家康、江戸を建てる [Kindle]

著者 :
  • 祥伝社
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感想・レビュー・書評

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  • 家康、と題名にあるが、実際はその周りの人足らの活躍が描かれており、家康の登場はかなり稀だ。

    しかし、最終章のラストシーンで、家康と秀忠が天守へのぼり、江戸の街並みを見下ろすところは印象的であった。
    これまで、信長や秀吉の城は黒板壁であったが、家康は白漆喰に拘った。
    その拘りの考察も含まれていて、興味深い。

    内容はかなり読み応えがあり、量もボリューミーで、私にとっては一度読んだだけでは読み解くのが難しいように感じたが、江戸を建てるにあたって行われた事業の名残や事業そのものが、現代の東京都に残っているところに面白みを感じた。

    これから東京に行く際はこれらのことが発見でき、楽しそう。

    ひとつの国を建て直すには、ここまで膨大で大胆なことを要し、もちろん家康ふくめ、さまざまな分野での天才たち、それに従事する無名の人足たちが大勢活躍していたことがわかった。

  • 同僚に勧められ読んでみた。
    江戸という都市を一からどう作ったのか?が、様々な職人の目線で描かれていて面白い。
    スケールが大きいものがあったり、その時代の職人の視点や技術の高さに関心したり、地名について考えさせられたり。
    あと、その時代でもちゃんとテストもするんだなと関心もした。
    今までに考えたことのなかったことってたくさんあるんだな。
    それと、家康って本当はどんな人だったんだろう?なんてことも考えてしまった。

  • へんぴな田舎町が、江戸という当時世界一の大都会へ変わってしまった。その第一歩を、いくつかの短編を積み重ねることで描き出している。主役になるのは、家康でもその配下の武士たちでもなく、むしろそれほど大きな地位や権力を持っているわけでもなかった技術者である。

    そういった意味で、何というか「地上の星」を聞いているような、テクニカルなおもしろさ、そして自分の技術に対する誇りを持ち続ける男たちの強さが感じられて心地よい。最後の短編が全体をまとめる形になっていて、なるほど、これが「江戸を建てる」ということなのだなと納得できる。

    小説としての趣向もあれこれ凝らされていて、おもしろく読むことができた。魅力的な題材と人物が描かれているからこそ、連作短編という形式が少し物足りなくなったのも事実。ひとつひとつの内容がもっと書き込まれて、長編として読みたい気がした。

  • 利根川の東遷、金座の設立、神田上水の整備、そして江戸城の築城といった、江戸の街づくりの礎となる大事業を支えた何人もの職人たちが題材となった歴史小説。
    決して家康などの天下人を主役にするわけでない目の付け所が面白い。

  • 徳川家康とその家臣の都市計画物語。ひとつひとつの話は軽めの作りになっているけれど、東京の原型たる江戸がいかにして出来上がったのかについて書いています。家康という人のすごみが、いくさとは違う方法で描かれているところがおもしろい。ローマでも長く栄えた都市には、構築にあたって理念を持った指導者がいたのだと実感しました。末尾に引用文献(記載があっても、たくさん調べたんだなあと思うだけで、そこまでは読まないのですが)がないので、どの程度、史実にののっとっているかわかりません。ブラタモリ的な楽しさがあります。

  • もっと堅苦しいかと思ったけど、とても読みやすかった。
    章ごとに違う普請の分野が登場して、なるほどこうやって街は作られたのかと感心したし、現代の街づくりにも色々な分野のプロが関わっていることを思うと現代と通ずるところも多い。
    とてもわかりやすかったので、江戸が造られた一連に関しては勉強になった。
    人物も、出世を目論んだり意地悪だったり、生き生きとしていてよかった。

  • 昨年皇居の勤労奉仕の際に西の丸地域を見学して説明を聞いていたこともあり興味深かった。江戸の町を整備していくのに世代を渡って尽力した人々の執念が感じられた。
    audible で読了

  • 今やってる大河ドラマで家康が江戸に飛ばされた回前後に、ネットで紹介されているのを見て買ってみた本。
    江戸のインフラ整備に関する諸々を扱う。
    こういう地道な歴史物、悪くないなと思うけど、設定に比して文体が個人的には簡素に感じられてしまい、そこまでのめりこみはしなかった。
    今後この方の本を読むかは題材次第かなあ・・・文体がそこまでのめり込めなくとも、展開が熱ければそれはそれで乗れるんだけど、どうしたって展開は静的だからなあ。

  • 徳川家康の江戸開拓の様子を連作でまとめたもの。言われてみると未開の江戸をここまで築いたのは江戸幕府であり、その先駆けが徳川家康であることに改めて気づく。その開拓に携わる人間像もうまく描けている。

  • 治水、貨幣鋳造、街づくり、築城。それらの中心となった『仕事人』と、グランドデザインした、家康とを軸に描く短編連作集。 溜池・銀座・三鷹など、地名にもストーリーがあった。 第1話・第2話が良かったのだが、ラストの秀忠&家康による対話シーンは、さらに心地よい読了を醸す。 直木賞は候補に留まったが、現状、この夏ベストワンな一冊。

著者プロフィール

1971年群馬県生まれ。同志社大学文学部卒業。2003年、第42回オール讀物推理小説新人賞を「キッドナッパーズ」で受賞しデビュー。15年に『東京帝大叡古教授』が第153回直木賞候補、16年に『家康、江戸を建てる』が第155回直木賞候補となる。16年に『マジカル・ヒストリー・ツアー ミステリと美術で読む近代』で第69回日本推理作家協会賞(評論その他の部門)、同年に咲くやこの花賞(文芸その他部門)を受賞。18年に『銀河鉄道の父』で第158回直木賞を受賞。近著に『ロミオとジュリエットと三人の魔女』『信長、鉄砲で君臨する』『江戸一新』などがある。

「2023年 『どうした、家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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