- Amazon.co.jp ・電子書籍 (224ページ)
感想・レビュー・書評
-
「お父さんはお医者さんに殺された」。
一人の男の子の訴えから、不気味な医師の姿が浮かび上がってくる。
頼まれて、次々と安楽死を行う人物。人呼んで、「ドクター・デス」。
犬養刑事シリーズの4作目だ。
患者の、のたうち回るほどの痛みと、それを見守るしかない家族の苦悩。
安楽死という重いテーマが扱われている。
病気の娘を抱える犬養には、今回の事件はやりにくそうだ。
さらに、今回は犬養の親としての部分が、見え隠れする。
猟犬、犬養の腰が引けているようにも見える。
このごろ、犬養シリーズには、大きな社会問題がテーマとして登場する。この前は、子宮頸がんワクチンだった。
今度は、猟犬の能力がいかんなく発揮できる凶悪事件で
犬養の活躍をみたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
安楽死を施す医者を追う犬養と高千穂の刑事ペア。そもそも死を望むという願いを叶えることは罪なのか、というだれもが答えを出すのをためらう問いをテーマに、医者と警察の頭脳戦、駆け引きが展開していきます。レギュラーの刑事ペアが良い味を出していて、軽い掛け合いも楽しく読めます。
作者らしく意外な展開、どんでん返し、といった騙しも効いていますが、今作はそのテーマと真正面に向き合ったときに一体自分はどう判断するのだろう、という問いを始終突き付けられているような物語に感じました。
作中で言われているように、よほどの状況でないと今日本では安楽死は罪として扱われます。けれどそれは個人を命を尊ぶからというだけではなく、さまざまな事情がこんがらがってもいるからで、穏やかな死を望む人と対面したときに自身はいったいどう決断するのだろうと思うと、それはまったくわからないな、というのが本音なわけです。
それは死がまだ遠いところにある余裕、なのかもしれません。そして、そのことそのものに罪悪感を感じ、死を望む人にお前は何もわかってないと突き詰められたら、もう何も言えないだろう、というのも思います。
ただ…最後まであがいて意地汚くも生きていくのも人間らしさだ、とも感じるのです。ぎりぎりまで生に惹かれていてほしいとも思うのです。
そういうことをつらつらと考えた物語でした。