住友銀行秘史 [Kindle]

著者 :
  • 講談社
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感想・レビュー・書評

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  • 著者のその後の人生を知ってから読むと味わい深い。

  • ニッポン大企業サラリーマンのナルシシズム表現の金字塔。上司を含む他者のほとんどをこきおろしまくり。そして随所に「ちょっといい話」的に挟まれる自身の輝かしい業績。たまらん。官僚機構を駆け上がる人はそうでなくっちゃ。
    銀行を救うため、と怪文書を手袋して書くことまで辞さなかった著者が、事態がキワまで来ると「住友銀行のため、愛社精神というよりも自負心、プライドの問題だった」とまで言ってしまう。この同一感、背負ってる感はいったいどこから来るのか。
    これを熱く素晴らしいと感じるか、キモくてムリと感じるかで針路が明確に決まるので、大学2年生くらいの必読書としてはどうか。
    なお、僕は絶対に、こんな人にはなれません。無理です。

    以下、僕がグッときた言い回し/表現を引いておきます。

    ・当然、花村本部長にはバツが一つついた。
    ・西副頭取が磯田会長のところに入った。
    ・松下常務の自宅にて
    ・これは改革派の松下常務を追放する意味合いが大きかった
    ・こういう細部の詰めにもこだわるところが、銀行員としては相当型破りの私が順調に出世していった理由かもしれない
    ・そこらへんは私は生来の要領のよさでお手の物、詳細にメモにお越し、上げた
    ・一選抜の彼が本気で異議申し立てをすれば大きい
    ・「天下の住友銀行の副頭取の玉井が、みなさんの前で言っているんです。それにもかかわらず書いたものがいるんですか」
    ・神戸大を重用しすぎるということで気にしているようだ

  • ☆元住友銀行取締役が語るイトマン事件の全貌

  • 住友銀行秘史

    著者:國重惇史
    2016年10月5日発行
    講談社

    冒頭で、著者自身が仕組んだ平和相互銀行の吸収合併劇の裏話が明かされている。バブル前夜~初期、住銀は地方銀行などを吸収合併して店舗網を広げたいという野望があったが、関西相互銀行の合併が寸前にマスコミにばれて内部反発により失敗。首都圏に店舗網を広げたいという思いで、次に標的にしたのが平和相銀だった。平和相銀は創業の小宮山一族と経営側が対立、創業一族が経営していた太平洋クラブをはじめとするファミリー企業の立て直しがうまくいかないのなら、創業一族は3分の1を握る平和相銀の株を差し出せと、経営側が迫ったが、一族側は対立。

    そこで、当時、住銀企画部の行員であった著者は、まず別会社の人物を語って平和相銀に行き、株券をコピーして持ち帰る。そして、創業一族を説得し、太平洋クラブに会社更生法を申し立てさせて混乱させ、多額の融資を行っている平和相銀に取り付け騒ぎが起きかねない状況にした時に住銀が救済の合併を行うというストーリーを立てて実行した。

    まるで火事場泥棒。こんなことを、自慢げに書いている著者。

    この本は昨年のベストセラー。やっと順番が回ってきたので読んだが、銀行(の上層部)はワルばかりであることが改めて痛感させられた。著者は住友銀行の元取締役で、その後は楽天の副会長として三木谷氏の片腕に。ワルとは彼を含めてのことだが、他の連中を滅多斬りし、自分だけが正義の味方だといわんばかりに書いている点でいえば、この著者が一番のワルかもしれない。何の反省もない。

    バブル終盤(絶頂期)の1990年~91年にかけて起きたイトマン事件の裏側を、著者がこまめに付けたメモを元に振り返っている本。通常、回顧録や回想録は、話がそれたりやたら背景を詳しく説明したりと、執筆者が博覧強記ぶりを見せつけたがるため、冗長で退屈になりやすいが、素人が書いているのが幸いしてか、メモとそれの説明のみで振り返っているので、460ページ以上がすぐに読める点はいい。
    ただし、あくまで事件の断片とその場面場面での人間関係、著者の感想などが集められているだけなので、全貌を知りたい場合は著者が組んでイトマン社長追放劇を行った日経新聞記者の著作を読む方がよい。

    住銀もイトマンも大阪の会社だが、事件の主な舞台は東京。イトマンの河村社長は“ノンキャリ“組の住友銀行員出身。住銀の天皇、磯田会長のお気に入りでイトマン社長に。その河村に、名古屋の不動産屋の小倅、伊藤寿永光が取り入り、イトマンの常務に。伊藤は東京の雅叙園観光はじめいくつかの会社の経営権を握って不動産投資を行い、そこにイトマンや住銀から多額の融資を引き出し、企画料などの名目で個人の懐に。不動産は地上げ不可能な部分が残るなどいずれも焦げ付くこと間違いない物件ばかりで、イトマンや住銀はその焦げ付きが発覚しないようにさらなる融資を行い、底なし沼へと入り込んでいく。このままでは、イトマンはもちろん住銀も破綻。イトマン伊藤は、闇勢力でもある許永中(野村永中)と一体で、許が仕入れた絵画をイトマンが相場の何倍もの価格で買わされたり、住銀磯田会長の娘が働く西武ピサからやはり高額な絵を買わされたりもしている。こんな構造。

    そこで住銀の「改革派」と称する幹部が、住銀磯田会長-イトマン河村ラインを追い落とすべく立ち上がろうとするわけだが、これがなかなか立ち上がらない。みんな、自分が可愛いからだ。銀行では一度×がつくともう将来はない、と書かれている。頭取の人事権をも握っていたといわれる磯田会長に逆らえるわけがない。悲しいかな、著者もしかり。著者の上司は、「最後のバンカー」と言われ、後の頭取、そして郵政公社総裁、日本郵政初代社長になった西川善文。世間的には正義の味方だった彼ですら、この本の中では批判されている場面がある。

