日本のイメージ 韓国人の日本観 (中公新書) [Kindle]

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  • 中央公論新社
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  • 私には韓国の友達がたくさんいるのだが、彼らと話すと日本への意識・知識量に圧倒されることがよくある。日韓の比較・対比が潜在意識として少なからずあって、驚くとともに少し心配にもなってしまう。

    韓国はなぜここまで日本を意識するのか? それはある意味で植民地主義的な両国関係の認識に「依存」してしまっているとも言えるのではないか? と思っていたけど、それは「日本はなぜこうも西欧を意識するの?」と聞くのと同じくらい無意味なのだとわかった。

    むしろ韓国にとっての日本は、日本にとっての西欧以上の感情的プレセンスがある。一方には歴史的に脈々と受け継がれてきた文化的優越感(中国ー朝鮮ー日本といった儒教的序列観)や植民地時代の憎悪と屈辱があり、もう一方には戦後の日本に対する憧れと尊敬といった肯定的感情が、二極化し、アンビバレントに共存している。憎悪・屈辱は韓国のナショナリズム・自尊心や日本への差別意識・偏見を肥大化させており、憧れや尊敬は韓国人の自己否定・自嘲といった屈折した感情を生み出してしまう。

    反日主義に関する分析は、読み進めるのにかなりの精神力が要るけど、読み進めるうちに客観的に整理できるようになる。韓国の反日教育が思ってた以上に民族主義的で、戦時中/北朝鮮の教科書かよ!ってツッコみたくなってしまう。客観的に読めるようになると、この点は日本も同じだな、歴史的なことは日本ももっと当事者意識が必要だな、など自省できるようになる。そして、今後も解消するのは難しいであろう、対日コンプレックスの大きさに虚しくなってくる。

    本書で強調されているのが、日本のメディアでは紹介されない韓国の日本に対する尊敬や憧れといった肯定的な感情の存在だ。こうした感情があることは日本に住んでいては伝わりにくいため、紹介の意義があると思った。反日から始まり、新たな日本と出会い、発見、葛藤し.... こうしたプロセスを積んで、日本のイメージを再形成させていく韓国人は多いらしい。

    最後に、今後の日韓関係を考える上で重要と思われる2点を記しておく。まず、今日の日韓関係が過去志向的で不平等な関係性に縛られていることの問題点。私も、互いに未来志向的な関係性の再構築のためのダイアローグを志向しない限り、過去の問題が解決に向けて前進することはないし、両国の関係も悪化するだけだと思い、筆者に強く共感した。

    次に、学術界の問題について。進歩的知識人は基本ナショナリズムに批判的なのだが、韓国においては1980年代から自国のナショナリズムに対して無批判になりつつあると筆者は危機感を募らせている。そこで何が起こっているかというと、「日韓の架け橋」をになっているつもりの両国の知識人による活動が、逆に韓国の反日ナショナリズムを強化させているという皮肉的な状況だそうだ。

    本書は1998年に書かれた本なので、多少のアップデートが必要である。また、在日朝鮮人である筆者は比較的客観的ではあるが第三者にはなれないという点で、注意が必要かもしれない。また、色んな観点からの本を読んでみようと思う。

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著者プロフィール

鄭 大均(てい・たいきん):1948年岩手県生まれ。韓国系日本人。専攻は日韓関係論、在日外国人。立教大学、UCLA で学び、81年から95年まで韓国の啓明大学校外国学大学等で教鞭をとる。現在は東京都立大学名誉教授。著書に『増補版 韓国のイメージ』『日本のイメージ』『在日の耐えられない軽さ』(いずれも中公新書)、『在日・強制連行の神話』(文春新書)、『韓国のナショナリズム』(岩波現代文庫)、『韓国が「反日」をやめる日は来るのか』(新人物往来社)、『日韓併合期ベストエッセイ集』(編書、ちくま文庫)などがある。

「2023年 『隣国の発見』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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