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感想・レビュー・書評
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ロシアのウクライナへの軍事侵攻が始まり、未承認国家について考えるようになったので読み始めた。
そのため未承認国家について、①ロシア人が多い地域を軍事支援し無理矢理な国民投票を行い未承認国家としての独立→②未承認国家の要望によりロシアに編入、という偏ったイメージで読み始めた。
しかし、考えてみれば当たり前なのだが、未承認国家にはかなり多くのパターンがある。台湾も未承認国家だし、戦前戦中の大日本帝国による満州国も未承認国家だった。
豊かでないと独立した意味がないと国民が離れていくから、法的親国よりも豊かである未承認国家も多い、というのもなるほど、と思う。
とはいえ、本書は未承認国家の中でも、ロシアと欧州の間の国について内容が偏っており、今回の戦争で未承認国家について興味を持った読者層にも興味がそそられる内容となっている。
今回の戦争で、現在かなり話題に上がっている未承認国家沿ドニエストル・モルドヴァ共和国について、著者が実際に訪問し、インタビューしたときの様子などが記載されており、かなり興味深い。単純に親ロ派の国ではない成り立ちもわかりやすく記載されている。
自分は「民族自決」により植民地とされた国々が立ち上がって自分の国を持ったことは良かったことのように受け止めていたが、国家より民族の数の方が圧倒的に多いことを考えると争いの種にしかならない面もあり、そう単純なものではないのだな、と考えさせられた。
国際社会は武力による国境の変更を認めない原則を保持しているが、コソヴォという例外を欧米がつくってしまった。
この本は2014年発行なので、当然2022年現在のロシア情勢は書かれていないのだが、この本に書かれた歴史から今につながるのがよくわかる。
欧米がつくったコソヴォという例外をロシアが悪用し、今があることがよくわかる。
クリミア編入について本書に『このプーチンのクリミア編入の方法だが、アドルフ・ヒトラーによる1938年のズエーテン地方併合との類似性が多方面で指摘されている。(略)現在のチェコ、当時のチェコスロヴァキアのズエーテンは、ドイツ、ポーランドの国境沿いに位置し、12~13世紀に植民したドイツ系住民など約300万人のドイツ人がいたとされ、ヒトラーは同地域のドイツへの割譲を強く要求していた。ヒトラーは1938年のミュンヘン会談において「これが最後の領土要求」だとし、イギリス、フランスはその言葉を鵜吞みにし、チェコスロヴァキアの意向をまったく無視してヒトラーの要求を容認した。その翌日、ヒトラーはズエーテンに進駐しただけではなく、さらに進行を進めてチェコスロヴァキアを侵略し(略)』という記述がある。今のクリミア編入からのウクライナ侵攻と全く同じ流れだ。
著者は上記の件について『ロシアがドイツのようにウクライナ全土を侵略したり、世界大戦に突入することは考えられない』『プーチンをヒトラーに擬えることには賛同できない。クリミア編入の方法が限定的に似ているだけで二人の指導者を同一視するのは安易であるだけでなく、ソ連がヒトラーと戦い、すなわち独ソ戦で受けた甚大な犠牲を考えれば、その比喩はロシア人にとって最大の侮辱』と述べている。
つまり著者の思いは裏切られた形になる。今のウクライナ戦争について、どう見て、どう思うだろうか。詳細をみるコメント0件をすべて表示