名作とは知っていながらもこれまで読んだことがありませんでした。そもそもフランス文学自体馴染みがないので、その入門として超メジャーな本作品を選びました。内容は、金田一少年の事件簿での断片的な情報しかなかったのですが、それがそのままのストーリーだと思ったら全然違うんですね。本作品のテーマは『愛』といったところでしょうか。
周りの人たちが『怪人』と勝手に名付けてしまうように、エリックは見た目だけではなく、心までもが怪人そのものでした。それは生まれてこの方、見た目が醜いがために誰かに愛されることなく育ってきたがための産物だと思います。最近では、親に放置されて亡くなる子供の事件もありますが、そんな彼らもこの世に生を授かってから誰かに愛されたことがないのかと考えると、なんだか本作品に通じるものを感じました。そんな怪人にとってクリスティーヌに愛されることは、何事にも代えがたい感情だったと思います。まさに愛しすぎたせいで焦がれ死ぬとは、彼のこれまでの不運な人生を以てして生まれてきた表現だと思います。
海外文学というとドストエフスキーくらいしかあまり馴染みがないのですが、彼のどろどろした脂っこい作品とは違い、要所要所に出てくる素敵なフレーズがなんとも心地よく、これがフランス文学なのかと考えさせられました。