社会主義の誤解を解く (光文社新書) [Kindle]

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  • 光文社
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感想・レビュー・書評

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  • 分かりやすく、良い本だと思った。
    日本の左派の問題点を的確に指摘してもいる。社会主義の系譜には、北欧の社会民主主義やナチズムも含まれるのに、日本の左派は共産主義にしか目を向けなかった。共産党はともかく、社会党までが北朝鮮とズブズブになった、東側についたのって、致命的なまでの左派の失敗だと思う。いや、北の工作員にやられたのだろうか?
    いずれにせよ、そろって東側についてしまったこと、まともな左派が消えたことは、日本の不幸だと思う。

  • 基本的にヨーロッパでの社会主義の成り立ちについてを述べた本。
    もう少しヨーロッパ以外の社会主義についても知りたかった。
    これで、社会主義は前為政者を倒すための建前に使われたということがわかった。
    ロシアがまさにそう。

  •  タイトルにある「誤解」が何を指しているのかははっきりしないが、なんとなく腑に落ちていなかった部分のいくつかが解消された。私も色々誤解していたのだと思われる。

     そのひとつが「社会主義」と「共産主義」の違いに関するもの。学術的な解説を読んでもいまいちピンとこなかった原因は、これらの言葉の「定義」と「実際の使われ方」にズレがあったためだとわかった。社会党(社会民主党、労働党)と共産党という名称は社会主義者同士の内部分裂によって使い分けられただけで、それぞれの主張の中身が定義上の社会主義と共産主義だったわけではないという。そもそも『共産党宣言 』を書いたマルクスは社会主義者に分類されるというのだから、混乱するのは当然だ。

     ソ連は社会主義革命によって帝政が倒されて建国されたと喧伝されてきたが、実際はまず帝政に対する庶民の不満が高まってそれが倒された後、空白を埋めるように社会主義者がうまく国を作ったものだということ。識字率が10%にも満たなかった当時のロシアで、社会主義などという難しい思想が理解されていたはずがないのだ。

     ヨーロッパは実際に数多くの革命や暴動が発生した中で自由主義に対する社会主義が確立されていったのに対し、日本では革命的な事態がほぼ発生しなかったため、日本の社会主義者は西洋の思想を表面的に取り入れただけに過ぎなかった。そして一般市民の持つ社会主義のイメージは今でもあまり深いものではない。社会主義、共産主義、労働運動、民主化、なども然り。結局、こういった思想は日本ではきちんと理解されてこなかったのだと思う。

     ただ、近年は日本でも著しい格差社会が問題になりつつある。資本家と労働者の貧富の差そのものは昔の方が大きかったかもしれないが、それが悪いことだという主張が受け入れられるようになったは最近のことだろう。そう考えると、日本で社会主義が理解されるのはようやく今からということなのかもしれない。

  • この本は複雑化した社会主義を起源から現在に至るまで、歴史的な史実に基づいて詳しく説明されています。
    私は社会主義とは、ソ連とか中国で過去に行われた政策?のような感じにしか思っていませんでした。しかしこの本を読むことにより社会主義とは何か、また社会主義の複雑な歴史をも理解することができました。ほかにも産業革命以降のヨーロッパの情勢を社会主義のみならず、自由主義、資本主義といった立場から詳しく知ることができます。
    社会主義って何だろう?そんな疑問を持たれた方に特にオススメの本です。

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著者プロフィール

1961年大阪市生まれ。京都大学大学院教育学研究科博士後期課程中退(教育社会学)。京都大学教育学部助手を経て現在帝塚山学院大学教授(社会学)。主な専攻分野は、社会学理論、現代社会論、民主主義研究。主な著書に『禁断の思考:社会学という非常識な世界』(八千代出版)、『民主主義という錯覚』(PHP研究所)、『社会主義の誤解を解く』『日本語の宿命』『日本とフランス 二つの民主主義』(以上、光文社新書)、『政治家・橋下徹に成果なし。』(牧野出版)、『ブラック・デモクラシー』(共著、晶文社)など。

「2017年 『「文明の衝突」はなぜ起きたのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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