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- / ISBN・EAN: 4988003841126
感想・レビュー・書評
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けっこう評価されてる映画じゃなかったっけと思って調べたら真逆だった『無伴奏』。学生運動の頃の1969年4月〜71年3月までを描いたお話。学生運動(というか70年安保の全共闘の)は1968〜69年頃がピークで、その後下火になっていくので丁度その末期の頃。
この頃を描いた作品、他に私が観ているのは山下敦弘監督の『マイバックページ』とか。村上春樹の『ノルウェイの森』は文体が苦手で挫折。
映画としてはたぶん多くの方と同じで、私もあまり面白いとは思わなかったです。が、良かった点もありました。
『限りなく透明に近いブルー』のレビューにて書いたこと。もちろん私は当時のことを知らないので、想像で推測してるだけですが、
「当時大学生だった世代(村上春樹や橋本治)と、高校生だった世代(村上龍や坂本龍一や押井守)はちょっと違って、若い世代ほど「モテ」や「カッコつけ」の気持ちがあったのではないか」
ということが、この映画を観るとはっきりわかりました。東京など都会と、この作品の仙台のような地方都市との差はあるかもだけど。
この作品は原作者、小池真理子さんの半自伝的内容だそう。劇中の「制服廃止闘争委員会」も実際にやってたことらしい。
押井守が1951年8月生、坂本龍一と村上龍が52年の早生まれだから同学年。小池真理子さんは52年生まれなので学年はひとつ下だけど教授や龍さんと同い年。だからほんとに同世代で、みんな似たようなことしてる。
先日Switchインタビューで佐野史郎さんが三里塚闘争について触れてましたが、佐野さんは1955年生まれなのでさらに年下、69年頃は中学生。学生運動・ロック・サブカルチャーに対する憧れが全部結びついてる。
ちなみに先ほど書いた『マイバックページ』の川本三郎さんは1944年生まれだから、学生運動を少し年上の川本さん目線から見たっていう作品。
そういう、「モテ」「カッコつけ」の空虚な感じが出てる作品でそこは良かったです。学園紛争と青春の喪失感や挫折感が、この世代は重なっている。しかし、メインの恋愛の話は大して面白くなかった。
(一応書いておくと、私は学生運動そのものを良い悪いと言ってるわけではないです。実際に、大学生の中でも学部1年と院生では年齢差があるので、意識の差があったそう)
三島由紀夫とミックジャガーが伏線的になっているのがちょっと面白い。
三島由紀夫は主人公の部屋の本棚にズラーッと並べてある(原作者の投影)。にもかかわわらず、三島が自決した1970年11月に劇中でそういうニュースは流れない。かわりに、近い時期にクライマックスの出来事が起こる……という構成。
ミックジャガー、ストーンズも同様に時代性を入れてる部分なんだけど(『限りなく透明に近いブルー』にも出てきた)、ミックジャガーといえば、どうしても思い出すのが「デヴィッドボウイの嫁のアンジーが家に帰ってきたら…」というエピソード。
俳優陣、池松壮亮はいつもどおり脱ぐ。喋り方もいつもどおり。池松くん、好きなんだけどなんだかキムタクみたいにどれ見ても同じになってる気が。
サンシャイン斎藤はつげ義春だから基本的に大好きです。
成海璃子が、ミニスカートからパンティ(大悟風)が見えないようにかばうのが不自然な演技になってて気に入らない。
手ブラもそうで、リアリティを損なう。そんなにおっぱい見せたくないならセックスシーンなんて描かなければいいと思うし、成海璃子である必要もないのに……。
もうひとりの遠藤新菜さん、元々ノンノのモデルだったそうだけど、この人はめっちゃ脱ぐ。脱いだところで別に嬉しいわけではないけど、頑張ってるなと思う。
池松壮亮くんのお姉ちゃん役で、電王で佐藤健のお姉ちゃん役だった松本若菜さん。松本さん、テレビドラマのゲストや脇役でもよく出てますね。
この、池松くんとお姉ちゃんのくだりが結局なんだったの?と消化不良な気がする。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
原作だとまた違う空気感なんだろうな
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矢崎仁司監督、小池真理子原作、武田知愛脚本、2015年作。成海璃子、池松壮亮、斎藤工、遠藤新菜、松本若菜、酒井波湖、斉藤とも子、藤田朋子、光石研出演。
<コメント>から
•原作者、小池真理子氏の自叙伝だそうである。最初の男がホモだったもは、ショックだったろうな。
•特定の若者数名の関係を、暗めの映像で追いかけ、悲劇的結末で終わるという、昭和の邦画の王道の映画。楽しい映画ではないな。
•成海璃子さん、この映画を見るまでは全く関心がなかった。そしてやっぱり演技はイマイチだけど、ただ、この役どころにはよくはまっていたと思う。おっとり、一途、思い切りがいい。昭和の女。
•ちなみに「仙台三女」という学校は、69年当時も今も存在しません。「宮城三女」、男子校は「仙台三高」ですが。
<あらすじ(ネタバレ)>
学園紛争たけなわの1969年仙台が舞台。「仙台三女」高校で制服廃止闘争をくりひろげる響子(成海)は、親友のレイコらに連れられバロック音楽が流れる『無伴奏』という喫茶店に訪れ、大学生の渉(池松)、祐之介(斉藤)、エマ(遠藤)と出会う。渉と祐之介は学生運動には興味を示さず怠惰的に送っていた。しかし渉と響子はお互いに惹かれあい、ある日、響子は叔母の外出に合わせて叔母の家で渉と会う約束をするが、渉は現れず、不安になった響子は弥が身を寄せる祐之介の下宿先に行くと、渉は祐之介と愛し合っていたのを目撃。のちに渉から事情を聞くと、二人とも女と付き合い始めて2年前から関係は断ち切っていたが、渉が響子に惹かれたことで祐之介は嫉妬した、渉の響子への気持ち本気だという。
しばらくして、祐之介の下宿にいたエマから、響子は妊娠したことを告げられ、産んで祐之介と結婚するという。
数日後、無伴奏で、何も知らないエマはいつものように無邪気に祐之介に接し、渉たちは響子宅に。そこで翌朝、響子に、祐之介にエマが殺されたとの連絡が、渉の姉の勢津子(松本)から入る。エマの子を産ませたくなかったための殺人だった。渉はエマを手にかけたのは祐之介ではなく自分だと言うが相手にされず、取り調べ後、失踪。響子は渉が自殺したことを勢津子から聞く。『これでゆっくり眠れる』と書かれた手紙を渡される。