ドゥームズデイ・ブック(下) [Kindle]

  • 早川書房
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感想・レビュー・書評

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  • 上巻から下巻の中盤まで緩やかに流れていた時間が、恐ろしい事実が明かされるとともに一気に加速する。タイムパラドックスは許容されない、つまり歴史は変えられないという言葉が重い。未知の疫病に対し、14世紀の人々は無力だった。科学の発達した21世紀ですら、人は病を前にして理性を失い、過ちを犯す。しかし、同時にそんな人間たちの姿に意味を見出し、時に救われ、歴史として紡ぐことは人間にしかできないことだろう。そうして振り返ってみると、誰も彼も自分のことしか考えていないかのような身勝手な人々の喜劇も、上巻のラストでキヴリンが記したローシュ神父に対する言葉に集約されているのだろうかと思う。ギルクリスト、ミセス・ギャドスン、鳴鐘者たち、レイディ・イメイン。傍から見れば馬鹿げた、あるいは利己的と見える行動をとっているようでも、本人は精一杯自分の目の前の事柄に対処しようと、ベストをつくしていたのだと。清々しい終わり方ではなかったが、それでも素晴らしいものを読んだという読後感がある。無情な死の描写と、終盤の見事な伏線回収も素晴らしく、数々の賞に輝いたことも納得の内容だと感じた。

  • 何度目かの再読だけど、やっぱり何回も泣いてしまった。以前はペストに襲われた14世紀の世界の恐ろしさばかり目が奪われたけど、今回はダーンワージたちの生きる21世紀で起きるパンデミックの不気味さに震撼とした。タイムトラベルしたキヴリンを心配するあまり、ダーンワージは未知の病が流行り始めてるのに自分も周囲の者も守ろうとしない。隔離されてるのに、外から人を呼ぼうとするくらいだ。ちょっと…って思いたくなるけど、今の新型コロナに脅かされてる私たちの状況を考えると、そんなもんなんだろうなって思う。今目の前にある心配事に気をとられて、本当に大事なことをおろそかにしてしまう。14世紀でキヴリンが生活を共にした人々が良い人もそうでない人も無残に死んでいく状況は、生きている間は一生懸命生きなければと教えてくれる気がした。

  • 誤ってペストが蔓延する年にタイムトラベルしてしまったオックスフォード大学史学科の学生キブリン。バタバタと病に倒れる村人たちを必死で看病し続ける。インフルエンザが流行している現代ではダンワージーが熱に倒れるも、どうにか同僚の甥っ子コリンとともにキブリンを救いに中世に向かう。

    バタバタとどうどう巡りばかりでなかなかストーリーが進まなかった上巻に対して、下巻は暗黒のペストの描写が続いてだいぶ重苦しく、ぐっとシリアスに。

    たしかに、長かった… けど、なんだかんだ読ませてしまうんだよなぁ。冗長なほどの描写に絵が浮かび、鮮やかな会話が聞こえてきだしたらもう罠にハマってる。

    続編もちかぢか読もう。

  • 2018/12/31読了。

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