映画にまつわるXについて (実業之日本社文庫) [Kindle]

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  • この本。西川監督が映画の構想から撮影をしている裏側で、時々に書いた映画に関連するエッセイ集。「2」もあるし、先日読んだ「スクリーンが待っている」もあることから判るように、作品としては「蛇イチゴ」「ゆれる」「ディアドクター」「夢売るふたり」の時期にかぶったり、あるいは回想して書いているものが多い。一つ一つ面白いのだけど、やはりモノづくり、感性のモノづくりをしているんだなと思われる文章がいくつか。
    ・みんな、情報が欠落することにおびえ過ぎている。「解りづらい」という相手には、とにかくあるだけの情報を全部ぶちまけておけばいい、という方法論でモノを作っていくと、間違いなく受け手の感受性や想像力は退化して行き、与えられたもの以上の推察をする力を失ってしまう。
    ・映画は言葉を尽くした散文よりも、行間から様々に想像を巡らす詩や俳句に似ていると、私は思う。楽しむ上で最も大切なのは、視力、聴力よりもむしろ、鋭敏な注意力と、豊富な想像力なのだ。
    あと、太宰治について、以下は坂口安吾の言葉の引用。
    ・太宰の失敗は、ただ一つ、自殺にとうとう成功したことだと思う。あの作品群を、最後まで自らは死なないひとの作品として残してくれたらば、太宰は弱虫のブンガクにはならなかったのに。フィクションとは、噓ごとであるというところが、素晴らしいものなのに。あの作品群は、そもそも自殺をした太宰が書いたのじゃない。自殺をする前の、生きた太宰が書いた噓ごとなのに、それが自殺を果たしたせいで、まるで噓ごとではないように見えて、本来の輝きを失ってしまった。
    ハイコンテクストな映画にあこがれて、西川監督の作品は間違いなくそういう作品なのだけど、映画評で絶賛されているほど入り込めず、でもエッセイを読んでその意図や表現がわかるにつれて、少し理解が進んだような気がする。もう少し、理解を深めたい。

  • 図書館で借りて読んだ。

    一番最初の「x=ヒーロー」。
    2010年に、朝青龍の引退を取り上げて書かれたこの文章は、11年後に公開されている「すばらしき世界」に繋がっている。

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著者プロフィール

1974年広島県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。在学中から映画製作の現場に入り、是枝裕和監督などの作品にスタッフとして参加。2002年脚本・監督デビュー作『蛇イチゴ』で数々の賞を受賞し、2006年『ゆれる』で毎日映画コンクール日本映画大賞など様々の国内映画賞を受賞。2009年公開の長編第三作『ディア・ドクター』が日本アカデミー賞最優秀脚本賞、芸術選奨新人賞に選ばれ、国内外で絶賛される。2015年には小説『永い言い訳』で第28回山本周五郎賞候補、第153回直木賞候補。2016年に自身により映画化。

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