- Amazon.co.jp ・電子書籍 (226ページ)
感想・レビュー・書評
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メリキャット、お茶でもいかがとコニー姉さん。
…そんなフレーズがやがて耳に残るようになる、なんとも不思議な読後感を残した小説でした。
主人公=メリキャットの一人称で語られる物語は、自分と姉と叔父と飼い猫だけで閉じた世界こそが完璧で、村の人々や親戚は意地悪で憎悪の対象で絶対的。
死んでしまえばいいのに、と幾度となく呪いの言葉をうたうように挟み込みながら、物語はただの閉じた日常からやがて不穏を強くにじませていく。けれどふと気づかされる。そもそも不穏がまずそこにあったのに、メリキャットがあまりにも気にしないから淡くしか認識させられてなかったけれど、同じ家に住まう家族が何人も死んでいることこそ、不気味で恐ろしいことなのでは、と。
村の人々がおかしいのでなく、この妹が、おかしいのでは。と、徐々に語り手に不安を募らせていくと、物語の性質に澱みと怖ろしさを深めていく。そうして絶対的な事件が起こり、ぞっとした恐怖を横たえたまま物語は終わる。
なにもかもはっきりとはさせられない。まじないに頼り無邪気に姉にご飯をねだるまるで幼女のような(実際は十代後半である)メリキャットの語りでしか、話は綴られないのだから。だからこそ、その隙間から仄見える、「本当はこうであったかもしれない」という余白の底知れなさにくらくらと恐怖を覚える。この物語は、そんな性質を帯びているように感じました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
文庫で読んだけれど、電子書籍しかないので登録。
宮部みゆき著「過ぎ去りし王国の城」(角川文庫)の作中と解説に本著の記述があったので読んでみた。
本著の解説でも絶賛しているけれど、読みづらくて読み終えるために読んだ感じ。 -
お茶でもいかがとコニーの誘い、毒入りなのねとメリキャット…。不気味な唄声が暗示する惨事の影。閉ざされた館に高まりゆく愛と死と狂気。モダン・ゴシックの女王の最高傑作。
1962年の作品で、日本では1994年に翻訳版が出版されたそうである -
メリキャットによって語られていく残酷で儚い物語は真実なのか? 私たちが文字で体感していくものは掴めそうで掴めない砂のごとく。ジュリアンおじさんの姪のメアリは死んだという言葉がすごく気になるけど、本気で考えたらコンスタンスに「そんなこと考えてどうするの? おばかさんね」と笑われそうである。
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あたしはメアリ・キャサリン・ブラックウッド。ほかの家族が殺されたこの屋敷で、姉のコニーと暮らしている…。悪意に満ちた外界に背を向け、空想が彩る閉じた世界で過ごす幸せな日々。しかし従兄チャールズの来訪が、美しく病んだ世界に大きな変化をもたらそうとしていた。“魔女”と呼ばれた女流作家が、超自然的要素を排し、少女の視線から人間心理に潜む邪悪を描いた傑作。
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メリキャットはもしかしたら自分には興味がないのかもしれない
最初から姉にしか興味をもたず、きっとずっと姉に憧れていた
家族というのは彼女の中で血の繋がりだけが存在する他人で、でもその中でも美しく優しい姉だけは特別だった
多分メリキャットは美人ではない
タカラヅカの娘役や同性アイドルに熱狂的になる地味な女性たちに通じるものがあると思う
女は入れ込んだ美しいものを全肯定して守りたいと執着することがあるから
あまりに女の濃度の濃い内容
好みだった