海(新潮文庫) [Kindle]

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感想・レビュー・書評

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  • 小川洋子さんの文章は美しさと清らかさを持ちつつどこか怖さも秘めていて、読んでいると他にはない空気に包まれる感覚がたびたびある。
    上手く言えないけれどそれがとても好きでちょっと恐れている。
    「バタフライ和文タイプ事務所」がとても良くてびっくりしてしまった。とても好きだ。人には言いづらいけれど。

  • 小川洋子の本で初めて読んだ上に、小川洋子の本のなかでだんとつに好きな短編集。
    久しぶりにめっちゃくちゃ良い本を読んでしまった・・・。という感動すら覚えた、素晴らしい本。
    なにが素晴らしいって、、言葉にできない。だから素晴らしい。短編ひとつずつに色や景色、季節、感情、空気、情、すべてがのってるのに、本当のことはよくわからない。
    人ってそんなもんだよね。
    2021年のベスト1かも。

  • 評価の高い作家にもかかわらず、今まで書籍で読んだことのなかった作家の1人である。短編集であるが、この作家らしい逸品と言える。

  • 短篇7つ。
    この短篇群でも、小川洋子さんの世界が広がる。

    じゃあ、「小川洋子さんの世界とは?」と聞かれても、言葉にできないのである。

    ある種の静けさ、ある種のはかなさ、ある種の美しさ、いろいろな面を一文にもっているのである。

    表題作「海」では、「めいりんきん」という不思議な楽器と恋人の弟の話。

    お気に入りは、「バタフライ和文タイプ事務所」「缶入りドロップ」「ガイド」である。

    特に、「バタフライ和文タイプ事務所」は、単に「すごいなぁ」という読後感しか出なかった。タイプライターの一文字から、こういう世界観を生み出せるのは、すごいとしかなかった。

    「海」
    「風薫るウィーンの旅六日間」
    「バタフライ和文タイプ事務所」
    「銀色のかぎ針」
    「缶入りドロップ」
    「ひよこトラック」
    「ガイド」

  • 鳴鱗琴、綺麗な言葉。毒が回るとは。和文タイプの活字に絡めた物語が好きなのかな(薬指の標本しかり)。一つの字に対する様相の見解やそこからエロティシズムを広げていくのはおもしろい。字への期待と一文字を基に描かれる描写はより想像力を掻き立てられるため官能小説より静かで透明だが密。子供の乳白と桃色、ドロップのカラフルさ、それと気遣いの茶色。卵から中身を吸い出す描写は顔をしかめてしまう。少女は抜け殻と自分を重ねているのかな(空っぽの器になり、見捨てられてしまった抜け殻)。殻の中で孵ったヒヨコが突然広い世界に放り出された時に聞こえる少女の声。なくても生きていける。不完全なシャツを売る”シャツ屋”、記憶に題名をつける”題名屋”、ガイドとして人の記憶に残る旅の案内をする仕事をする母を持つ僕。利発で良い子。自転車で転倒してけがをした僕を対して心配はしないが仕事の間に火事が起きて燃えるベッドで眠る僕を心配して職場に連れていく考えは好き。どのお話を読んでも薬指の標本を思い出してしまう。他の作品を読んだことがないけど、どれもそうなのかな。雰囲気が柔らかくて日常とは離れすぎてもないけど、少し非日常。

  • 妙にリアルで、でも実際はどこにもないような風景ばかり出てくる。
    個人的に印象に残ったのは鳴鱗琴という楽器と、杖をついた題名屋が言った『思い出を持たない人間はいない』という言葉。

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著者プロフィール

1962年、岡山市生まれ。88年、「揚羽蝶が壊れる時」により海燕新人文学賞、91年、「妊娠カレンダー」により芥川賞を受賞。『博士の愛した数式』で読売文学賞及び本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。その他の小説作品に『猫を抱いて象と泳ぐ』『琥珀のまたたき』『約束された移動』などがある。

「2023年 『川端康成の話をしようじゃないか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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