    結局、著者はイトマン河村をやめさせただけの話。それも、直接手を下したわけではない。日経新聞の記者と手を組み、内部告発文書を作って大蔵省やマスコミ各社に流し、イトマンの取締役会で河村社長を解任するという三越方式(岡田)での解任劇を準備しただけ。三越方式は、森繁久弥の社長シリーズ番外編のサラリーマン忠臣蔵でずっと以前に描かれていたから、大した知恵でもない。

    住銀磯田は辞任、イトマン河村、伊藤も会社を去り、許とともに逮捕され、有罪確定。それで、なにが変わった?なにがよくなった?結局、大金がどこかに消え、銀行の闇、客ではなく上司しか見ない行員の体質は何一つ変わっていない。悲劇はまた起きることだろう。

    この本がすごい点は、住友銀行、イトマン、周辺人など、多くの人物がほとんど実名表記されていること。そして、その人物の薄汚く醜悪な行動が書かれ、著者による人物評価(ネガティブなものばかり)が遠慮なく書かれていること。政治家の名前も出てきていて、イトマン事件に絡んでいたのは竹下登と当時秘書をしていた弟の竹下亘(閣僚経験現役代議士)。竹下亘は許永中とつながり、許が手がけていた京都銀行の仕手線に手を出さないかと住銀常務に話しをもちかけたとの記述。金丸信の名も出てくる。これだけ書かれて、なぜ訴訟を起こされないのか、不思議な気もする。

  • 80年代ぐらいまでの、護送船団方式と呼ばれたころの日本の金融事情を知りたい方にお勧め。イトマン事件などはこれを読んで詳細を知りました。

  •  バブルの象徴として名高い「イトマン事件」の告発当事者(住銀)のメモを基にした備忘録。

     反社に付け込まれた上場企業がキャッシュの引き出し器として食い物にされていく姿が克明に描かれている。 当事者がメモから起した記録であるのでリアリティの面では申し分ない一方、中立性の問題からどこまで信憑性があるかは判別できない。
     本文中ではぼかされているものの、筆者の協力者として描かれている人物さえも反社の人間であることからその複雑さが窺い知れる。
     しかし書かれている事柄だけでも現在では一発懲戒かお縄の犯罪オンパレードである。そういう観点からは今(2020年夏)話題の、銀行を舞台としたテレビドラマよりはるかにシビれる内容である。

     また、銀行・反社・協力企業・政治のカネを巡る癒着の酷さからは、当時のニュースを知っている世代が株式や不動産取引に及び腰になるのは仕方がないと思えるようになる。

     随所に気になるのは、登場人物たちは損失が膨らんでいくこと、このままでは破滅することを明敏に考察しながらも何故か責任者を更迭するという本丸に中々切り込めないでいることである。そして結局、マスコミにリーク→規制官庁の介入という外圧を使って解決を図っている。
     個人的にこの「なぜか」という考察をすると、その根本はあいまいな権力構造にあるように思える。確固たる法的な権力ではなく「先輩・後輩」、「御恩と奉公」、「親族の弱み」、「監督官庁と規制産業(命令ではなくお願いを繰り返す)」といった間柄であいまいな「影響力」を背景とした人事、命令(正確にはお願い)であるために当事者たちに都合の良い解釈が生じて行動が発生しなかったのではないだろうか。

     まず、このような権力構造では相手を慮ることや忖度することが非常に重要となるため、思い違いが感情のもつれが予想もつかない意思決定を導いている。そして、確固たる法的な力学ではないために、いざとなれば命令された側は内容が意に反している場合は知らんぷりを決め込むことができる。
     また、部外者であってもこのような構造を読むことができる人物は、弱みを握ったり恩を売ったりすることで内部に影響を及ぼすことができる。そうして侵入されると、内部には最早それを排除する力学が存在しない。

     上記のような関係性から、患部を取り除くためには「説得」を繰り返すか逆に弱みを握って排除するという政治的で非合理的な行動しかとれなくなってしまう。その結果が問題が判明してからも数千億を反社へと垂れ流した本事件へとつながったのであろう。

  • ネットで話題の一冊だったので手に取ったけど正直面白くなかった。
    我々の前世代のイトマン事件の舞台裏を実名公開。なんだけど、これ読むなら高杉良の金融腐食列島か真山仁のハゲタカシリーズ読んだ方がよっぽど面白い。

  • イトマン事件に関わった元住友銀行マンによる当時の回顧録。事件そのものではなく、事件を取り巻く銀行マンの右往左往している様が滑稽。筆者の当時のメモを元にした記憶の復元なので、信憑性は不明。本当にしろ嘘にしろ、実名付きでこのような本を出すのは凄い。読物としては興味深いが面白くはなかった。

  • イトマン事件の秘話。

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著者プロフィール

國重惇史(くにしげ・あつし)
1945年、山口県生まれ。68年、東京大学経済学部を卒業。同年、住友銀行(現三井住友銀行)に入行。渋谷東口支店長、業務渉外部部付部長、本店営業第一部長、丸の内支店長を歴任。94年に同期トップで取締役就任。日本橋支店長、本店支配人東京駐在を経て、97年、住友キャピタル証券副社長。銀行員時代はMOF担を10年務めた。
その後、99年にDLJディレクトSFG証券社長になり、同社を楽天が買収したことから、2005年に楽天副社長に。楽天証券会長、イーバンク銀行(現楽天銀行)社長、同行会長を経て、14年に楽天副会長就任。同年、辞任。現在はリミックスポイント会長兼社長。

「2016年 『住友銀行秘史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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