日経サイエンス 2015年 09 月号 [雑誌]

  • 日本経済新聞出版社
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  • / ISBN・EAN: 4910071150954

感想・レビュー・書評

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  • 特集[宇宙の光を読み解く]
    1 銀河系外背景光で探る宇宙史 
      A.ドミンゲス/J.R.ブリマック/T.E.ベル
    2 ガンマ線で見る極限宇宙
      中島林彦/手嶋政廣

  • ムーアの法則終焉待ったなし。アルツハイマー病を発症する家族集団の新薬開発への協力。

  • 今号は特別付録として「親と子の科学の冒険」という小冊子が付いてきます。
    夏休みもお盆を過ぎるとあっという間ですね。まだ自由研究が済んでいないお子さんに、観察や飼育のヒントが揃ってますよ。
    動物園に行って食べ方や歩き方を観察してみるのはどうかな?
    川遊び・山遊びのときに、捕まえた生き物を飼育してみようか?
    身近にいる生き物で実験も出来るよ。
    大きくて立派なテナガエビは、意外に身近な川にもいるみたいです。夜行性だから昼間は岩陰なんかに隠れているみたい。ごっそり捕まえようと思ったら、懐中電灯で夜間に探すといいらしいですよ。
    それからカタツムリ。もしも交尾に成功すれば、カタツムリの赤ちゃんが見られるらしい。生まれたときから殻があるらしいです。排泄物は与えた餌と同じ色になるそうで、ニンジンならオレンジ、キャベツなら緑、両方を交互に与えると縞模様になるんだって。ちょっとおもしろいですねぇ。
    そうそう、生き物は飼い始めたら最後まできちんと面倒を見てあげてね。
    ブックガイドは親子で読めそうなものから大人向けのものまで盛りだくさん。全国の科学に関連する展示がある博物館のガイドも充実。
    購読している公営図書館も多いので、興味があったら、付録冊子だけでもめくってみてください。

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    本誌の方の特集は「宇宙の光」。
    銀河系の外の背景となる光から、宇宙史を探ろうという試みがされている。
    夜空はなぜ暗いのか。宇宙には多数の銀河が存在し、それぞれに多数の星があり、光を放出している。ならばなぜ、宇宙は光でいっぱいにならないのだろうか。
    学者たちは何世紀も前から、その謎について考えていた。その答えの1つは、我々が容易に見られる光以外に、銀河間には光が存在するというものだ。「銀河系外背景光」と呼ばれるその光は、広大かつ膨張しつつある宇宙の中で弱まり、薄まっている。理論的には知られていたが、定量的な観測に成功したのはつい最近のことだ。
    この光の中には、宇宙の歴史を通じて生じた光が含まれる。中にはビッグバンの頃に生まれた光もあるはずだ。こうした光を分析することで、宇宙の歴史がどのような道筋を辿ったか、解き明かすための研究が行われている。

    公衆衛生の話題から「デング熱ストッパー」。
    蚊のシーズン。去年、デング熱感染で公園を閉鎖する騒ぎになったのは記憶に新しいところ。デング熱ウイルスを仲介するのはネッタイシマカだが、蚊自体を根絶するのは困難であるため、「蚊がウイルスを媒介することができなくする」戦略が検討されている。ボルバキアという自然界によく見られる細菌を使って、ウイルスを媒介しない蚊を作り、自然界に放ってウイルスを媒介できない蚊を増やそうというものだ。機構は不明だが、ボルバキアは蚊の体内でデング熱ウイルスの増殖を防ぐ能力がある。また、ボルバキア感染した雄の蚊と感染していない雌の間に生まれた卵は孵化に至らないことも知られている。
    ちょっとトリッキーなのは、自然状態では蚊がボルバキアに感染しないこと。蚊に何らかのマイナスがあってボルバキアに感染しないのだとしたら、長い目で見て、蚊が細菌を排除してしまうかもしれない。ボルバキアがデング熱ウイルスを抑える機構がよくわかっていないのも不安材料だ。遺伝子改変ではないものの、「怪しげな処置を施した」蚊を野に放つことに反対する人もいるだろう。
    これまでの観察結果では、雌が感染している場合、垂直感染が持続することがわかっている。つまり、最初にある程度の蚊を放てば、理想的にはその地域のすべての蚊がボルバキア感染蚊となり、デング熱を媒介することが不可能になる。初期費用も安く済むことになる。
    さて、この試みが成功するかどうかは、慎重に小規模な実験を行い、徐々に規模を大きくしていく必要があるのではないかと思われる。

    もう1つ、医療の話題から「アルツハイマー病予防への挑戦」。
    アルツハイマー病は患者自身のみならず、介護者にも大きな負担を強いる。患者数が増えていくに伴い、治療薬・予防薬の登場が望まれるが、非常に有望なものはまだない。
    コロンビアには、まれな遺伝性のアルツハイマー病を発症する家族集団が複数ある。アルツハイマー病全体の中で、家族性の閉める割合は1%程度という。ある遺伝子に変異があると、ほぼ確実に若年性アルツハイマーを発症する。一族に何人も患者を抱え、将来の夢をあきらめて介護生活に入る若者もいるという。自らも、発症の恐怖に怯えながら。非常に痛ましい話である。
    この家族集団に、予防薬の治験を行う試みが始まっている。一般的なアルツハイマー病の場合、どの人が発症するかわからない時点で、予防薬を投与することは不可能だ。何らかの症状が出てから、症状の緩和や、進行を遅らせる目的で、薬を投与することになる。これに対して、この集団では、アルツハイマー病を発症することがわかっているため、予防薬候補を投与して経過を追うことが可能になる。患者予備軍である彼らは、概して試験に前向きな姿勢を示しているようだ。臨床試験ではどうしても評価を客観的なものにするため、プラセボ(偽薬)の投与が必要となるが、自分がプラセボに当たったとしても、将来、子供たちのためになるのであれば、と協力的な人が多いという。
    その切なる思いが実ることを願いたい。

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