ロスト・エモーション [DVD]

監督 : ドレイク・ドレマス 
出演 : ニコラス・ホルト  クリステン・スチュワート  ガイ・ピアース  ジャッキー・ウィーヴァー 
  • ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
3.00
  • (2)
  • (8)
  • (23)
  • (2)
  • (5)
本棚登録 : 82
感想 : 19
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・映画
  • / ISBN・EAN: 4547462111531

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • タイトルどおり、感情を持つことを禁じられた社会を描いた近未来SF。
    感情がうちから芽生えてしまった人間は『欠陥者』として医師の診断を受け、治療に励む(この場合は感情を殺す薬を服用して、感情が起こらないようにしていくこと)。また、自ら医師に行かない者は周囲の人々からの通報や監視員の摘発によってDENという安楽施設に送られん命を絶たれる。そんな近未来社会だ。

    この映画の映像には表現されていないが、「人類史上最大の世界戦争によって破壊されたあと、残された数少ない人類がこの世界戦争の原因を人類が抱えている「感情」だと判断し、この反省を踏まえて希求したユートピアとして設計した「感情のない共同体」〈イコールズ〉。それをを作り上げるために遺伝子操作を繰り返し作り上げた近未来の過渡的状態。それをこの映画は描いている。
    だから、この共同体が完成される前の未完の状態を描いたともとれる。その時代の分岐点を観せられているのかもしれないのだ。
    当初の設計どおり「感情のない世界」を完成させ、その他の生物との境目である感情を失うことによって‘人類’という本質的な意味合いを失うことになる道を選択するか、人類としてあり続ける将来的希求に目覚めた数少ない人類が自分たちの当初の判断と、それに基づきコントロールする政府に対して、命を賭して抗えるか。
    「個人の力ではあまりにもか弱いが、個人の意思の結集無しにしては成し遂げられない」難題とも思える課題が見えてくる。

    そしてこの「感情のない世界」を目指す近未来の出来事は、現代にもまさにそのまま存在していることも見えてくる。サイラスとニアがお互いのなかに芽生えた“愛情”という感情に違和感を抱く表情、それに抗おうと葛藤する表情、さらにはそれに抗いきれずに、お互いが惹かれあってニアが妊娠してしまうシーン。それは現代社会のなかでは、社会的タテマエという分厚くなって“理性”と名付けられた側面と、コントロールできない感情の両者をもってバランスをとり、矛盾を抱えながら生活している人間の姿にダブってくる。

  • 美しい映画だった。

    そしてこんなに静かな映画を見たのは、初めてかも。
    俳優たちも、ベス以外は抑えた表現(彼女だけ気になった)。
    でも抑えられている息苦しさはない。
    感じるのは、感情の美しさだ。
    人の生きる意味や、生命とは、など哲学的な作品。
    支配するものが出てこないので、昨今のSF映画に
    見られる対決シーンがない。
    だからこそ感じるこの静けさ。

    ここに描かれているのは脅威との争いや反逆ではない。
    まっすぐに感情と向き合う。
    人間たらしめているものを問う。

    病気とは。何を持って、異常とみなすのか。
    異常と決めるのは、誰なのか。

    断捨離が行き届いた装飾のない個性を失った世界で、
    彼らの職業がペインター画家であったことは
    どんな意味を持つのだろう。

    彼女はエヴァになった。
    表情を静かに追うラスト。その美しさに涙が出た。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×