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感想・レビュー・書評
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たーしのヤクザマンガ『ドンケツ』(ヤングキングコミックス)の、既刊1~17巻を一気読み。「LINE マンガ」で無料で読める1~3話を読んだら面白かったので、手を伸ばしてみたもの。
主人公「ロケマサ」の凶暴な風貌(上に貼った第1巻のカバー画のキャラ)がすごい。ヤクザマンガの歴史の中でも、これほど「カッコよさ」から遠いルックスをした主人公はほかにいないだろう。フツーのヤクザマンガなら“主人公の敵役”の顔である。
ところが、外見も中身も凶暴そのもののロケマサが、読んでいるうちにだんだんカッコよく見えてくるのだ。
ストーリーはわりと荒唐無稽。にもかかわらず、ヤクザ社会のディテールは非常にリアルだ。
いや、私にとってはよく知らない世界だから、「非常にリアル」かどうかの判定は厳密にはできないわけだが、少なくとも「リアルだ」と感じさせる描き方をしている。
ヤクザ専門ライターの鈴木智彦も、次のように評価している。
《俺は確信してる。たーしー作の『ドンケツ』は、古今東西すべてのヤクザ漫画の中で一番面白い。文句ない。》
《『ドンケツ』はカタギと警察の描き方もすごくうまい。舞台は北九州市で方言もすごくいい。これでダメならヤクザものは無理ってこと。司馬遼太郎じゃないけど、単純明快に面白ければそれでいいわけで、何重にもひねった哲学的解釈は不要。セリフがなー、ほんとにこういうこと言いそうなんだよなー。見事》
鈴木は、『SPA!』に寄稿した「ヤクザを描いた映画や漫画、本職の人はどの作品がお好き? 」という記事でも、次のように書いている。
《現在、どの事務所にいってもみかけるのが、『ドンケツ』(少年画報社)というヤクザ漫画だ。去年、全国のヤクザたちにアンケートをとった際も、ダントツの人気を誇っていた。元来、ヤクザだからといって、ヤクザ作品ばかりを鑑賞するというわけではない。にもかかわらずここまで現役から支持される作品も珍しい。》
強烈な暴力描写が頻出するのだが、その大半が素手で殴りあう「ステゴロ」である点に美学を感じるし、エロ描写は皆無である点も好ましい。つまり、わりと「硬派」なヤクザマンガなのだ。
あまり陰惨にならず、乾いた笑いが随所にある点もよい。