雪が降る (講談社文庫) [Kindle]

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  • 読了。
    藤原伊織って、中年男の諦念とそこに辛うじて残るダンディズムを丹念に描くことで、男のシンパシーを掴むのが本当にうまいと思う。
    勿論チャンドラーの影響は受けてるんだと思うが、あれは海外の話だと思って読むからカッコいいのであって、原寮のようにアレをそのまま舞台と人物だけ日本で再生産しちゃうと、なぜかカッコ良すぎてカッコ悪くなる(笑)。
    ハードボイルドは大好きなのだが、個人的に一人称のそれがどうしても苦手なのも、カッコ悪く感じる一因だろうか。感性が歪んでるからなのか、日本人がああいう風に語ってると思うと、なぜか全部ナルシストの自慢話に聞こえてしまう。
    藤原伊織って、和製ハードボイルドとして、カッコ悪くなるギリギリ手前のカッコよさで実にカッコ良い(自分でも何言ってるか良くわからないが…)。

  • 以前から気になっていた直木賞作家、藤原伊織の短編集。
    バラエティに富んだ短編ミステリーが6篇入って居るのだが、
    その内容は噂以上。というか、久々に凄い作家と出会ったかもし
    れない。ちなみに藤原伊織は既に故人。ちょっと出会うのが遅か
    ったかも・・・。

    ともかくこの作品、テイスト・トーン共に重く、そして暗い。
    ミステリーとしてのギミックも決して凝っているワケではなく、
    どちらかと言えば純文学系の作品を読んでいるいるような気分。
    こういうのってだいたい途中でイヤになっちゃうのだが、文章
    全体から醸し出される独特な“惹き”のレベルが尋常ではない。
    これはきっと物語それぞれにハッキリした緩急が付けられてい
    るためで、1篇を読み始めるとその世界観の虜になってしまうか
    ら凄い。無理に説明するなら、「基礎体力運動を毎日欠かさず
    やっているアスリート」のような安心感がある。

    6篇はどれもすばらしいのだが、印象に残ったのはこの中でも
    一風変わったテイストの「トマト」。他の篇よりも若干短めの
    不思議系ストーリーが絶妙な位置に配置されており、その効果
    に驚嘆した。

    ミステリーとして読み始めたのに、読後は極上のヒューマン
    ストーリーを読んだかのような感覚。よくできた企画書を熟読し、
    一発で採用を決める、みたいな・・・。

    ・・・なんて思ってたら、この作家の前職は広告マンだったらしい。
    現役時代はきっと凄い企画書書いてたんだろうなぁ、と羨ましく
    思った。・・・営業だったらちょっと寂しいなぁ、いろいろ(^^;)。

著者プロフィール

1948年大阪府生まれ。東京大学仏文科卒。85年「ダックスフントのワープ」ですばる文学賞を受賞。95年「テロリストのパラソル」で江戸川乱歩賞、同作品で翌年直木賞を受賞。洗練されたハードボイルドの書き手として多くの読者を惹きつけた。2007年5月17日逝去。

「2023年 『ダナエ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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