駅をデザインする (ちくま新書) [Kindle]

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  • 筑摩書房
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感想・レビュー・書評

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  • パブリックデザインについての本であり、
    「駅」という対象においてパブリックデザインはどうあるべきかという本であり、
    現状の日本の駅が直面している惨状とその背景を告発し批判する本でもある。
    つぎはぎで発展を続けた結果複雑怪奇になってしまっている様はスパゲティコードが生まれてくる過程を彷彿とさせる。

    読み進めていると、駅には駅のパタンランゲージがあるのではないかという気がしてくる。そこに関わる人々がいきいきとできるように腐心する著者のアプローチは、まさにアレグザンダーのそれである。
    ここで描かれた理想像に共感しつつ、それを実現できない現実には幻滅させられる。

  • 新宿駅、東横線・副都心線の乗り入れが実現した渋谷駅をこっぴどくこき下ろすくだりは、一度利用したことがある人間なら拍手を送りたくなる。

    一方、建築家との協働で生まれたみなとみらい線の各駅について、地下にありながら人間のストレスをいかに軽減させる工夫が施されているかという解説は読み応えがった。公共性の考え方、パブリックがもはや日本人だけに限らない昨今においてデザインが生み出す利便性についてもっと優先度をあげてほしいと思う。
    特にパブリックサインなど人間工学・心理学に基づく工夫というのは、それ以前の悪い状態と比較しないと実感が得られにくいところもある。それは空気のようなもので、普段の生活に溶け込んでいるために気づかない貢献がある。数値化も難しいところなので、国際規格や利用者の声が大事になるだろう。

  • 駅のサイン・構造における問題点が分かる。海外と日本との比較あり。日本の駅の不案内はデザイン不足。
    日本にはユーザ視点がなさすぎる。

  •  駅構内の案内が不親切と感じることは多々あった。案内を増やせば解決するものだと思っていた。

     人間が自分の体験からわかったと理解するのは、①状況が明らかなのでわかった(見える・聞こえる)、②意味が了解できるのでわかった(形・言葉)、③ことの筋道がはっきりしているのでわかった(順序理解)という場合がある。

     分岐の多い通路や繰り返す昇降運動、見通せない空間などが、そうした空間理解を妨げる。また、日本の鉄道システムには民間会社が多く、自社部分のみを計画しがちで、統一性に欠ける。

     営団地下鉄のサインシステムを考案した著者。パブリックスペースでのデザインの重要性を認識する本だった。またデザインに関する本を読んでみたいと思う。

     駅構造を田端駅のように作るとわかりやすいらしい。行くときがあれば、思い出そうと思う。それにしても新宿駅の南口と新南口とか、中央西口と西口とか。初めての人には訳分からんよな。地下鉄の乗り換えの嫌な感じは、方向感覚や距離が見通せないからなのね。色々考えさせられました。

  • 公共空間におけるサインシステムと情報伝達のありかたについて書かれた本。
    面白かったのは日本の駅の課題について書かれた章で、これまで漠然と不親切な案内だと感じていたものがしっかりと言語化され、大変腑に落ちる内容だった。
    また写真や図表がとても豊富ですべてカラーなのも良いところ。

    たとえば、韓国語や中国語の案内が併記されているのは別にユニバーサル化には寄与しないし読みづらくなるだけでは? と感じていたところ、本書では
    「4ヶ国語併記にするにあたり案内サインのサイズを大きくした例は日本には存在しない。単にサインの性能が落ちただけである」
    「出口、切符売り場、などの一般名詞は母国語に翻訳されるとわかりやすくはあるが、簡単な単語ばかりなので英語とピクトグラムがあれば十分わかるし、わからなくてもすぐ慣れて理解できる。たとえばフランス地下鉄は出口をSORTIEとしか表記しないが、迷うことはない」
    「固有名詞は翻訳ができないので、中韓表記をもってしても読み方を伝えるだけにとどまる。しかし、結局日本人の発音に近い読みをしようとするならローマ字を参照するしかなく、ハングルや繁体字からは正しい読みに至れない。たとえば中国人は東京をドンジンと読んでいる」
    とかなり説得力のある論を展開する。

    日本の駅全般に横たわる問題として、駅舎・駅構造物は土木部門がすべて決めてしまい、そこには前例に倣い最小コストで作る以上の意思がない。デザイン段階では表面を化粧することしかできず、複雑な乗り場構造、見通しの悪い階段などに手を付けることができない、ということを繰り返し主張する。案内サインについては自社路線や自社関連会社のホテルなどを優先し、他社路線にまたがった案内などがない。日本全体をまたぐ統一的な路線コードを整備するべき、とも。

    ただ、この人が解決策として掲げ、また実際に手掛けた駅デザインには大きな予算と土地の両方が必要(コンコースは高い天井の大空間とし見通しを確保することで迷わなくする、地下にはトップライトを取り入れる、島式ホームへの階段は周囲を吹き抜け状にすることで上下の見通しを確保する、等)なので、これから人口減少が加速し都市を縮退せざるを得ない国で、どの程度実現できるのかは怪しい。

  • 駅サインひとつとっても、利用者のことをどれだけ考えてるか、考えてないか、がなんとなくわかるようになった気がする。

    名古屋駅のセンスの無さは、以前訪れた時に感じたことがあり、まさに的を得ていて、読んでいてある意味痛快だった。

    ワシントンの地下鉄駅、見通しよくて確かに使いやすかったことを思い出した。

  • 思った以上に色々考えて作られているのだなあ…。ありがたい。駅の工事を見ても「大変なんだな…」と思うようになった。

  • 個人的には国内の主要都市の駅はそれなりに利用した経験がある方だと思うので、「確かに」と思う点が多かった。海外の駅もそこまでベタ褒めできるところばかりではない気はするが、日本の駅にも色々と問題があり、最近は改善傾向にあるということが分かった。何気なく使っている駅もこれからは少し違った視点で見ることができそうだ。

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