シリーズ・企業トップが学ぶリベラルアーツ 宗教国家アメリカのふしぎな論理 (NHK出版新書) [Kindle]

著者 :
  • NHK出版
3.79
  • (5)
  • (9)
  • (10)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 112
感想 : 9
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・電子書籍 (167ページ)

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 数ヵ月前に読んだ本ですが、「不寛容論」の著者の本ということで、遅ればせながら続けてレビューします。

    ーーー

    第1章~第3章が面白かった。アメリカで土着化したキリスト教の「「富と成功」の福音」と「反知性主義」の2つのキーワードは、ポピュリズムが蔓延する現代アメリカを理解する上で必須と感じた。

    第4章と終章は内容がやや発散していて何を言いたいのかちょっと分かり難かった。


    道徳的な面と快楽的な面、相矛盾する側面が極端な形で同居するアメリカ。著者は、この矛盾に満ちた状況を解く鍵が「アメリカに土着化したキリスト教」にあるという。

    ピューリタンがアメリカに持ち込んだキリスト教は、その後「双務契約」化した。キリスト教は元々、神が人間の意識や行い如何に関わらず一方的に恵みを与える「片務契約」だったが、「神は、正しい者には祝福を与え、悪い者には罰を与え」る因果応報、信賞必罰の論理へと変化し、更に論理が逆回転して、「神の祝福を受けているならば、正しい者だ」となった。こうして、「自分は成功した。大金持ちになった。それは人びとが自分を認めてくれただけでなく。神もまた自分をを認めてくれたからだ」という「富と成功」の福音 = アメリカン・ドリームが導かれていった。

    「成り上がりこそが正しい成功の方法なのです。世襲のカネやコネによらず、裸一貫で出発し、自分の能力と才覚で成功をつかむ。これが、self-made man の理念です。 成り上がるために必要なのは、「機会の平等」だけです。機会の平等さえ保障されていれば、あとは自分の力次第。誰もが同じようにゼロから出発するので、成功はいつも「アメリカン・ドリーム」になるわけです」とこのと。

    また、本来の反知性主義は、「大卒のインテリ牧師だけが幅をきかせるピューリタニズムの極端な知性主義に対する反動として生まれ」、「知性と権力の結びつきが固定化することへの反発を身上としている」のだという。

    アメリカにポピュリズムが蔓延している理由は、「「富と成功」の福音と反知性主義、このどちらも、ポピュリズムの養分となるから」だという。「アイゼンハワーやジャクソン、ブッシュ、そしてトランプといった面々を見れば、反知性主義とポピュリズムの相性のよさは実証済みと言える」のだと。なるほど! 目から鱗が落ちた気がした。

  • 読了。
    刺激的な見出しだが、まず大前提としてアメリカは宗教国家だ。世界をリードする近代国家の大統領選挙で毎度人工中絶の可否がイシューになったり、これ程合理性を重んじる国なのに反知性主義が跋扈する謎は、アメリカが宗教国家だと考えるとすんなり理解出来る。建国の経緯に鑑みれば当然なのだが、只のキリスト教ではなく、極めて「原理主義的」で且つ、ある意味「土着化」したキリスト教が同国のイデオロギーの中心に存在する。正しき者が神の祝福を以て福音を得る筈だったその教義は、富と成功を得た者は神の祝福を受けているから正しい、と謎変換されてしまっているから、世界から見てどんなに不思議でもトランプが再選される可能性は十分に、あるw。

  • アメリカ文化と言われる特徴の根幹を知ることができた。

  • トランプ大統領がプロテスタントのカルヴァン派であり、神によって選ばれる人は生まれる前にあらかじめ定められている、と考える。(本人の努力は一切関係ない)
    そうすると、試練にすごく強くなる。どんなにひどいことに遭っても、負けない。どうしてか。神様が与えた試練なので、最後に勝利すると決まっていると考える。そして、問題はどういう勝利の仕方なのか、と考える、と佐藤優が指摘していた。アメリカという国自体が負けを認めたくない国であり、アメリカ自体が負けの歴史が少ないことからキリスト教にいう「苦難の神義論」を塾考する歴史的機会がなかったと著者は説く。アメリカという国のOSには強い宗教性が埋め込まれている。
    ポピュリズムのもつ熱情は、本質的には宗教的熱情と同根である。(ポピュリズムは代替宗教)

  • アメリカのことが全然分からないと思って読んだ。
    理性的なんだかむやみに信心深いのか全然分かんないと思って。
    アメリカのリーガルドラマを見ても、裁判所で誓約する相手が神なのにも違和感があった。

    ちょっと前にウェーバーのプロ倫を読んだばっかりだったのでよく理解できた。

  • 富と成功、反知性主義。アメリカを解きほぐす鍵は宗教にあるという。アメリカはもともと英国国教会に反旗を翻したピューリタンの人たちが植民して建国した。根本に宗教がある。それもかなり原理主義的なキリスト教らしい。日本人には理解できないが、進化論を否定して、聖書の教えをそのまま信じてる人たちがいる。それもかなりの数の人が。世界でも宗教的に特異な国のようだ。また、大きな政府を嫌い、オバマの保険制度も元にもどそうとする。連邦政府の力を小さくすることを望む。遠くの連邦政府から勝手なことを言われるのが嫌なのだろう。保安官は自分たちの仲間だが、FBIはいつも悪役だそうだ。

  • アメリカの文化の根本には変質したピューリタニズムが存在するという本。正しい者には神の祝福がある、というわけで、成功は全てを正当化するのがあの国の文化らしい。この考え方は勝っている時はいいが、上手くいかない時は救われない。神に見放される=悪しき行為ということなのだから。哀れな連中だ。

    なぜ反知性主義が産まれたのか、自己啓発本の根底にあるものとは何なのか。そのあたりのことがこの本を読むと分かる。やっぱり現代においては宗教は有害な側面が強くなっているように思う。いや、昔からか。

全9件中 1 - 9件を表示

著者プロフィール

1956年、神奈川県生まれ。国際基督教大学(ICU)学務副学長、同教授(哲学・宗教学)。専攻は神学・宗教学。著書に『アメリカ的理念の身体‐‐寛容と良心・政教分離・信教の自由をめぐる歴史的実験の軌跡』(創文社)、『反知性主義‐‐アメリカが生んだ「熱病」の正体』(新潮選書)、『異端の時代‐‐正統のかたちを求めて』(岩波新書)など。

「2019年 『キリスト教でたどるアメリカ史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

森本あんりの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×