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感想・レビュー・書評
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科学分野に苦手意識のある私ですが、科学者たちがどのように失敗して、どのようにそれを生かしたのかに興味を持ちました。
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天才科学者も間違いは起こす。その多くの間違いの中から選ばれたのがダーウィン、ケルヴィン卿、ポーリング、フレッド・ホイルそして「最大の過ち」が有名なアインシュタインだ。ダーウィンとアインシュタイン以外は普通の人は知らないような気もする。
ダーウィンの過ちとは自然選択が働くための条件についてだ。種の起源の発表は1859年、メンデルのエンドウマメの実験は1853ー1868で発表は1865-66のマイナーな学会でだった。メンデルは種の起源を読んでいたがダーウィンがメンデルの実験結果を知っていたかは微妙だ。メンデルの実験結果が書かれた本をダーウィンは持っていたが、そのページは閉じられたままだった。
ダーウィンの考えた遺伝は融合遺伝というもので突然変異は次世代に受け継がれるがそこに遺伝子の概念はなく、獲得した形質がそのまま引き継がれる。ススだらけのロンドンでは黒い蛾が生き残っていたのだが、融合遺伝の場合100匹の白い蛾の集団の中で1匹の黒い蛾が生まれて子孫ができたとしても2代目は灰色になる。1匹の黒い蛾は100匹の中で薄まっていき元と比べて少しだけ黒い集団になる。遺伝子と優性遺伝の考えを取り入れないと黒い蛾の集団は生まれない。ダーウィンは融合遺伝のもとでは自然選択がうまく働かないことを充分に考慮しなかった。
ケルヴィン卿は絶対温度のkに名を残し、熱力学第二法則を生んだ物理学者だが地球の年齢を計算した地質学者でも有る。ケルヴィンは岩石の熱伝導率などを調べ、溶融状態の原始地球が現在の温度に冷えて固まるまでの時間から地球の年齢を計算した。ケルヴィンは岩石が凝固した時点であらゆる場所が同じ温度だったと仮定したのだった。その結果は約1億歳だ。一方で核融合が知られてない当時太陽の熱源を重力として計算するとやはり1億歳が出てくる。
地質学者達は地球内部の構造が一定でなかった場合に何倍も伸びる可能性を指摘したがケルヴィンは取り合わなかった。この話でいまいちよくわからないのが均質で熱伝導率が一定の地球が1億歳だとした場合にマントル対流がありより熱伝導率が高い実際の地球の方がなぜ何十倍も年寄りになるかだった。
ポーリングは二重らせんの発見にあと一歩のところにいながら有名なロザリンド・フランクリンの写真を機会がありながら見なかったためにワトソン・クリックに先を越された。
そしてアインシュタインの最大の過ちとは一般相対性理論に美しくない宇宙項を付け加えたことというのがよく知られる話なのだがこの本の結論は間逆で後に宇宙項をなくしたことが最大の失敗だったと結論づけている。最近の研究から宇宙の膨張は加速していることがわかってきた。重力が働けば普通は膨張は減速するはずだ。加速するということは斥力が働いているということであり、これがどこから来るかというと真空にゆらぎがありそこにダークエネルギーという莫大なエネルギーが隠れている。宇宙項はこのダークエネルギーを表すのにちょうどいいのだ。宇宙学者や物理学者がどういってもこのあたりの理解はいつまでたっても追いつかない。
この本から読み取れるのは歳をとって自説に固執すると最先端にはついていけなくなるということだが、それを失敗と呼ぶのか?