3000億円の事業を生み出す「ビジネスプロデュース」戦略 なぜ、御社の新規事業は大きくならないのか? [Kindle]
- PHP研究所 (2015年5月13日発売)
- Amazon.co.jp ・電子書籍 (287ページ)
感想・レビュー・書評
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DIが手がける『ビジネスプロデュース』を解説した本。DIには尊敬する先輩が勤めており、話が面白かったので即購読。ビジネスプロデュースは『社会的課題解決のため、業界を超えた構想を描き、産官学の仲間作りをして、数百〜数千億円単位の事業を創造する方法論』という定義。社会的課題という高い視座から規制も変えられるという事を何度も強調しているが、確かに日本では希薄な意識かも。尚、リクルートにはMTLという新規事業をインキュベートする社内組織があるが、本書が課題図書に指定されている。その理由が非常に良く分かった。
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妄想してから構想する。自社だけでは出来ないから他社を巻き込む。やるの難しいでしょって思った。
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本書では、3000億もの規模になるようなビッグビジネスの作り方について書かれている。
よく言われるように、日本の経済は低迷しており、特に新しいビジネスが育たなくなっている。
なぜ、新しいビジネスが育たないのだろうか。
数百億、数千億といったビジネスを創りだすために必要なことは何だろうか。
一つ目のポイントは、社会的課題を起点に考えること。
事業規模と需要は比例する。需要が大きいほど、ビジネスの規模も大きくなる。
ならば、社会的課題を解決できれば、この上ない大きなビジネスになる。
少子化、高齢化、過疎化、医療問題等、日本は社会的課題の最先進国と言われるほど多くの課題に見舞われている。
だが、これらはヒントでもある。
「自分の業界とは関係ない」と考えず、それらをニーズとして捉えれば、ビッグビジネスに繋げることが出来る。
二つ目は、業界を跨いで連携すること。
現代では、既存の業界は既に成熟しきっていると言える。
その中でビジネスをやる限り、大きな成功は望めない。
ならば新しいビジネスを生み出すためには、業界を飛び出す必要がある。
業界の枠組みを超えた発想ができれば、誰も手を付けなかったような全く新しいビジネスが見えてくる。
つまり、ビジネスチャンスは、業界と業界の間にあると言える。
自分の業界から離れ、もっと高い視座で全体を見て、他の業界と連携していくことが重要になる。
三つ目は、既存のルールを見直すこと。
日本企業は、今あるルールを守った上でビジネスを行おうとする。
だが欧米では、企業主導でロビイングを行い、必要に応じてルールそのものを変えていく。
そしてルールを変えることが出来れば、そこには全く新しい大きなチャンスが生まれる。
法律を変えることなんて出来やしない、と思っている人は多いが、実際は全くそんなことはない。
その必要性が納得できるものであれば、政府と連携して、法律を変えることは出来る。
むしろ政府の役割はあくまで「ツール」であり、政策は企業(民間)から提案していくべきである。
だが政府を納得させるためには、自分だけが得をする「我田引水」ではいけない。
公共の利益になるような、大義名分が欠かせない。
つまり、ここでも社会的課題を起点にしたことが生きてくるのである。
「この社会的課題を一緒に解決しましょう」と言えば、企業も政府も、協力的になってくれるだろう。
またそれ以外にも、実行段階のコツとして、KPIをトップと共有しておくことがあげられている。
新規事業は、どうしても開始直後は成果が出ない。
3年や5年といった、長いスパンで見なければならない。
だがそういった時に、株主や、ひいては社内から批判される恐れがある。
そして急に「黒字化しろ」といった方向転換を迫られ、ビジネスが大きく育たずに終わってしまうのである。
そこで、事業の構想段階でKPIを設定し、トップと握っておくことが重要になる。
つまり売上は上がらずとも、計画が順調に進んでいることの証明になるわけである。
逆に言えばプロデューサーは、何が何でもKPIは達成しなければならないとも言える。
毎回のKPIを達成するという小さな成功体験が、大きな成功に繋がっていく。
他にも本書には、プロデューサーの育て方や、人脈の気づき方など、ビジネス創造に関する様々なことが書かれている。
プロデューサーという職種に興味があり手にとってみたが、スケールが大きく、楽しめた。
自分はどちらかというと実行する側であり、直接関係する内容は少なかったが、それでも色々とためになった。
今後の視野が拡がりそうで、読んで良かったと思う。