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感想・レビュー・書評
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著者の増井元さんは、岩波書店で「広辞苑」「岩波国語辞典」など辞書の仕事30年の元編集者。その編集者が語る辞書にまつわるエピソード集と書けばそれまでだが、それが滅法面白い。
辞書とは日本語をリードするもの、したがい、辞書編集者は「ことば咎め人」のようなイメージがあったが、著者は両方とも否定している。
「忘れてはならない基本的な姿勢は 、辞典 (事典 )が社会のことばをリ ードするのではない 、辞典は世間のことばの後からついてゆくのだということです」
「辞典との関わりが長かったせいで 、私のことを 「ことば咎め人 」かと思う人がいますが 、そんなことはありません 。 「映画とか見る 」も平気ですし 、 「私って ○ ○の人じゃないですか 」 「何気に 」 「ありえない 」など 、若者ことばを中心とする問題な日本語に出会っても 、そういう用法もずいぶん広まったなあ 、と至極鷹揚です 。ただ 、 「世間ずれ 」が 「世間一般の意識からずれている 」意で使われるなどということはつい最近まで知りませんでしたし 、注文した料理が運ばれて来て 「大丈夫だったでしょうか 」などと聞かれると 、ちょっと不安になる程度の動揺はあります 」
引用が長くなったが、「鷹揚」であると書いた上で、増井さんが「問題な」ということばをあえて使っている点に何となく辞書編集者のユーモラスなイヤミを感じて笑ってしまった。
「載せることばをどう選ぶのか」「辞書編集者になるには」「用例の作成の難しさ」など、面白いエピソードが満杯。「くんだり」の用例で「青森くんだり」と書いて青森県の読者から怒られてしまったという話も面白い。
どのエピソードも数分で読めるのでスキマ時間の読者に最適。ことばマニアの人にはオススメの★5つ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
3.5
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大変面白かった。こうした一つの仕事を極めた方のリフレクションは心惹かれます。