作中にめちゃくちゃ出てくるワード「さびしい」が、わたしが持っている、知っている「さびしい」という感情とは違うもののように思えてならない。こんなに追い詰められるほどさびしかった覚えはないし、親からの自立を目指して一人暮らしを始めたのに結局実家が恋しくて戻ってしまうというのもわたしにはその気持ちぜんぜんわからない。わからないけど、そういう人もいるんだなと思って読んだ。何をどうしていくのがこの人にとって最善なのかはわからないけど、こういう自分の私生活を晒け出す、自分の暗部を切り売りする形の創作活動を続けていくのなら、この人はきっと自身の病理は(無意識だろうと)手放さないのだろうなと思った。しんどいつらいむりと毎日苦しんでいたとしてもそれ自体がアイデンティティみたいになってしまっていて、これを手放したら手放したで自分じゃなくなってしまった感覚でどのみち苦しんでしまうのではと(見知らぬ人間からのひどい横槍だとは思うけど)思った。
とりあえず、「さびしい」の強度は凄まじかったし、それをここまで絵にアウトプットできることはこの人の技術であって才能であると思った。