さよならの手口 (文春文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 葉村晶、さすがでした。
    もしも彼女がそばに暮らしていたら、こちらにも彼女の不幸のとばっちりが飛んできそうで、いささか敬遠したくなるようにも思いますが、しかし、探偵としての彼女の資質、そして、最終的に落ち着くところへすべてを落ち着かせる彼女の能力を考えると、そばにいてほしいのかもしれません。
    少し前ですが、レイモンドチャンドラー、ロンググッドバイを読みました。200ページくらいまで、これはまさに和製のロンググッドバイではないか、と思いながら読みました。
    ハードボイルドの傑作です。葉村晶の事件へのかかわり方、登場人物へのかかわり方がハードボイルド、そして若竹さんの語り口がなんともハードボイルド。
    そして、後半、加速度を増して解決へとなだれ込んでいくのは、なんとも言えない和のテイストのどろどろした話。解決に向かうアクションも悲壮ながら痛快な味わいを感じたのは、不幸な女が私の心に刻み込まれたからかもしれません。
    どんな不幸な話でも、どんな悲惨な話でも、最後に落ち着くところにきちんと落ち着いたところを見せてもらえると、読後は爽快感で満たされます。
    ちらりとあのハードボイルド作家のMK先生が登場するサービスまであるし、葉崎市近辺でのアルバイトの話まで。
    前菜から始まるきちんとしたフルコースを味わった上に、最後にはギムレットかマティーニを出してもらったような、これは傑作です。

  • 久々に読んでもやっぱり最後のオチが爽快感があった。ちゃんと嫌みな人物はだいたい破滅するからいいんだよなあ。13年ぶりの葉村晶の長編でこれだけ成功するのすごい。しかし彼女40も過ぎたのに怪我しすぎ病院に行きすぎだよな…
    葉村さんの女らしさとアラフォーらしさが輝いていて良かった。明らかに若い頃から一皮むけてると思う。

  • 順不同に読んでる葉村晶シリーズ5冊目。この女探偵のなにが好きかっていうと生活感ありすぎるからかも笑。捜査中に何を着ているとか何を食べたとか、しかも食後に退院後の薬をちゃんと飲む、経費をきちんと精算する、感情的といえばそうだけど人間味溢れる物言いと行動。そんな探偵好感持たないわけがない。でも捜査に関する運と勘は読んでて爽快。未読本が少なくなってきたのが不安。。。

  • 若竹七海、女探偵・葉村晶シリーズ第三弾。
    またもや順番を間違えたらしく、第二弾を読む前にコッ
    チを読んじゃったのはご愛嬌、ということで。

    こちらは長編。「依頼人」ではギリギリ20代だった主人
    公・葉村晶も介護保険の徴収対象に(^^;)。環境も完全に
    現代になっており、この年代の女性らしく近代機器(^^;)
    のスマホ操作に四苦八苦。探偵は一時休業しており、現
    在の立場はミステリ専門書店のアルバイト。シェアハウ
    ス住まいの独身、というのが初期設定。

    書店でのアルバイト中、文字通り「降ってて沸いたよう
    な不幸な事件」に巻き込まれ、入院したのが運の尽き(^^;)。
    同室の老婆から調査を依頼され、渋々ソレに首を突っ込
    んだところ、これがあまりに深い事件で・・・といった内容。

    とにかく感心したのは、ありとあらゆるミステリの手法
    が百科事典の如く登場してくること。そして長編らしく
    伏線も随所に散りばめられ、ラスト近くでほぼ一気にそ
    れが回収されている、という、ミステリファンにとって
    の「爽快」を感じさせてくれる物語。決して大ハッピー
    エンドではなく、扱われている事件もやや暗めなのだが、
    前述の通り読後感は決して悪く無いのだから凄い。

    短編で感じた「中途半端さ」は見事に消え、全てがスッ
    キリするミステリーの王道と言って良い内容。このシリ
    ーズ、僕にとっては“長編≧連作短編”なのかもしれな
    い。

    こうなったら順番関係無く、しばらく葉村晶にハマって
    みるつもり。取り敢えず、次はどれにしようかな?

  • 分かりやすく勧善懲悪。
    苦労体質な探偵さんは、作品ごとに巡り合わせが理不尽になっていくような。
    日本人が苦労体質な物語が好きだからなのだろうか?

  • 2023/5/29 AmazonよりKindle本ポイント還元キャンペーンにて876円(438pt)でDL購入。

  • ちょっと点数が甘くなってしまうけど、あまたいる探偵の中で、かなり好きな探偵なので
    不幸体質となっているが、自ら首を突っ込んでる
    満身創痍で戦い、なんだかんだで真実を暴く姿は、とにかくかっこいいとしか言いようがない
    今作はシリーズの中、内容量でも質でも最高傑作かなと思っている
    葉村の存在は貴重だと思う。ハードボイルドの非情さと、フロスト警部のようなユーモアも持ち併せている

  • 速読抜きで最後まで読めた。伏線回収が多すぎてラストがだらだらと長くなって疲れた。一気にラストで回収するのは勘弁してほしいかな。

  •  葉村女史は、探偵として正攻法とした手法をとり、それをもとにした推理も冴えたものがあります。丁寧な叙述は、信頼して読み進めることができました。「世界で最も不運な探偵」のウワサも納得するような後半の展開でした。久しぶりに、ワクワクしながら読了しました。

  • 所属していた探偵事務所が閉鎖され、馴染みの古本屋を手伝っていた葉村晶は、遺品整理屋から呼び出された家の敷地内で床下に隠された頭蓋骨と対面するはめになる。
    その際に負傷し、入院生活を余儀なくされた晶は、事情を聞きに来た刑事に事件解決に鍵となるアドバイスをする。
    その様子を聞いていた同じ病室の老婦人から人探しを依頼されることになるのだが……。

    2017年7月19日、電子書籍にて読了。
    シリーズ物と知らず、タイトルに惹かれて購入。
    女性探偵が主人公のハードボイルド系で、主人公の晶はなかなか魅力的でしたが、いくつもの事件が絡み合い、それぞれの関係者の悪意が凄まじく、読んでいてかなりキツかったです。お腹いっぱい、という感じです。

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著者プロフィール

東京都生まれ。立教大学文学部史学科卒。1991年、『ぼくのミステリな日常』でデビュー。2013年、「暗い越流」で第66回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。その他の著書に『心のなかの冷たい何か』『ヴィラ・マグノリアの殺人』『みんなのふこう 葉崎は今夜も眠れない』などがある。コージーミステリーの第一人者として、その作品は高く評価されている。上質な作品を創出する作家だけに、いままで作品は少ないが、受賞以降、もっと執筆を増やすと宣言。若竹作品の魅力にはまった読者の期待に応えられる実力派作家。今後ブレイクを期待出来るミステリ作家のひとり。

「2014年 『製造迷夢 〈新装版〉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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