百年法 上下合本版 (角川文庫) [Kindle]

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  • KADOKAWA
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感想・レビュー・書評

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  •  不老を手に入れた世界では人口増加を阻止するために100年で命を絶たなければならない法律「百年法」が制定されようとしている世界が舞台です。

      不老を手に入れた未来の日本が舞台ということで、正直設定についていけるか不安でした。しかし、読んでみるとものすごくスーッと内容が入ってきました。本当に現実の日本と不老を手にれているかいないかその違い程度しかありませんでした。

     本書は様々な登場人物に交互にフォーカスを当てて進行していきます。私がその様々な物語の中で特に好きなのは、百年法施行にむけて奮闘する官僚と百年法をよく思っていない大臣との水面下の闘いです。日本と日本国民のために激務を承知で日々奮闘する官僚が、百年法の担当になると、国民を殺めるために日々奮闘することになる。しかし、日本の将来のためにそれでも努力をする。その姿はまるでプロフェッショナルを見ているかのようなワクワク感とドキドキ感がありました。

     また、後半になると謎の巨大な組織が「永遠王国」というものを作り、国家から隠れて独自の国家を築きあげるという展開にもなりました。重要そうな人物はたくさん出てきましたが、その人物が何なのか、影のリーダーの正体は何なのか、日本は今後どうなってしまうのか。こういった様々な謎と期待を残して上巻は完結します。

     本書を読んでみてここまでの作品はなかなかないと思いました。物語としての面白さ。お仕事小説としての気分が高鳴る気持ち。管理された日本と裏で蠢く永遠王国のせめぎあい。どこをとっても最高の1冊でした。早く下巻も読んでみたいと思います。

  • 最後の一行まで面白かったです。
    不老不死を手に入れた日本。架空の世界の話なのに、恐ろしく現実味がある。単なる「小説」と割り切れない気持ち。
    死ぬからこそ、生きることに価値がある。でも死ぬのは怖い。もし自分なら?を考えさせられました。

  • 10年前に書かれたものなのに、今のコロナ禍における日本を見て書いたのかと思えて驚いた。
    終盤で描かれた牛島大統領と遊佐首相の関係に胸が熱くなる。同じ未来を描いていたのに、いつしか、はたまた最初からか、2人はまったく反対方向を見ていた。
    けれどそれは、ずっと背中を任せられる唯一の信頼たる人物だったからなのだと、絶体絶命な状況になって気づくのだ。
    日本の行く末を思い、託し、繋げていく。
    そうやって繋げてきた命を、人は歴史という。
    この本を、今の政治家たちに読んでみてもらいたいものだ。

    「我々は理解していなかったのだ。永遠の生と、その真逆であるはずの死の間には、紙一重の差しかないことを。自分でそうと気づかぬうちに、その境界を踏み越えてしまったのだよ。生と死の境界を失った者にとって、永遠に生きることは、死ぬことと完全にイコールとなる」

  • 不老不死が実現した世界にて、、、、百年法「不老不死を受けてから百年後には死ななければならない」法律を通すため翻弄する主人公の物語。

    はたして不老不死は良いことなのだろうか?

    SF好きの私にはたまらない作品です。
    (読プロ現役学生:ポール)

  • 上下巻読了。

    不老不死の技術を手に入れた日本。
    永遠の若さを手に入れた一方で、世代交代を促すために百年法』が施行される。生存が百年を越えると死ななければならない、という法律が自分の身に迫る中、国民は何を考え、国のトップはどう行動するのか。

    発想が突飛ですが、面白かったです。
    上下いっきに読んでしまいました。

  • 残り時間が16年のくだりが?
    そこ以外はなかなか考えられたストーリーで面白かったです。

  • 「百年法」(山田宗樹)[電子書籍版]を読んだ。これはすごいね。着想と構成と筆力とがどれも抜きん出ていて、久々に(日本人作家による)読み応えたっぷりのSF小説を読んだな。

  • 日本らしさ、日本人らしさを感じる物語と思います。
    秩序と大義に基づく制約と、人道と人権に基づく自由。どちらを選ぶかはそれぞれの価値判断によります。
    この作品の中身に限らず、概念的に前者を選ぶという選択肢があること自体に、人間は社会的な生物であることを再認識します。
    物語最終盤の、大きな責任を伴う決断を迫られたときに対する態度についての、首相の言葉に嘆息しました。よい意味合いで。
    長い話ではありますが、一時に読めるおもしろさがありました。

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著者プロフィール

1965年愛知県生まれ。筑波大学大学院農学研究科修士課程修了後、製薬会社で農薬の研究開発に従事した後、『直線の死角』で第18回横溝正史ミステリ大賞を受賞し作家デビュー。2006年に『嫌われ松子の一生』が映画、ドラマ化される。2013年『百年法』で第66回日本推理作家協会賞を受賞。その他著作に『ジバク』『ギフテット』『代体』『人類滅亡小説』『存在しない時間の中で』など。

「2022年 『SIGNAL シグナル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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