デッドエンドの思い出 (文春文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • ばななさんって、世の中を、というか人をよ~く、見られています。
    怖いくらい。それを感じる本です。
    ご本人はこの本を、いいものを書けた、といわれています(あとがきより)が、確かにそのとおりと思います。素晴らしいです。

    何気なく過ごしてしまう日々。
    でもその中ににはたいせつなもの、たいせつなとき、一瞬がちりばめられていて、そこにばななさんは光を当てているんだとおもいます。
    あとで思い出すなら、きっと輝いて、そして思わず涙ぐんでしまう、そんなひとときを。

    +++

    「おかあさーん!」
    82ページ · 位置No. 946
    私なんか、この世にいてもたいしたスペースはとっ てい ない、そういうふうにいつでも思ってい た。人間はいつ 消えても、みんなやがてそれに慣れていく。それは本当だ。 でも、私のいなくなった光景を、その中で暮らして いく愛する人々を想像すると、どうしても涙が出た。

    82ページ · 位置No. 949
    私の形をくりぬいただけの世の中なのに、どうしてだか うんと淋しく見える、たとえ短い間でも、やがて登場人物はいずれにしても時の彼方へみんな消え去ってしまう として も、そのスペースがとても、大事なものみたいに 輝い て見える。 まるで木々や太陽の光や道で会う猫みたい に、いとおしく見える。

    96ページ · 位置No. 1127
    その 三人 の、 決して かなわ なかっ た 愛情 の お 城 の 風景 が、 その ちっぽけ な 夢 の 中 に みんな、 みんな 入っ て い た の だっ た。   まるで 秋 に 果実 が 実る よう に、 ほんとう の 思い が その 夢 には あらわれ て い た。   大丈夫、 今 の 夢 の 中 で、 あの 三人 は 永遠 に 生き て いる ん だ。

    98ページ · 位置No. 1158
    あの日々が、あの夢が、私の中の何かをさらけだし、変えたの だ。   ちょうど飼われている鳥が鳥かご からうっかり出てしまったみたい に、その事件をきっかけにあの時私はいつのまにか、知っている世界の外側にい た。

    あったかくなんかない
    101ページ · 位置No. 1175
    もの ごと を 深い ところ まで 見よ う という こと と、 もの ごと を 自分 なりの 解釈 で 見よ う と する のは 全然 違う。 自分 の 解釈 とか、 嫌悪 感 とか、 感想 とか、 いろいろ な こと が どんどん わい て くる けれど、 それ を なるべく とどめ ない よう に し て、 どんどん 深く に 入っ て いく。   そうすると いつしか 最後 の 景色 に たどりつく。 もう どう やっ ても 動か ない、 その でき ごと の 最後 の 景色 だ。

    102ページ · 位置No. 1197
    その 時、 私 は 川 が ある 街 という もの に 自分 が どれ だけ なじみ やすい のかを 知っ た。   そして、 カフェ に すわっ て 人々 を 見 て いる こと は、 川 の 流れ を 見 て いる のと 全く 同じ だ という こと を 知っ た。

    106ページ · 位置No. 1244
    そうすると 私 は、 誘拐 さ れ たら だ とか 宿題 やっ て ない だ とか、 その 頃 あんまり 折り合い が よく なかっ た うち の 両親 が もし 離婚 し て しまっ たら どう しよ う、 など という 心配 から すうっ と 遮断 さ れ て、 守ら れ て いる よう な 気持ち に なっ た から だ。   強く 明るく 桃色 に 光る 光 に。   それ は 本当は 私 自身 の 光 で、 まこと くん は それ を 好き で い て、 守っ て い て くれ た の だ という ふう に 気づい た のは、 ずっと あと の こと だっ た。

    109ページ · 位置No. 1273
    たまに、 よく 晴れ た 夕方、 金星 が 空 に ぴかりと 光っ て いる よう な 時刻 に、 家々 の 明かり を 見 ながら、 私 は まこと くん の 言葉 を 思いだし て、 泣け て くる の だ。

  • 15年以上ぶりに読んだ

    その間色々なことが起こり、最近も忙しさの渦に巻かれて自分を失いつつあるが、悪夢ではっと起こされた早朝にふと読んだ「幽霊の家」、涙が出た。

    丁寧で優しくて、冬の鉛色の空の間からさす光を感じた。もうすぐ春になって黄色い花が道路脇に咲きそうな予感すら感じさせる話だった。

    涙が出た箇所はおそらく当時読んだと変わっていないと思う。覚えていないけど。

  • この本、大好きなんだよなぁ。むかーし読んで、最近電子書籍で安くなっていたので懐かしくて買ってみた。
    『幽霊の家』が可愛くていちばん好き。
    疲れて心がガサガサしたときとかにまた読みたい。

  • 人知れず恋をして、想い出が巻き付いて離れないこの頃に、とんでもないものを読んでしまったなぁ…という気持ち。

  • 『幽霊の家』
    ちょっと愛情の絡み方の表現が生々しくて、読み疲れしてしまったところもあったけど、良い縁の結ばれ方でよかったと思う。

    『おかあさーん!』
    自分がいなくなった世界でどのように寂しさが生まれるのか、明確に想像することができた。
    自分の生きる意味を思い出させてくれたお話。

  • 「幸せになりたい人は読まないで下さい」

    この本は、決して幸せな本ではない。全て、もの悲しい出来事にまつわるお話。
    でも、読み終わった時に、ずどーんと心に重くのしかかるようなものではなくて、むしろほのかな明るさすらある。

著者プロフィール

1964年07月24日東京都生まれ。A型。日本大学芸術学部文藝学科卒業。1987年11月小説「キッチン」で第6回海燕新人文学賞受賞。1988年01月『キッチン』で第16回泉鏡花文学賞受賞。1988年08月『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で第39回芸術選奨文部大臣新人賞受賞。1989年03月『TUGUMI』で第2回山本周五郎賞受賞。1993年06月イタリアのスカンノ賞受賞。1995年11月『アムリタ』で第5回紫式部賞受賞。1996年03月イタリアのフェンディッシメ文学賞「Under 35」受賞。1999年11月イタリアのマスケラダルジェント賞文学部門受賞。2000年09月『不倫と南米』で第10回ドゥマゴ文学賞受賞。『キッチン』をはじめ、諸作品は海外30数カ国で翻訳、出版されている。

「2013年 『女子の遺伝子』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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