すばらしい新世界 (光文社古典新訳文庫) [Kindle]

  • 光文社
3.91
  • (16)
  • (12)
  • (18)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 316
感想 : 18
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (339ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 所謂ディストピア小説といわれる古典を頑張って読破。

    【あらすじ】
    科学が発達しユートピアとなった世界の話。
    そこでは人間を人工的に階級毎(α、β、γ、ε)に生み出して生活する。遺伝子操作や教育により階級毎に頭の良さ、体格に差が生じる。階級毎に適した仕事を与えられる。教育の中で洗脳も行い、各自が自分の仕事や階級に満足するようになっている。困ったことや辛いことがあったときは合法且つデメリットなしのドラッグで気分を紛らわす。また、結婚や貞操観念もなく、各人がフリーセックスを楽しむ。そんな世界に連れてこられた野蛮人(地方の限定された地域に住む原住民)がその世界に疑問を抱くという話。

    【よかったとこ】
    終盤で野蛮人が西ヨーロッパで一番偉い人に「ユートピアは間違っている、こんなのおかしい。人間らしくない。」と訴える場面で偉い人にめちゃめちゃロジカルに論破される。人間の幸福を追求した先にあるのはこの世界だという著者の熱いメッセージが垣間見れた。自分自身も野蛮人と一緒に論破されてユートピアがありな気がしてきた。幸福や世の中のあり方について考えさせられる面白い物語だった。

    さすが、時代の流れを耐え抜いた古典。

  • そんなにディストピア感は無かったような…
    自分より幸せそうに思えた

  • 1984年と比較すると、暗闇の中迫りくる恐怖というよりかは、あっけらかんとした明るい世界の中に、ドラッグを使用したかのような混沌とした波が押し寄せるような印象を抱いた。同じディストピア世界を描いたものでも、描き方や設定によってかなり印象が変わるのだなと思った。
    出生前から徹底的に階級社会を叩き込まれた人類。普通に考えれば恐ろしい光景であるが、誰もが自分の身分に満足し(させられ)、不満なく人生を送っている。それの何が悪いのだろうか?と少しでも考えてしまった自分が怖い。

  • 「すばらしい新世界」読んだ。スルスル読めたし夢中になって止まらなかった。
    凄い。クライマックスの統制管と野蛮人の問答が物凄い。
    そしてその後に続く「著者による新版への前書き」がさらに凄い。書かれたのが半世紀前くらい?なのに予言が現実に近づいている。ゾクリとする。
    私の頭じゃ反論の余地がない。完璧に作られた「すばらしい新世界」
    絶望的な現代ではこの世界を夢見ても何ら不思議じゃない。物凄い説得力だ。
    書き終えて15年経って新版を出す際に書き直すならば、と書かれている部分も興味深い。最後の野蛮人の選択肢を増やすという点。
    統制管はおそらく著者の投影(行いは別として考え方とか)で野蛮人は象徴なのかなと考えたんだが、野蛮人はそうでなければヤバすぎるでしょう。普通の会話すらシェイクスピアからの引用で話すなんてウザキモすぎる。新世界では遺物とされている過去や芸術や人間個人の能力を象徴しているんかな

  • たとえどんなに安定していて、平和で、誰もが幸せで、そしてその世界に誰も不満を持っていなくて、疑うことすらない(というか、できない)……、という世界だったとしても、さすがにこの世界は嫌だよ。……と思うのは、わたしがこの世界にいないからでしかない。結局、「外側から見ているからこそいえること」っていうのは、フィクションに限らず、いくらでもある。そんなことを思った。ところでわたしにもソーマください。

  • ディストピア小説だけれど、登場人物のジョン、ヘルムホルツ、バーナード以外の民にとってはユートピアな世界として描かれていた。
    このユートピア世界を形成するために必要不可欠ないくつかの要素が面白かった。
    例えば「孵化・条件づけセンター」「睡眠教育」「ソーマの休日」「αβγδεで分けられる階級制度」など。
    またSFだと思って読んでいても、フロイトやパブロフを引用した心理学的内容や、ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』に描かれている有名な「大審問官」の場面を下書きにしたというモンドとジョンの間の白熱した議論の内容によって、このユートピア世界は本当に実現可能なのかもしれないと思ってしまう。

