- Amazon.co.jp ・電子書籍 (193ページ)
感想・レビュー・書評
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AIもツールの一つに過ぎず、技術的にスゴイことと儲かることを冷静に見極めて、リアルかつシリアスな世界にどのような具体的効能として持ち込むか。それをビジネスたらしめる独自性・優位性を築けるか、が今後の企業経営、競争戦略における重要アジェンダだよ。またWhatを問うような未来予測はほとんど当たらないし誰にもわからないことなので、そこを定めにいくより、When,How,Whoで勝負できるようにしなやかに変化できる組織体質にしていくべきだよという主旨の内容。AI、ロボット、IoTなどのバズワードでビジネス界隈が浮足立っている気配のある昨今にあって、極めて冷静に技術や競争優位の趨勢を見極められていて、冨山さん独自の業界将来予測が面白いし勉強になる。※自動運転の領域など非常に納得度が高かった
■メモ
・イノベーションの波が迫る業界に置いてはあくまでも急変する架橋の中で構造的・持続的に稼ぐことのできるビジネスモデルを構築できたかどうかが勝敗を分ける
・革命初期に一発当てて調子に乗るのは禁物。ロボットが当たったからと言ってロボット製造業が儲かるかは別の話。今起きていることの産業的な意味合いを冷静に洞察スべし
・IoTはビジネスプロセスのオープンプラットフォーム化を促進するイノベーションであり、そのものが差別化領域にならない可能性が高い。人間の労苦の代替、データ集積の手段にしかならない
・最も注意スべきは、流行りに慌てて中途半端に自社開発してしまうと後々簡単に手に入るかもしれない世の中のベストプラクティスに手を伸ばせなくなること。これはERPのときに犯した過ち
・確率論的にはイノベーションが起きるのは自社以外であることのほうが高いため、そうなったときにどのようにオープンにコラボできるかの方が大事
・インダストリアルバリューチェーンの中で川上と川下だけが買っていくスマイルカーブ現象はエレクトロニクス産業以外にも広がっていく可能性が高い
・産業革命のドライバーは、技術的無礼薄ルート付加価値創出の邂逅、すなわち金の匂いのするマッチングがあるかどうかがドライバー中のドライバーである
・今のバーチャルでカジュアルに行われているネットビジネスは、限界費用ゼロの特性もあり参入障壁は極めて低い
・アーカイブコンテンツはほとんど無価値に近づく一方、ライブコンテンツはマネタイズの余地がある
・日本と日本以外では、ローカルにおける人不足・人あまりの状況が根本的に違う。日本は慢性的に人不足であり、ロボット導入が進めやすい環境下にあるといえる
・AIは将棋は得意でも、渋谷のスクランブル交差点を人にぶつからず進むことはできない。曖昧さ、ゆらぎ、臨機応変、融通無碍さは苦手なのだ。
・今後リアルの世界に技術革新が及んだ時、そこではハードにおけるクローズドで重厚なノウハウが必要になってくる。この模倣は一朝一夕にはいかない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
冨山氏は、産業全体の変化を俯瞰的かつ構造的に説明してくれるため非常に分かりやすい。シリアスな分野でのTechnologyの活用に日本の勝機があるというのは非常に面白い議論であった。
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あの冨山さんが AI というバズワードを冠した本を書くとは意外だった。AI に取って代わられる職業がある中(とはいえシンギュラリティは当分来ないので)、AI を活用できるプロフェッショナルこそが重要であると個人的には思っている。データに基づくファクトから何を洞察し、何を予測するか。そういうところに AI を使うことによって、新たなビジネスも生まれるし、またそういった AI の特質を企業経営にも応用できるのではないかと思う。
個人的には、次のように考えている:AI は自分でゼロから作るものではなく、他人が作ったものをうまく活用すべき。アルゴリズムよりもデータが重要。AI そのものが差別化要素ではなく、そこで応用されるタスクこそが重要。
こういったことについて冨山さんがどのように分析し、考えているのか?一読して、非常にリーズナブルでバランスのとれた見解を持っているという印象。僕自身の感覚にも近い。
・経営者は AI/IoT 革命の現象面にとらわれず変化の本質をとらえて、「稼ぐ力」を獲得するためにどうするか。
・AI 技術はありものの中から必要十分なものを選んで、ビジネスに応用する。事業化に必要な応用の開発が重要。
・日本企業はデジタル革命・グローバル化・カジュアル応用の世界では負けた。しかしAI、IoTのデジタル革命は、ローカル・シリアス応用の世界。日本企業に十分チャンスはある。
・予測不能なイノベーションによる変化に迅速に対応できる経営力・組織力こそが重要。
・AI時代のリーダー像、グローバルで活躍できるのは松山英樹や錦織圭といったほんの一握り。そこに行けない多くはローカルな経営者・経営サポートをめざす方が幸せ。上司の意図を探るサラリーマンではなく、積極的に子会社やベンチャーに出て自ら意思決定する経営に携わるべき。
因みに、冨山さん自身は「未来予測は必ず外れる。その意味ではこう言う本を書いたことを半ば後悔している。予測できない未来に対応できる力をつけるべき。」と仰っていた。 -
vol.398 AI経営で会社は甦る。産業構造と稼ぐ仕組みが根こそぎ変わる!『AI経営で会社は甦る』(冨山和彦著/文藝春秋)
http://www.shirayu.com/letter/2017/000811.html -
IGPI冨山さんの一冊。
L(ローカル)とG(グローバル)のお得意の切り口から始まり、S(シリアス)の世界を持ち込んで、日本にもAIのチャンスあるよと言いつつ、後半はAI関係なくなって結局はL(ローカル)で戦うのもあり、という結論。全体的には面白い一冊でした。
・データクレンジング
・米国がゲゼルシャフト的(機能的組織、利益集団)、日本が一番ゲマインシャフト的(共同体組織、ムラ社会)
・カルテック(カリフォルニア工科大)
・AT&Tのベル研究所、ゼロックスのパロアルト研究所、IBMのワトソン研究所
・POC(Proof Of Concept 概念実証)
・世界最大の資産運用会社ブラックロック、投資ファンドのブラックストーン・グループ
・5億年前のカンブリア爆発は目を持った事による -
第三次AIブームが過熱するなか、この技術をどう経営に活かすか?と興味の湧く人は多いと思う。
この本の中では、グローバルとローカル、カジュアルとシリアス、サラリーマンモデルとプロフェッショナルモデルなどの比較軸から、ネットビジネス覇者と日本企業のこれからについて、AIを使う上での考察が様々に述べられている。
AIそのものの仕組み云々より、経営の視点でどう使っていくべきかについて、作るのではなく使うであったり、わざわざ人間が得意な領域で無理に使わなくていいなど、日本人がブームの時に陥りやすい落とし穴を指摘している。
著者の冨山和彦氏は、経営コンサルタントかつ経営者であり、実務重視の活動と、発言力をお持ちの方。
この本の対象読者は、経営者なんだと思う。細かいテクノロジーと言うより本質的なポイントをいくつか知っておきつつ、幅広く知識を得て判断の役に立てたい人向け。
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今後10年のビジネスを大局的に捉えるのに参考になる。
近年のバズワードの中で、AIとIoTの組み合わせに関する影響力が大きいと感じた。
また、AIとはどういう価値を還元するものか?というそもそも論の言及については整理のきっかけになり、よかった。 -
日本では、日本では、既にどこでも人手不足。しかし、移民を積極的に受け入れていないため、AIやIoTで生産性を上げなければならない。そのような土壌はできつつある。欧米の先進国とは違い、ローカル経済から政治的な突き上げは起きない。ある意味チャンス。