で第44回江戸川乱歩賞を受賞し作家デビュー。2010年『鉄の骨』で第31回吉川英治文学新人賞を、11年『下町ロケット』で第145回直木賞を、’20年に第2回野間出版文化賞を受賞。主な作品に、「半沢直樹」シリーズ(『オレたちバブル入行組』『オレたち花のバブル組』『ロスジェネの逆襲』『銀翼のイカロス』『アルルカンと道化師』)、「下町ロケット」シリーズ(『下町ロケット』『ガウディ計画』『ゴースト』『ヤタガラス』)、『空飛ぶタイヤ』『七つの会議』『陸王』『アキラとあきら』『民王』『民王 シベリアの陰謀』『不祥事』『花咲舞が黙ってない』『ルーズヴェルト・ゲーム』『シャイロックの子供たち』『ノーサイド・ゲーム』『ハヤブサ消防団』などがある。

「2023年 『新装版 BT’63(下)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

池井戸潤の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×