    個人的にジョンがしばしばシェイクスピア作品の引用をしてくるのが笑ってしまった。シェイクスピア作品はジョンにとってのバイブルになっている。

  • 人としての幸福、管理社会全体としての幸福とは何かというお話。自分は皆と同じである(中の外くらいである)コトに幸せを感じるので、この未来でも幸せに生きていける気がする…

  • 1932年に書かれたとは思えない。訳が新しいからか。
    60~70年代の海外ドラマの色合いが思いうかぶ。
    奥様は魔女とかOSS157とか。
    ディストピアなの?と思って読み進んだけどやっぱりディストピアだった。

    ハクスリーの「パスカル」を読みたい。が翻訳したって。ストラヴィンスキーと友達だったって?

  • 古典ということで読めてよかった。
    元々は『幸福な監視国家中国』での引用から。過去に書かれたSFのうち、系譜が多く、そして実際に実現しようとしているのは、『1984』ではなく『素晴らしい新世界』の方向である、と指摘していた。

    条件付けについてはかなり人為的・介入的であり、この点は疑問が強い。自由主義を否定するにしても、このような未来は来ないと思う。そもそもとして「安定性」を追及することは共同体の死を意味するため、この2点(人為的介入による社会階層の形成と、安定性という社会目的)において、このような未来は来ないだろう。

    このうち前者、社会階層の形成の問題は、基底には、労働を誰かしらが担わなければならない、という問題があったのだと思う。

    本書は巻末に掲載された「前書き」がおもしろかった。未来予測として非常に普遍的な内容の思える。
    幸福の実現のためのアプローチとして、4つの条件を挙げている。

    このうち第4条件が労働に関するところで、本書はこれを社会階層の介入的形成により実現したが、実際には、機械が置き換えていくかもしれない。
    そして目的を「安定性」ではなく「多様性と変化」に置き換えれば、現実的な未来予測になる気がした。このあたりはよく吟味したい。

  • 思考を画一化され過去を忘れた未来で、人々はみな幸福に暮らす。
    この世界では嫌なことはない。人々は一人ではなくみんなものである。そしていくつかの層に分けられた人々はそれぞれの役割を与えられ、それを全うし生きていく。(その中でも自意識を拡張させようとする人たちは出てくるのだが)
    ユートピアに連れてこられた野蛮人ジョンは思考せずして幸福となるユートピアを嫌悪し、哲学し、不幸であることを選ぶ。
    そしての苦痛こそ哲学こそが彼を生かし、現代を生きる私たちを生かしているのか自由であれるのかを痛感せざるを得ない。

    野蛮人ジョンが自分の感じることをシェイクスピアから引用し言葉として活用できる様は、いかにシェイクスピアが人間をうまく描いてきたのかと感動すらあった。これを機にシェイクスピアを読むべきなきもした。

    なんと言っても第3章の後半部の視点が目まぐるしく入れ替わりセリフが展開される文章がかなり迫力がある。まさしくハイライト。


    どこまでいってもこんな世界はありえない!この人間のいる世界は喜劇でしかない!そんな批評性を持たせた読みやすいディストピア小説でした。

全18件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1894年−1963年。イギリスの著作家。1937年、眼の治療のためアメリカ合衆国に移住。ベイツメソッドとアレクサンダー・テクニークが視力回復に効を成した。小説・エッセイ・詩・旅行記など多数発表したが、小説『すばらしい新世界』『島』によってその名を広く知られている。また、神秘主義の研究も深め『知覚の扉』は高評価を得た。

「2023年 『ものの見方 リラックスからはじめる視力改善』 で使われていた紹介文から引用しています。」

オルダス・ハクスリーの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×