- Amazon.co.jp ・電子書籍 (313ページ)
感想・レビュー・書評
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グローバル化と技術革新が同時に進む世界で先進国に生きる、アメリカのミドルクラスの物語。
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トランプがなぜ2016年の大統領選挙にかつことができたのか、どのようにラストベルトに入り込み、有権者の熱狂的な支持を勝ち得たのかを、東海岸を中心として丹念なインタビューを積み重ねてとき浅層としたルポ。
強烈なエスタブリッシュメントへの反発、特定の企業献金に頼らない(自腹)不偏の政策といった、白人エスタブリッシュメントでありながら共和党や労働者階層に支持を広げていった思考回路がよく理解できる。疑問なのは、アメリカの社会構造が分断化されていて、何をつけば特定の部門がどう動くのかを、エスタブリッシュメントでありながら知り得てつくことができた名参謀をトランプ氏はどのようにして獲得したかということであろう。 -
2022年の今ではすでにドナルド・トランプの危うさは現実のものとなって議事堂襲撃のように先鋭化すらしてしまった。それでもなお共和党の大統領候補になる意欲を強く持っているのは驚くべきことだ。
この本に書かれた取材が行われた2016年の大統領選挙でトランプに投票した人たち、ここに描かれるようにミドルクラスの終焉を我が身の事として体験しつつある人々は2020年の選挙ではどのように投票したのだろうか。
とはいえ、産業の移り変わりによるミドルクラス的な職業の消失に対して政治のできる部分がどこまであるのかはアメリカや日本といった場所に限らず疑問を持たざるを得ない。この本の最後の方でアメリカで製造業を経営する人の言葉にあるように、雇用がないのではなく、今の時代に価値を生む職業に対応する人がいないというのも問題の一つだろう。
高校を卒業して地元の製造業で職を得て訓練を受けて定年まで働き、ミドルクラス的な生活を送って子供には自分よりも高い教育を受けさせる、ということはある特定の時代と地域でさまざまな偶然が重なって起きた「奇跡」でしかなかったのではないか、といった趣旨の筆者のことばが逆説的に印象に残った。 -
「いまさら何をいっても失言にならないという究極のリスク管理があったと思う。」
トランプがなぜあれほどの支持を得たのか。
未来への期待が持てないからだろう。