- Amazon.co.jp ・電子書籍 (497ページ)
感想・レビュー・書評
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著者のその後の人生を知ってから読むと味わい深い。
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ニッポン大企業サラリーマンのナルシシズム表現の金字塔。上司を含む他者のほとんどをこきおろしまくり。そして随所に「ちょっといい話」的に挟まれる自身の輝かしい業績。たまらん。官僚機構を駆け上がる人はそうでなくっちゃ。
銀行を救うため、と怪文書を手袋して書くことまで辞さなかった著者が、事態がキワまで来ると「住友銀行のため、愛社精神というよりも自負心、プライドの問題だった」とまで言ってしまう。この同一感、背負ってる感はいったいどこから来るのか。
これを熱く素晴らしいと感じるか、キモくてムリと感じるかで針路が明確に決まるので、大学2年生くらいの必読書としてはどうか。
なお、僕は絶対に、こんな人にはなれません。無理です。
以下、僕がグッときた言い回し/表現を引いておきます。
・当然、花村本部長にはバツが一つついた。
・西副頭取が磯田会長のところに入った。
・松下常務の自宅にて
・これは改革派の松下常務を追放する意味合いが大きかった
・こういう細部の詰めにもこだわるところが、銀行員としては相当型破りの私が順調に出世していった理由かもしれない
・そこらへんは私は生来の要領のよさでお手の物、詳細にメモにお越し、上げた
・一選抜の彼が本気で異議申し立てをすれば大きい
・「天下の住友銀行の副頭取の玉井が、みなさんの前で言っているんです。それにもかかわらず書いたものがいるんですか」
・神戸大を重用しすぎるということで気にしているようだ -
80年代ぐらいまでの、護送船団方式と呼ばれたころの日本の金融事情を知りたい方にお勧め。イトマン事件などはこれを読んで詳細を知りました。
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バブルの象徴として名高い「イトマン事件」の告発当事者(住銀)のメモを基にした備忘録。
反社に付け込まれた上場企業がキャッシュの引き出し器として食い物にされていく姿が克明に描かれている。 当事者がメモから起した記録であるのでリアリティの面では申し分ない一方、中立性の問題からどこまで信憑性があるかは判別できない。
本文中ではぼかされているものの、筆者の協力者として描かれている人物さえも反社の人間であることからその複雑さが窺い知れる。
しかし書かれている事柄だけでも現在では一発懲戒かお縄の犯罪オンパレードである。そういう観点からは今(2020年夏)話題の、銀行を舞台としたテレビドラマよりはるかにシビれる内容である。
また、銀行・反社・協力企業・政治のカネを巡る癒着の酷さからは、当時のニュースを知っている世代が株式や不動産取引に及び腰になるのは仕方がないと思えるようになる。
随所に気になるのは、登場人物たちは損失が膨らんでいくこと、このままでは破滅することを明敏に考察しながらも何故か責任者を更迭するという本丸に中々切り込めないでいることである。そして結局、マスコミにリーク→規制官庁の介入という外圧を使って解決を図っている。
個人的にこの「なぜか」という考察をすると、その根本はあいまいな権力構造にあるように思える。確固たる法的な権力ではなく「先輩・後輩」、「御恩と奉公」、「親族の弱み」、「監督官庁と規制産業(命令ではなくお願いを繰り返す)」といった間柄であいまいな「影響力」を背景とした人事、命令(正確にはお願い)であるために当事者たちに都合の良い解釈が生じて行動が発生しなかったのではないだろうか。
まず、このような権力構造では相手を慮ることや忖度することが非常に重要となるため、思い違いが感情のもつれが予想もつかない意思決定を導いている。そして、確固たる法的な力学ではないために、いざとなれば命令された側は内容が意に反している場合は知らんぷりを決め込むことができる。
また、部外者であってもこのような構造を読むことができる人物は、弱みを握ったり恩を売ったりすることで内部に影響を及ぼすことができる。そうして侵入されると、内部には最早それを排除する力学が存在しない。
上記のような関係性から、患部を取り除くためには「説得」を繰り返すか逆に弱みを握って排除するという政治的で非合理的な行動しかとれなくなってしまう。その結果が問題が判明してからも数千億を反社へと垂れ流した本事件へとつながったのであろう。 -
ネットで話題の一冊だったので手に取ったけど正直面白くなかった。
我々の前世代のイトマン事件の舞台裏を実名公開。なんだけど、これ読むなら高杉良の金融腐食列島か真山仁のハゲタカシリーズ読んだ方がよっぽど面白い。 -
イトマン事件に関わった元住友銀行マンによる当時の回顧録。事件そのものではなく、事件を取り巻く銀行マンの右往左往している様が滑稽。筆者の当時のメモを元にした記憶の復元なので、信憑性は不明。本当にしろ嘘にしろ、実名付きでこのような本を出すのは凄い。読物としては興味深いが面白くはなかった。
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イトマン事件の秘話。