首都感染 (講談社文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 著者の高嶋哲夫は慶應義塾大学大学院を卒業後、日本原子力研究所で研究員を務めた秀才である。その後、1999年に学習塾を経営しながら作家デビューし、2010年に発刊したのが『首都感染』であるが、本書には2011年の東日本大震災の記述があるので2013年の文庫化の際に改訂したのだろう。
    2019年12月に発生したコロナウィルスは中国湖北省の武漢市で発生した。本書に登場する新型インフルエンザは雲南省で発生する。湖北省と雲南省は1500㎞離れてはいるが中国で発生したウィルスが世界に広まるストーリーはもはや「予言の書」と言っても過言ではあるまい。東京を封鎖して外出を禁止するようなことは、大都市のロックダウンを見た今なら理解できるが、2010年の段階でよく想像できたものだと感心する。作家の想像力とは恐ろしいものだ。

  • 面白かった。ついつい、マスクを買ってしまった。実際のパンデミックは、もっと静かに進行して、ある日突然目の前に正体をさらすのではないか。日頃から、手洗い、うがい、マスク、咳エチケットを習慣づけるべきなのだろう。ある意味、地震よりも怖い。

  • 10年以上前に書かれたパンデミックの顛末本。今のコロナ禍に通づる点もある。早く劇的なワクチンできないかねえ。

  • この作家の作品はいつも人への愛 日本人への信頼に溢れている 今度はどの作品が現実となるのか・・・

  • 【きっかけ・目的】
    タイトルに惹かれて手に取ってみた。
    作家名でも安心して読める展開を期待した。
    新型コロナウイルス感染症のパンデミックを予測したような展開という記事を目にしたというのも大きい。
    【感想】
    新型インフルエンザ等対策特別措置法が想定した鳥由来の新型インフルエンザ発生時のシナリオで最悪のスケールのものを小説化している。それがたった今、起きている新型コロナウィルス感染症の拡大に伴う対応などがそっくりなのだ。
    というより、種類は違えどウィルス感染症の場合対応方法が決められており新型コロナ感染症の対応もその範疇を出ないということだ。ということは国が今まで行ってきていることは感染対策も経済対策においても手ぬるいってことだろうか。
    また、医療の面でもPCR検査は特段、最近のものではなく10年以上も前から新型インフルエンザなどの検査法として確立したものということがわかり、メッセンジャーRNAワクチンも対象は違えど作成方法などの理論はできていたわけでファイザーやモデルナが比較的早い段階でワクチンの開発ができたのもその辺の転用をできたからということがよくわかる小説だった。

    今は、新型コロナウイルスだがやはり次は、本命である鳥インフルエンザということになるのだろうか。

    【終わりに】
    真実は小説よりも奇なりというが、現実問題、小説のように全く上手くいかないというのは、日本という国の政治が機能していないことの現れだろうか。

  • 2021/12/7 Amazonより冬電2022講談社のミステリ大特集 2021年度総決算にて523円にてDL購入。

  • 2010年書き下ろし。コロナ禍を10年前に予言していたかのような物語。ただ、日本のふるまいがちょーっと違う。

    中国で強毒性の新型インフルエンザが発生。自国開催のサッカーW杯の真っ最中ということもあり、中国はそれを隠ぺい。そのせいもあって各国が水際対策に出遅れる。

    一方、日本は他国に先駆けて国境を封鎖。更には東京をロックダウン。なんとワクチンや抗ウィルス薬まで開発しちゃって、それを無償で世界へ公開して終息する、というお話。

    改めて現実のコロナ禍を振り返ってみると、中国が同じようなことをやっていますよね。武漢を封鎖したり、途上国にワクチン外交したり、とか。ちょっともやもやしますが。

    もし、強毒性の感染症がひろがったら、日本はこの小説のように対応できるのでしょうか。コロナ禍の前より、今の方が読む価値が大きくなっている本だと思います。

  • 新コロ流行真っ只中に読む。10年前に書かれたとは思えないほど現実と重なる。

  • 2010年に書かれたと思えない、ウイルスによる首都感染。今起こっているコロナ感染を予測している。元WHOの医師優司、医者である厚生労働省大臣高城、総理大臣瀬戸崎の3者のウイルスに立ち向かう姿勢が実に明確である。「責任を負う」という言葉に重みがある。
    中国ではサッカーのワールドカップ杯で、ベスト4に中国と日本が残っているという状況である。中国と世界が熱狂している。その中で、致死率60%の強毒性新型インフルエンザが雲南で発生する。村が全滅する状況であるが、中国政府はひた隠しにする。中国全土に広がり、ワールドカップを見終えた人々は、その強毒新型ウイルスに感染されて世界に帰るのである。それが原因で世界的なパンデミックが起こる。医師優司は、その情報をつかむや否や、日本の空港を閉鎖するという水際作戦を提言し実施する。さらに東京をロックダウンするのである。積極的に封じ込め作戦を実施する。
    総理大臣瀬戸崎は、父親であり、厚生労働大臣の高城は、別れた妻の父親という関係であるが、そのことをあまり明らかにせず、ウイルス汚染に立ち向かう医師優司。別れた妻は、現在再婚し、WHO
    で働いている。別れた原因は、生まれた子供に対して十分に対応せずに死なせたということがきっかけになっている。人を救おうとして、結局自分の子供さえ救えない不甲斐なさに自己嫌悪に陥っている。「僕は、なんの力もない。人を死んでいくのをただ見ているだけだ。昔も今も何も変わフジオちゃいない。相変わらず僕は、無力で、何もできない」と落ち込むが、ウイルスには断固たる姿勢を示す。ウイルスに対するワクチンが開発されることで、病気の感染が収まり、さらに抗ウイルス剤が開発されることで、事態は終焉の希望が生まれる事になる。
    この本が、10年前に書かれたとは思えない緊迫感がある。リモート会議などのインターネットの進展による大きな社会的な仕事の変容までは予測されていないが、病院における闘い方などはいまの現場の様相を浮かび上がらせている。ウイルスで人を死なせる事で無力だと自己嫌悪に陥っているにもかかわらず、敢然と格闘する医師が主人公である事に、現実に医療現場で奮闘されている医療人たちに感謝したい。

  • 「十年前に出版され現在を予言」と話題なので読んでみた。が、予言されたのは新型のウィルスが中国を皮切りに、世界中に広がった点のみ。

    完全な都市の封鎖、ワクチンの開発・認可・製造・一般人への投与など、現実に起こなわれていることとは違いすぎる。読み進めるににつれ、実際にはありえない、とリアリティが薄くなっていく。

    最初から最後まで「この物語はフィクションです」といわれ続けたような、読後感。

    携帯にヒロインの容態がの急変したと連絡入るが、主人公が最後まで聞かず駆けつけるエピソードは、仕掛けが見え見えで余計。

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著者プロフィール

一九四九年、岡山県玉野市生まれ。九四年「メルト・ダウン」で第1回小説現代推理新人賞、九九年「イントゥルーダー」で第16回サントリーミステリー大賞・読者賞を受賞。他に『ダーティー・ユー』『ミッドナイトイーグル』『M8』『TSUNAMI津波』『東京大洪水』『風をつかまえて』『乱神』『衆愚の果て』『首都感染』『首都崩壊』『富士山噴火』『日本核武装』『神童』『ハリケーン』『官邸襲撃』『紅い砂』『決戦は日曜日』など著書多数

「2022年 『落葉』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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